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料理とは生き方である




その光景はすごかった。

突如空中に現れた数百の【火弾】が俺達に向かって降り注ぐ。

イチョウとモミジは二人で料理を作りながらも、二人で攻撃を仕掛けてくるタイプなのか。

声を揃えて術を唱えた事から分るように火術と火術の合成術だ。


「【蟻繭ありまゆ】を展開!」


豪雨のような火弾が半透明の繭に衝突しては消えていく。

なんて数の火弾だよ。

調理場ごと消し炭にする気か?


俺は【蟻繭】で【火弾の豪雨】を防ぎきった。

それを確認したイチョウとモミジは手分けしてニンニクとタマネギをすりおろし始めた。

カエデが少し考える素振りを見せてから俺に話しかけてきた。


「ユラリさん」


「どうしたカエデ」


「決勝戦の題材は肉料理。前にユラリさんから教えてもらったあの料理をつくりたいんですけど。いいでしょうか?」


「あれか……判断は任せるよ。お前の事は必ず守ってみせるから安心して料理を作ってくれ」


「はい!」


イチョウとモミジからの攻撃を警戒したまま二人の能力を確認しよう。

アウレナで情報表示っと。


=====

 ◆イチョウ・べニシグレ

 種族:鬼人族  性別:男  年齢:24  職業:料理人

 LV:35  HP:1110  MP:930  SP:1370

 物理攻撃力:640  物理防御力:600  敏捷力:490  

 術効力:310  術抵抗力:400  幸運:110

 アクティブスキル:味覚強化5、臭覚強化5、高速作業5、着火5、熟成3、鬼斬り6、鬼神旋風斬6、火弾4、火柱4、火炎剣6、豪炎槍5、阿修羅六手

 パッシブスキル:日乃光料理知識5、アル・アトラーン料理知識7、調理8、美的感覚6、腐敗感知5、器用6、豪腕6、火術4

 合成術:火弾の豪雨、乾燥地帯

 称号:族長の息子、大陸一の料理人を目指す者、努力の鬼人、堅実な料理人

=====


イチョウのパッシブスキルに【アル・アトラーン料理知識】がある。

これを所持しているということは奉公先が大陸の南に位置する大国、アル・アトラーン王国だったんだろう。

カエデよりレベルもスキルも上だ。


=====

 ◆モミジ・べニシグレ

 種族:鬼人族  性別:女  年齢:20  職業:料理人

 LV:22  HP:740  MP:630  SP:850

 物理攻撃力:390  物理防御力:370  敏捷力:480  

 術効力:230  術抵抗力:260  幸運:160

 アクティブスキル:味覚強化3、臭覚強化3、高速作業3、冷蔵保存5、冷凍保存4、真空保存3、鬼斬り3、着火3、火弾3、水弾3、氷柱1、火炎剣5

 パッシブスキル:日乃光料理知識3、トランゼシア料理知識6、珍味知識6、調理5、美的感覚8、腐敗感知3、器用5、火術2、水術1、氷術1

 合成術:火弾の豪雨、乾燥地帯

 称号:甘味の探求者、珍味研究家、族長の娘、天才パティシエ、姉大好き

=====


イチョウと同じようにモミジには【トランゼシア料理知識】があるから、大陸の西の大国、トランゼシア帝国で十年間修行していたんだろう。

モミジの能力は戦闘能力に劣る分、使える術の種類が多いな。

術師としての適正があるのかもしれない。


カエデと同様にこの二人は火術が得意なようだ。

鬼人族の種族特性なのかもしれない。

見た事の無いスキルの説明はまとめて見るか。


=====

◆鬼斬り

熟練度が上がると岩をも斬ると言われる鬼人族の固有スキル。

◆鬼神旋風斬

高速回転する鬼斬りで一瞬で敵を切り刻む鬼人族の固有スキル。

◆阿修羅六手

一定時間腕が六本になり自在に動かす事ができる鬼人族の固有スキル。

◆豪炎槍

鋼鉄の鎧さえ貫く炎の槍を空中に具現化し敵に放つ術。

◆火弾の豪雨

数百の【火弾】を広範囲に降らせる事ができる難易度の高い術。必ず二人以上の術者の同時詠唱が必要。

◆乾燥地帯

