↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
素人おっさん、転生サッカーライフを満喫する【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【中学生編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/157

第76話:ドイツ修行2年目のスタート

 五月になる。ドイツ留学は二年目。

 二年目になったからといって、特に変わったことはない。

 相変わらずサッカー漬けの毎日である。


「お父さん、行ってきます!」

「気を付けていくんだぞ、コータ」

「うん、分かった!」


 父親と住んでいるドイツでの借家を、元気よく出発する。

 五月のドイツの朝は涼しく、今日も過ごしやすい一日になりそうだ。

 いつものようにドリブルしながら、F.S.Vのクラブハウスに向かう。


『あら、おはよう、コータ。今朝も元気だね』

『あっ、おはようございます! いい天気ですね!』


 近所のパン屋のおばちゃんに挨拶される。

 ドイツ生活も二年目なので、顔見知りの近所の人も出来てきた。またドイツ語も自然と出てくるようになっていた。


『あっ、コータだ!』

『あっ、本当だ!』

『よし、コータからボールを奪え!』


 近所の小学生の軍団に絡まれる。数人がかりで、オレのボールを奪いに襲ってきた。


『あははは……じゃあ、急いでいるから、またね、みんな。また今度、公園でゆっくり遊ぼうね!』


 サッカー少年たちを、ドリブルで一気に置き去りにしていく。

 あの子たちは近所の公園で遊んでいるうちに、仲良くなったサッカー仲間である。

 元気な子どもに朝から元気をもらう。


(やっぱりここは素敵な街だな……)


 ドリブルしながら感慨にふける。

 住んでいるこの街は、ドイツの地方都市。そんなに大都市ではないがいい場所だ。

 歴史は古く、街の至る所に歴史的な建造物が残っている。


(日本の下町みたいな感じかな?)


