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素人おっさん、転生サッカーライフを満喫する【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【中学生編】

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第85話:危険な特訓

 ユリアンさんの家に相談しにいった次の日。

 オレは早朝の練習場に来ていた。


『皆さん、おはようございます!』


 いつもは一人の早朝練習。

 だが今朝は自分の他にも選手がいた。


『コータ、おはよう。だが、こんな朝早くから何を……?』

『お前たち二人も、コータに呼び出されていのか?』

『ああ、そうだ。なんだ、お前もか?』


 練習場に集っていたのは、F.S.Vの一軍の三人。

 オレが彼らに連絡して今朝、集まってもらったのだ。


『わざわざ集まってくれて、本当にありがとうございます!』


 全員が集まったところで、頭を下げで挨拶をする。

 この三人には昨夜のうちに電話して、来てもらったのだ。


『ところでコータ。大事なお願いってなんだ?』

『そうだ、こんな朝早くから、何を?』


 三人とも不思議そうな顔をしていた。

 何しろチームとしての練習までは、まだ時間がある。かなり不思議そうな顔をしている。


『実は折り入って、お願いがあります。ボクに向かって、この距離からシュートして欲しいんです!』


 ここは練習場の端にある、壁打ちのシュート練習場。

 ちょうどオレの背中には、垂直なコンクリートの壁があった。

 その壁から少し離れたとことに、目印の直線を引いておいた。


『ん? コータ、これはPKの練習か? それにしては近すぎるな?』

『それにコータはFPフィールド・プレイヤーだろ? もしかしたらGKゴールキーパーにも新しく挑戦する遊びか?』

『はっはっは……それは面白そうだな!』


 三人は首を傾げていた。

 たしかにオレがゴールキーパーの練習をするように見える。

 これはいかん。説明が足りなくて、この特訓の意味を理解していないのだ。


『いえ、これはボクのボールトラップの特訓です。だから思いっきりシュートしてください。本気でボクの身体を狙って!』


 これら特訓の趣旨が分かるであろう。オレはジャージを脱いで、特訓の準備をしていく。


『なっ……トラップの練習だと?』

『おいおい……なんの冗談だ、コータ?』

『ああ、そうだぞ。オレたちがこの距離で蹴ったらどうなるか、お前も分かるであろう?』


 三人は唖然としていた。

 今回集まってもらったのは一軍のFW陣。その中でも一番シュートの威力がある三人である。


『はい、分かっています。ちゃんとトラップしないとヤバイです』


 もちろんオレも、そのことを知っていた。理解していた上で、この強力なキック力の三人をチョイスしたのだから。

 

『いや、ヤバイどころじゃないぞ、コータ!』

『ああ、そうだぞ! 下手したらコータが病院送りになるぞ!』

『お前は一軍の大事な要だ。怪我でもしたらリーグ戦に支障がでる!』


 三人は本気で心配していた。

 全力シュートの危険性は、彼ら自身が一番知っている。

 固いサッカーボールがこの距離で頭にでも当たったら、最悪障害が残る危険性もあるのだ。


『それにコータ。トラップの練習なら、こんなバカげた特訓じゃなくてもいだろう?』

『頭のいいお前なら分かるはずだぞ?』

『ああ。いつもみたいにもっと普通の練習でいいだろう?』


 三人は必死で止めにきた。

 何しろチーム内での自主練での怪我は大事である。プロとして失格な行為なのだ。


『たしかに皆さんの言うとおり、この特訓は危険です。でもボクはレオナルド・リッチさんに勝ちたいんです。だからトラップを特訓したいんです!』


 オレはこれまで事情を全て話す。

 2ヶ月のユベトスU-18戦まで、自分の弱点を克服したいと。

 そのためには一軍でもっともシュート力のある、この三人の強力が必要だと説明する。


『あのセリエAのユベトスのレオナルド・リッチに勝つだと……?』

『ユベトス史上、最高のプレイヤーだと言われた、あの男にだと……』


 レオナルド・リッチの名前を聞いて、三人の表情が変わる。

 何しろ相手はヨーロッパでも最高峰のユベトスFCのトップ選手。

 同じプロでもまだドイツ2部のF.S.Vはケタが違う。


 その名声や凄さは彼らも、テレビやミーティングで怖いくらいに知らされていた。


『普通の練習じゃ、あの人に勝てないです。だから皆さんの協力が必要なんです!』


 ヨーロッパのトップリーグのパスは、シュート並に強烈で鋭い。

 だから短期間で成長するために、シュート並のパスで特訓する必要があった。


(成功したらオレは急成長できる可能性がある。だが失敗すれば……)


