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001 序
外は激しい雨が降っていた。
時折鳴り響く雷鳴が、闇を切り裂き、屋内を周囲を照らす。
それはまるで、今目の前の女の慟哭にも似ていた。
「お願いです。私たちの街を助けてください――」
依頼が一つ、舞い込んだ。
街が夜な夜な、魔物に襲われているという。ただ、普通に外からの侵略ではない。街の内側から、である。出処は解っているが、そこに住まう街の者では対処できないという。
かねてより、彼の地から情報はあった。
ただ、動く理由はなかった。だが、依頼とあれば別だ。
「さて、誰に行かそうか」
未だ鳴りやまない雷鳴の中、老人は目的のドアの前に立った。
「さて 仕事だ―――」
老人は部屋の中で待機しているだろう者に声をかけた。