挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する 作者:ハーーナ殿下@青森県弘前市
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

28/68

第27話:5年生になった

 4月になりオレは小学5年生になった。
 5年生になったからといって、特に変わったことはない。
 相変わらずサッカー漬けの毎日である。

「朝練に行ってきます!」
「葵も行ってきます」

 妹の葵と早朝6時に家を出て、チームの練習場に向かう。学校に行く前に日課の朝練をするためだ。

「コータ、遅いぞ」
「ヒョウマ君、おはよう! それに他のみんなも!」

 グラウンドには澤村ヒョウマ君と、選手コースのチームメイトたちがいた。
 昨年からオレの自主練習に、チームメイトたちも参加していたのだ。

「コータ先輩、おはようございます!」
「コータ先輩、ヨロシクお願いします!」

 選手コースの4年生たちが、オレが深々と頭を下げて挨拶をしてきた。
 そういえば5年生になって、変わったことがある。
ついにオレに後輩ができたのだ。

 選手コースは基本的には、4年生から6年生までしかいない。
 オレは2年生の時から飛び級で選手コースにいた。だから今までずと一番年下で、後輩がいなかったのだ。

「みんな、ボクに先輩は付けなくてもいいよ。このチームは部活じゃないから」
「それなら……コータさん、よろしくお願いいたします!」

 “コータさん”か……とても良い響きだ。
 初めて耳にする新鮮な呼ばれ方に、オレは思わずジーンとする。

 今では『コータ!』とか『野呂コータ!』とか『生意気な後輩!』とか、さんざんキツク呼ばれてきた。
 だが5年生になった今月から、オレにも可愛い後輩たちができたのだ。

「よーし♪ それじゃ、今朝はこの技に挑戦してみよう! ボクが手本を見せるから」

 可愛い後輩たちの前で技を披露する。実戦で使える技の一つである。

「コータさん、この技は……」
「すみません……どう練習すればいいのですか?」

 後輩たちは新技に手こずっていた。
 何しろコレは未来の知識で持ってきた、秘密の技の一つ。この時代には存在してなかった技である。

「この技は……足をこうして……アレ? こうやれば……あれ?」

 自分では出来るのだが、上手く言葉で説明できない。
 理論上は分かるのだが、後輩たちに簡潔に説明できないのだ。

「おい、お前ら。この技は、ヒザの角度がポイントだ」
「本当だ……さすがは澤村先輩です!」
「“皇帝カイザー”先輩は、本当に凄いです!」

 オレのつたない説明を、ヒョウマ君が上手く補足してくれた。後輩たちはさっそく試して喜んでいた。

 流石はヒョウマ君。相変わらず、教え方のポイントが、本当に分かりやすい。
 ちなみに“皇帝カイザー”はヒョウマ君の二つ名である。

『史上初の小学生4年生で、得点王でチームのエース。日本ジュニア世代の“皇帝カイザー”澤村ヒョウマ!』

 昨年の全国大会の優勝記事で、とあるサッカー雑誌にそう書かれていたのだ。
 それ以来、チーム内でのヒョウマ君の通称は皇帝カイザーになっていた。
 かなり中二病全開な呼び名だが、本人もまんざらはない顔で、ちゃんと反応してくれる。

 流石ヒョウマ君はプロとして、鋼の精神を持っていた。後輩たちにも大人気である。

(でも、このままじゃ……オレの先輩のとしての威厳が……)