 住んでいつ地区は都市開発が進んでいない分だけ、昔から住んでいる住民が多く人情が厚い。

 こうして日本から来た中学生に対しても、誰もが気軽に挨拶をしてくれるのだ。


「それにしても、もう五月か。ドイツの冬は寒かったけど、楽しかったな……」


 ドリブル通勤しながら、この数ヶ月のことを思い出す。

 オレが日本に帰ったのは、正月の十日間だけである。その後はドイツにすぐに戻って、相変わらずの練習と、週末のリーグ戦の日々であった。


「リーグ戦といえば、ユリアンさんは凄かったな……」


 3部リーグの後半戦は一月下旬から再スタートしていた。

 チームメイトのユリアン・ヴァスマイヤーは、そこで絶好調であった。


 それにオレとの約束をちゃんと守ってくれた。ポジションを攻撃のFWから、守備のDFに変更したのだ。


「予想以上にユリアンさんのポジションは正解だったな……世代別のドイツ代表に選ばれるくらいだし」


 新しいポジションで彼は覚醒した。

 その新しいプレイスタイルが評価され、ユリアンさんは今年のドイツU-20の代表に選出されたのだ。


「でも、ちょっと歴史が変わった感じになったのかな?」


 前世ではたしかユリアンさんは、ドイツU-18の代表に選ばれた。だが今回は前世よりも上のカテゴリーのU-20になっている。

 もしかしたら死亡フラグを回避したことで、彼の運命が上向きに変更さえているかもしれない。


「まいっかな? だって最近のユリアンさんは、本当に楽しそうにプレイしているからな……本当によかった」


 死亡フラグを回避した後のユリアンさんは、本当に生き生きとしていた。

 以前の辛そうにしている面影は消えて、別人のようにプレイしている。

 またプライベートでも妹のエレナと、笑顔で会話するようになっていた。本当によかった。


 ちなみに3部リーグの得点王争いから、DFに転向したらユリアンさんは退いていた。チームの総合力アップのために、縁の下の力持ちになってくれたのだ。


「3部リーグの得点王争いから脱落か……まあ、ボクもそうだったけどね」


 そのユリアンさんに勝ったオレは、最近は無理な得点を控えていた。


「やっぱり、まだ13歳の無理できなかったからな……」


 ユリアンさんとの得点王争いで、オレは自分の限界を越えていた。

 その影響で、身体に無理が祟ったのである。状況としては試合後には、全身に違和感があったのだ。

 だからもう少し大人に成長するまで、あのような無理なプレイは封印することにした。


 その代わりにオレはパスとチームプレイの精度を磨いていた。結果としてチームメイトのFW陣が、得点する機会が増える。

 これに結果的にF.S.Vの総得点は増えたことになる。結果オーライといったところかな。


「チームメイトといえば、ユリアンさん以外の人たちも、最近は調子がいいよな?」


 F.S.Vは二月以降の成績も、ずっと好調であった。そのお陰もありチームメイトの調子は、軒並み上昇していた。


「各国の代表に復帰した人が、なんか増えたよな?」


 F.S.Vには元スウェーデン代表や元スイスなど、各国の代表経験者が在籍している。だがここ数年、彼らは代表からも遠ざかっていた。

 そんな落ち目だった外国人枠の選手たちが復活して、また各国の代表に招集されるようになったのだ。


「これもチームが好調な、相乗効果かな?」


 一昨年までのF.S.Vは“ぬるま湯効果”で、選手のモチベーションが低かった。

 だが昨年の秋の連勝を境目にして、チームは一変している。

 “新風迅雷(しんぷうじんらい)”を掛け声にして、超攻撃的なチームに進化していた。

 その影響を受けてチームメイトも、本来の力を取り戻したのかもしれない。


「最近のF.S.Vはクラブが一体化して、いい感じになってきたよな」


 昨年まではチームは4部降格の危機にあった。

 チーム内は“ぬるま湯効果”の悪影響で、モチベーションが低下。メインスポンサーも影では撤退の用意もしていた。


 だが今では好調なクラブに、スポンサーの申し出が急増しているという。

 エレナの話では、クリスマスパーティーの裸足のサッカー大会……あれが密かに取引先の経営者の心を掴んだという。


 『F.S.Vは面白いクラブだ!』……そんな感じで熱く投資してくれるスポンサーが増えてきたのだ。


「信じられない話だな……でも、あの時のサッカー大会は本当に楽しかったな……」


 思い出しながら、思わず笑ってしまう。

 まさかのクリスマスパーティーの結果に、言い出したオレが一番驚いた。


「でも、最後にはボールでガラスを割っちゃって、エレナのお婆ちゃんに大目玉を食らっちゃったよな」


 ヴァスマイヤー家の陰のドンであるエレナの祖母は、怒ると本当に怖かった。

 サッカーに参加した全員が、怒られてしまった。いい大人や年配の人も、全員が怒られてしまったのだ。


 もしかしたらエレナも大人になった、あんな感じなるのかな? 何となくイメージが出来てしまう。


 まあ、その後は、また楽しくパーティーを再開したんだけど。あの時は本当に思い出に残るパーティーだったな。


「とにかくF.S.Vは今のところは好調と幸運続きで、なんか嬉しいな!」


 ユリアンさんは死亡フラグを回避して、妹エレナとの仲直りもできた。

 チームは4部降格の危機を乗り越えて、スポンサーの撤退も回避できた。

 チームメイトたちも個人としての成績も、軒並み上昇している。


 本当にいいことずくめで、お世話になっているオレも楽しい日々であった。最高な日々である。


◇


「あっ、クラブハウスが見えてきたぞ。んっ、凄い人数のサポート団がいるな、やけに今日は?」


 ドリブル通勤していたら、いつの間にかF.S.Vの敷地内に到着していた。

 遠目のクラブハウスの前には、F.S.Vのサポーターが集合していた。かなりの人数である。


 いったいどうしたのかな? 

 とにかくいつも通りに選手通用口から、静かにクラブハウスの中に入っていこう。


『おい、あれは?』

『ああ、“小さなサムライ”……コータ・ノーロのお出ましだぞ!』

『本当にドリブルしながら来るんだな。ミラクルボーイだな』


 サポーターの人たちは、オレの存在に気がついた。

 “小さなサムライ”とは、F.S.Vでのオレの愛称の一つ。まだ13歳だから、チーム内では断トツに小さいのである。


 あと“野呂”はなぜか“ノーロ”と間違って選手登録されていた。

 まっ、それは別に気にしていないけど。


『コータ・ノーロ、今日も頼んだぞ!』

『最終戦に勝利を!』


 そうか、彼らが集合している理由が分かった。

 何故なら今日はドイツ3部リーグの“最終戦の日”なのだ。


『オレたちF.S.Vの悲願の達成を頼んだぞ!』

『今日の最終試合で、優勝と昇格を決めてくれ!』


 そして今日は大事な試合であった。

 今日の試合の相手は1位の強豪チーム。それに勝つことで、F.S.Vは逆転優勝。そして自動的に上の2部リーグに昇格が確定する。


 だからサポート団はいつになくハイテンションで、クラブハウスに集合していたのだ。

 それならオレも彼らに何か応えてあげないと……よし!


『みなさん、いつも応援ありがとうございます。そして、今日の試合は任せてください!』

『『『おおー⁉』』


 クラブハウスに入る前、オレはサポーターに向かって宣言する。

 今日の試合でF.S.Vは絶対に勝つことが出来ると。


『みんなで一緒に勝利を勝ち取りましょう……優勝と昇格の栄誉を!』


 これはオレのリップサービスでも慢心でもない。

 今のF.S.Vは本当に強い。

 今日の試合に勝てるビジョンは、既に頭の中に浮かんでいた。絶対に勝てる自信がオレにあったのだ。


『じゃあ、行ってきます! またスタジアムで!』


 そう言い残し、オレはクラブハウスの中に入っていく。


『『『F.S.V! F.S.V! F.S.V!!』』』


 後ろでサポーターがチーム名を叫び絶叫していた。

 彼らも大事なクラブの一員。13番目の選手である。

 その力強い声援は、オレたち選手の背中をいつも押してくれるのだ。


 よし……今日の試合も彼らの声援に負けないように、頑張らないとな!


◇


 それから数時間後、ドイツ3部リーグの最終戦が始まる。

 強豪クラブを相手に、激しい戦いが繰り広げられていく。


 だがオレたちは最後まで諦めずに、懸命にプレイをする。

 そして更に時間が進む。


『今節の3部リーグの優勝はF.S.V!』


 会場のアナウンスと共に、満員のF.S.Vスタジアムは大きく揺れる。

 オレたちは念願の3部リーグで優勝できたのだ。


「ふう、優勝か……本当によかったな」


 そして、これは新しい幕開けでもあった。

 更にハイレベルな2部リーグに、F.S.Vが挑戦していく時代へ。


 こうしてオレのドイツ修行の二年目が、本当の意味でスタートするのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。