 同時にこれは危険な特訓である。

 この三人の弾丸シュートの初速は時速170キロメートル以上。前に本気で蹴った時は、コンクリートブロックの塀に穴を空けていた。


 つまりトラップに失敗するたびに、オレは鉄のように硬くなった弾丸を受けることになる。まさに命がけの特訓なのだ。


『最後に、もう一度だけ聞く。コータ、お前、本当に本気なのか?』

『はい、ボクはいつでも本気です』


 この言葉に嘘はない。

 今世のオレは人生をかけてサッカーをしている。たとえ特訓でも、常に本気で全力なのだ。


『こりゃ、オレたちの負けだな……』

『ああ、そうだな。この顔のコータは常に本気で全力だからな……』

『この真っ直ぐな瞳に、オレたち1軍も影響を受けてきたんだったな……』


 三人は顔を見合わせる。

 オレの特訓の依頼を受けるかどうか、決めているのだ。

 自分の想いの全ては伝えていた。あとは受けて貰えるからは、天に運を任せるしかない。


『やるからには、本気で蹴らせてもらうぞ、コータ?』

『えっ……はい! もちろん! ということは?』


 まさかの返事に、オレは改めて訪ねる。


『ああ、コータの特訓に付き合ってやるよ、オレたち三人で』

『三人でローテーションを組んで、毎朝ここに来てやるぞ』

『しばらくは寝酒を控えて、早起きの毎日だな!』


 三人は満面の笑みて答えてくれた。

 そして約束してくれる。時間の許す限りトラップの特訓に協力をすると。


『本当に……本当ありがとうございます、みなさん!』


 オレは感謝の握手をしに三人に駆け寄る。頭を下げて心から感謝した。


『……あっ、そういえば、特訓に対する皆さんへの、お礼なんですが……』


 この三人はドイツリーグのプロ選手。

 だから毎日特訓に付き合って貰うには、それなりの礼金が必要である。


 彼らの年棒は一人当たり年間で6000万円以上。

 だから年間で90分の34試合に出ると仮定する。

 次にトラップの練習も毎朝90分を予定している。


 つまり6,000万円÷34=約170万円で、『一日のトレーニング時給』が170万円になる。


 それを次のユベトス戦までの2ケ月間の60日で掛け算。

 【170万円×60日=約1億円】となる。


 つまりオレはこの三人対して、総額で1億円の御礼金を支払う必要がある。一人当たりで3,333万円くらいか。

 かなり破格に思えるが、プロ選手から高度な技術を教わるには、それほどまでに時間当たりの給与が高額なのだ。


『学生選手な今のボクには、正直なところお金がないです。でも必ずお礼をします! 借金しでも支払います!』


 今のオレは特別選手であり、年棒は皆無に等しい。

 だが彼ら三人には必ず支払う。それだけの覚悟があったのだ。


『はっはっは……礼金だと?』

『そんなもの1ユーロもいらないぞ、コータ』


『えっ? でも……ちゃんと約束しないと』


 だがオレの申し出は三人に一笑された。いったいなぜだろう?


『約束だと? それならコータ、今日も色紙とペンを持っているか?』

『色紙とペン? はい、もちろんです』


 三人に言われて、練習カバンからサイングッツ一式を取り出す。

 サッカーオタクたるもの、いつ何時でもサイン道具は持ち歩くのが常識である。

 でも、こんな物を何に使うのかな?


『じゃあ、これに契約書を書いてやる。……よし、これでいいぞ、コータ』

『はい……あれ、でもこれ契約料金が0ユーロですよ? 間違っていませんか?』


 三人は色紙に特訓に対する、簡易的な契約書を書いてくれた。

 だが一番肝心な料金は大きな0と書かれていた。でも、いったい何故、こんな金額で……?


『今回の特訓は0ユーロの契約で正解だぞ、コータ。何しろ、こんなワクワクすることの手伝いを出来るんだからな……』

『ああ、そうだなよな。あのレオナルド・リッチを倒すための特訓の手伝いを、このオレたちが出来るんぜ?』

『逆にオレたちが金を払いたいくらいだぜ? この契約書は孫の代まで自慢になるぜ、オレたち三人の』


 三人は白い歯を見せて答えてくる。

 特訓に対する料金は0ユーロ。

 だから必ずレオナルド・リッチを倒してこい!……そんな彼の想いが伝わったできた。


『皆さん……ありがとうございます!』


 改めて三人に礼を告げる。

 無償でオレのために時間を割いてくれことに対して。

 そしてオレの目標のために、想いを共感してくれたことに対して感謝する。


(みんなの想いに応えるためにも、この特訓は絶対に成功させないと!)


 準備は全て整う。

 こうしてオレの危険な特訓はスタートするのであった。


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