指定した空間や物の水分を蒸発させる事ができる。必ず二人以上の術者の同時詠唱が必要。

◆冷蔵保存

密閉された空間の中の温度を五度に保つ事ができる。

◆冷凍保存

密閉された空間の中の温度をマイナス二十度に保つ事ができる。

◆真空保存

密閉された空間の中を真空状態に保つ事ができる。

=====


鬼人族の固有スキルもあったのか。

さっき二人が使った【火弾の豪雨】は、やはり合成術だったんだな。


モミジは冷蔵庫のようなスキルを持ってる。

この世界では冷蔵庫はまだ開発されていないから何かと役立つスキルだろう。

料理人ならではのスキルだ。


イチョウとモミジはすりおろしたニンニクと玉ねぎに、スパイスやハーブ類数種類と塩を加えて混ぜ合わせている。

何を作っているんだろう。

何かのタレを作っているようだけど俺には検討もつかない。


カエデの方を見てみると、豚肉を包丁で切り始め、じゃがいもは一瞬で皮を剥き4等分にし、にんじんは乱切りにして玉ねぎはくし形に切っている。

さすがに作業が早い。

【高速作業】と【器用】の賜物だろう。


イチョウとモミジが調理の手を止めて自分達の調理場から飛び出し、二人同時にスキルを発動した。


「「火炎剣!」」


イチョウとモミジは燃え盛る剣を作り出しカエデに襲い来る。


「カエデ姉っ! 目を覚ましてよ! そんな奴の何処がいいの!?」


俺は【硬甲殻】で身体の防御力を高め二人の斬撃を腕で防いだ。

しかし、炎で作られた剣は俺の腕に火傷をつけた。

結構熱いが耐えられないほどじゃない。

次は俺の番だ。

術で動きを止めてみるか。


「【遅延】!」


イチョウの指輪の一つが光る。

術をキャンセルする指輪か。

さすがに用意周到だな。


剣での攻撃を防がれた二人は調理場に戻り料理を再会した。

無駄のない戦い方だな。

料理をしながら戦闘をする事に相当慣れている。


イチョウは大きな肉塊を見事な包丁さばきで薄切りにし、その肉を先ほど作っていたタレの中に入れてよく混ぜている。

モミジが同時進行で前もって用意していたのだろう大きな木箱を取り出した。

そしてその木箱に布を巻き付け密閉している。


「【冷蔵保存】!」


恐らくは今のあの木箱の中は冷蔵庫内と同じ温度になっているだろう。

その木箱の中へイチョウがタレに漬けた肉を入れ木箱に向けてスキルを使用した。


「【熟成】!」


イチョウが今【熟成】っていうスキルを使ったのは、たぶんタレを肉に浸透させるためだよな。

モミジが木箱から肉を取り出し一メートル程の鉄の棒に巻き付けていく。


あ、これドネルケバブってやつじゃないか?

テレビで見た事あるぞ。

ああやって棒に肉を巻き付けてから焼くんだよな。


モミジが作業している間にイチョウが炎の剣で襲いかかって来た。

俺は右腕に【空刃】を纏わせて炎の剣を切断した。


「……ユラリと言ったか。少しは戦えるようだが料理は作れないようだな。料理人でもない奴はカエデに相応しくない」


「俺がカエデに相応しいかどうかはカエデ本人が決めることだろ?」


「これは鬼人族全てに関わる重大な事だ。カエデのわがままを通せる話ではないのだよ」


鬼人族全てに関係って大げさだろ。

俺はイチョウの攻撃から自分とカエデを護る為に、俺達を閉じ込めるように【影牢】を展開した。


イチョウは自分たちの調理場へ戻る。


「燃え立て【火柱ひばしら】よ!」


棒に巻き終わった肉の近くに【火柱】を作り出したイチョウはその肉を焼き始めた。

俺は【影牢】を解除すると、カエデが俺の火傷を心配して声をかけてきた。


「ユラリさん。その火傷、大丈夫なんですか?」


「このくらいならすぐ治るさ。それより料理の手を止めるなよ。俺に何が起ころうともだ」


「は、はい! 任せて下さい。必ず最高の料理に仕上げてみせます!」


イチョウとモミジが再び声を揃えて術を発動した。


「「乾燥地帯っ!!」」




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