第90話:ドイツでの最後のシーズンの幕開け
クリスマスの出来ごとから月日が経つ。
今は年が明けて7月。ドイツ留学は3年目に突入していた。
3年目になったからといって、特に変わったことはない。
相変わらずサッカー漬けの毎日である。
「練習に行ってきます!」
「あっ、待って、お兄ちゃん。葵も一緒に行く!」
「いってらっしゃい、ふたりとも」
葵と一緒にF.S.Vのサッカーパークに向かう。
妹と母親はドイツ2年目なので、こっちでの生活にもだいぶ慣れていた。
「そういえば、お兄ちゃん。葵、この間の試合でスカウトされたんだよ」
「へえ……それは、凄いね。どんなクラブから?」
いつものように二人でドリブル通勤しながら、朝の雑談をする。
「それがF.S.Vのドイツ女子サッカーリーグ……だったかな?」
葵は去年の6月から、F.S.Vの男子U-15のチームに入団していた。
その試合で活躍したことで、F.S.V女子部門のプロのスカウトマンの目に止まったらしい。
「でも葵はお兄ちゃんと一緒にいたいから、断ったの!」
「そうか。もったいないけど、無理は禁物だかね」
葵は中学2年で14歳になっていたが、今でも男子チームに混じって試合をしていた。
なんでも女子クラブに移ったら、オレと会う機会が減るからだという。
子どもっぽい理由だが、これが葵のサッカーの動機なのだから否定はできない。
まあ、もう少し大きくなったら、本人から女子クラブに移るであろうし。
それにしても中学生2年にして、女子プロのスカウトを受けるのか。葵は相変わらず凄いな。
「ねえ、お兄ちゃんの方は、最近はどう? 葵、聞きたい!」
「ボクの方は普通かな? 1軍にも残れて、来月の2部リーグの開幕戦には出られそうだし……」
ドリブル通勤しながら、この7ヶ月間のことを思いだす。
12月の下旬にヒョウマ君とクリスマスで会った後の出来ごとを。
(ヒョウマ君の遊んだ次の日は、またエレナの家に招待されたな……)
ヴァスマイヤー家のクリスマスパーティーには、2年連続で参加した。
前回と同じように、今回も豪華で華やかなパーティーだった。
でも今回は趣向が施されていた。
なんと最初から、中庭にサッカーコーナーが設置してあったのだ。
そんな訳でクリスマスパーティーは前回以上に楽しく交流ができた。
(クリスマスシーズンの後は、また帰国したな……)
正月休みは家族4人で日本に里帰りした。
帰国してからは、空けていた実家を皆で大掃除。年越しの準備をして、いつも以上にバタバタした。
(バタバタの合間には、後輩の顔を見に行ったな……)
オレは今年もリベリーロ弘前を訪れた。
そういえばリベリーロ弘前は全国大会で準優勝だった。さすがに5連覇は無理なのであろう。
でも、その悔しさをバネに、後輩たちは燃え上っていた。
また将来Jリーガーになる確定の子も、他県から入団して増えていた。
次の全国大会も楽しみである。
まあ、コーチは休まることがなくて大変そうだったけど。
(10日間の正月休みを終えたあとは、またドイツに戻ってきたな……)
その後の1月は去年と同じであった。
チーム練習と自主練を繰り返して、オレは鍛錬を積んでいった。
またチームメイトも練習に協力してくれて、全員が前より上手くなっていった。
(そして1月下旬からは、リーグ戦の再開だったな……)
1月下旬には2部リーグの後半戦が再開した。
後半戦もオレたちF.S.Vの1軍は順調だった。
後半戦の激闘の4ケ月間を戦い抜いていった。
そして5月の最終戦を終えた最終成績は、なんと2部リーグ4位という成績だった。
これは3部から昇格したばかりのクラブとしては、異例の好成績だった。
来月からスタートするリーグ戦で3位以内に入れば、昇格のチャンスがあるのだ。
(あとF.S.Vヤングチームも順調だったな……)
オレがもう一つ所属していたチームも、1軍以上に好成績を収めていた。
なんとUCLヤングリーグを優勝することが出来たのだ。
18歳以下の世代別の大会とはいえ、F.S.Vにとって久しぶりの快挙。街の人やサポート団は歓喜していた。
もちろんオレたち選手も喜んだ。
特にヤングチームの中から、1軍に昇格できた人も何人かおや。彼らは大喜びで飛び跳ねていた。
(うーん、ここ7ヵ月の出来ごとは、こんな感じだったかな? )
オレは相変わらずのサッカー漬けの毎日だった。だから変わり映えしない日々である。
先月の6月のシーズンオフも自主練の毎日だったし、家とサッカーパークの往復しかしていない。
(でも冷静に考えると、寂しい毎日の過ごし方かな?)
そういえば、せっかくドイツ留学しているのに、オレはどこにも出かけていない。
有名なドイツの名所は行ったことはない。
せいぜい行ったことがあるのは、サッカー観戦である。
それもオフの時間を利用して、ヨーロッパ各国のリーグ戦を観戦しただけ。
(まあ、でもサッカー観戦が一番の楽しみだから……まいっかな)
一応はプロ選手だが、オレの根底にあるのは強いサッカーオタク魂。
せっかくヨーロッパにいるのだから、本場のサッカー観戦を楽しんでいた。
基本的には家族と一緒に観戦にいったけど、エレナやユリアンさんも誘ったこともある。
(サッカー観戦といえば、葵とエレナは、いつの間にか仲良くサッカー観戦していたよな?)
最初はギクシャクした二人だった。
でも、いつの間にか親友のように仲良くなっていたのだ。
何かあったのかな?
けど、よく考えたら二人とも同じ14歳で、サッカー少女同士。
それで仲良くなったのであろう。とにかく間に立つオレとしては、ひと安心だった。
でも二人は“コータ不可侵連盟”という謎のお茶会を、定期的に開催している。
それが何の連盟なのか、オレには推測もできない。
でも仲良くしてことはいいことだ。
(ふう……とにかく、いい感じの毎日だな。最近は……)
こんな感じでドイツ生活も順調だった。
(よし! 3年目のリーグ戦も気合いを入れていかないとな……)
来月からはいよいよリーグ戦も始まり、ドイツサッカー生活の3年目が開幕する。
今季のF.S.Vのクラブとしての目標は、ずばり“昇格”である。
そのためには2部リーグで最終的に、2位以内に入らなければいけない。
もしも2位以内に入れたら、来季の1部昇格が自動的に確定となる。
(1部昇格か……最後の大仕事だな……)
出来ればオレがドイツにいる間に、F.S.Vは昇格が確定して欲しい。
それはエレナやユリアンさんたちの10年以上の悲願。そしてオレにとってのドイツ留学での最後の目標であった。
“F.S.Vのドイツ2部リーグでの2位以内。1部昇格を確定させる”
これがオレに残されたドイツでの最後の仕事とも言える。
滞在中に成し遂げられなかったらオレは大きな後悔を残して、オレは日本へ戻ることになる。
何としてでも3年目のシーズンは有終の美で終わらせたい。
「よーし……3年目も頑張るぞぉおお!」
オレはドリブルしながら、気合の声で叫ぶ。改めて自分の目標を定めるために。
「うわっ⁉ いきなり、どうしたの、お兄ちゃん⁉ 街の人たちがみんな見ているよ?」
妹に叱られてしまった。たしかに通行人がビックリしている。
「ご、ごめん葵……つい気合が入りすぎて……」
サッカーのことばかり考えていると、周りが見えなくなるのは、オレの悪いクセだった。
3年目は気を付けていかないと。
(とにかく3年目のシーズン最後の試合まで、後悔のないようにチームメイトと頑張っていこう!)
こうして新たなる闘志を燃やして、3年目のシーズンはスタートするのであった。
◇
――――だが、この時のオレは知らなかった。
自分がF.S.Vの仲間たちと、シーズンの最後まで一緒に戦えないことを。
ドイツでの最後の年。激動の戦いが、こうしてスタートするのであった。
◇
いよいよドイツ編の最終章が開幕しました。
どうぞよろしくお願いします。
◇
あとツギクルブックスさんでサッカーライフのキャンペーンを開催してもらうことが出来ました!
【期間限定】スペシャルサンクスキャンペーン「素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する」
https://www.tugikuru.jp/info/view?id=113
簡単に説明すると
・ツギクルブックスのページで「素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する」を応援する
↓
・なんと2018年6月9日発売の「素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する」の本の末に、応援した貴方の名前が載るかもしれない!?
(最大50名まで載るみたい)
です!
これにはボクも驚きました!
2018年5月10日(木)正午の〆切
なので、お気軽に応募してください!
ぜひ、ボクと一緒に本に名前を載せて記念にしましょう!
※方法などは詳しくはボクに聞かれても分からない部分があるので、公式サイトを見てくださいませ
ハーーナ