 可愛い後輩たちは、ヒョウマ君に違う技を習っている。
 いつの間にかオレの周りには誰もいない。以前の一人ぼっち自主練に近い状況に戻っていたのだ。

「ほ、ほら、みんな。だったら、この技はどうかな? 一気に二人の相手を抜く特別な技だよ!」

 あの一人ぼっち状況には、もう二度と戻りたくない。
 オレは未来の更なる難易度の技を披露する。これならばオレの先輩としての人気も回復していくであろう。

「おい、コータ! しっかりしろ!」
「あっ、キャプテン?」

 新6六年生の新キャプテンが、オレの頭をポカリと叩きてきた。どうやらオレは暴走寸前だったらしい。

「そんな高難易度の技はお前か、澤村しかできない。4年生には基本技から教えていけ。焦る必要はない」
「キャプテン……そうでね!」

 オレは新キャプテンに諭される。
 確かに4年生たちは、選手コースに昇格したばかり。いきなりの難易度は、逆効果になるであろう。

 暴走しかけたオレを止めてくれて、本当にありがとうございます。
 昨年のキャプテンに続き、今年の新キャプテンにもオレは頭が上がらない。

 オレは焦らないように後輩たちと朝練を続けていく。

「よーし。そろそろ時間だ。学校が遠い奴らやら上がれ」
「「「はい、キャプテン!」」」

 朝練の時間もそろそろ終わりである。
 このチームは色んな小学校から、みんな通っている。だから通学時間もバラバラなのだ。

「じゃあ、ヒョウマ君。みんな、また夕方の練習でね!」
「待って、お兄ちゃん。葵も一緒に行く」

 楽しい朝練の時間は、あっとう間に過ぎていく。
 オレは妹とランドセルを背負って、学校に行く。夕方になれば、またチーム練習がある。
 それまでの辛抱である。



 朝練からの、学校の授業が始まる。
 オレは小学校では昨年と同じく、真面目に授業を受けている。
 小学生5年生の4月まで、今のところ無欠席で無遅刻を更に継続中。風邪やインフルエンザで休んだこともない。
 ざ・健康優良児である。

 授業中も昨年と同じ様に、秘密のサッカートレーニングは欠かしていない。オレには前世の勉強の記憶があるため、小学校の授業は楽勝である。
 その分の精神的な余裕を、サッカーのイメージトレーニングに使えるのだ。

 たぶん世界中の小学生で、毎日こんなことをしているのはオレだけであろう。
余計な義務教育に時間を取られないことが、転生したオレのアドバンテージの一つなのだ。

 あと、やり直しの小学校生活も結構楽しい。前世では小学生4年生の夏に不幸な大事故に巻き込まれていた。
 だが今回は事故を回避していた。平和で明るい小学生は毎日が楽しいのだ。

「ねえ、コータ君ってサッカーの全国大会で優勝したんだよね?」
「いつも、どんな練習しているの?」
「将来はJリーガーになるの?」

 今年になり学校では、また変わったことがある。
 昨年以上に、休み時間や放課後に、クラスメイトによく話かけられるのだ。

 これも全国大会で優勝した効果であろう。
 地元の新聞とTVに取材されたことで、活躍が以前よりも広く知られていたのだ。

 それに比例するように、今年の2月14日のバレンタインデー。クラスの女の子から昨年以上の数のチョコを貰った。

 昨年が3個だったのに対して、今年は6個もチョコを貰ったのだ。
前年度比200%UPということで、オレはかなり舞い上がっていた。

「コータ君、あの澤村ヒョウマ君と仲はいいの?」
「誕生日とか知っていたら、私たちに教えてよね」

 そういえばオレの学校の女子の間で、ヒョウマ君人気が凄くなっていた。
 全国大会の特集のTVや新聞記事を見て、女子たちが一気にファンになっていたのだ。

「うん、今度、ヒョウマ君に聞いてみるね」

 そういえばバレンタインデーの時、ヒョウマ君は総計30個以上のチョコレートを貰っていた。色んな小学校の女の子から、貰っていたらしい。

 流石はヒョウマ君である。
 今でもクールでカッコイイし、将来はイケメンサッカー選手になるのが確定しているだの。これは前世を知るオレだけの秘密の情報である。

 ちなみに本人は甘いものを食べないので、選手コースの皆に分けてくれたのだ。

 30個以上か……オレの6倍以上である。しかもヒョウマ君は本命っぽいのも、たくさんあったな。
 それに比べてオレのは全部、義理チョコだったような気がする。

 全国大会の人気で舞い上がっていたけど、オレの人気は前世とあまり変わらないように思えてきた。
 学校でもクラスメイトとは友達だけど、親友と呼べる仲間はいない。クラスの女子もオレとは、若干距離を取っているようにな気がする。

 つまりオレが人気あると思っていたのは。

①全国大会で活躍したリベリーロ弘前ひろさきが人気がある。
  ↓
②チョコを貰えたのは、オレはそのチームの選手だから。

 という方程式になってしまう。

 つまりオレのクラス内ので人気は前世と変化が無い。
 むしろサッカーばかり打ち込んでいるから、前世よりもマイナスになっている可能性が高いのだ。

「うう……」

 そう思ってきたら、段々と泣けてきた。
 もしかしたらクラスで秘密の誕生日会とがあって、オレだけ呼ばれていないパターンも有り得る。
 小学校の卒業式では孤独な最後を迎えてしまう、そんな可能性も有り得るのだ。

「お兄ちゃん、早く練習に行こうよ!」

 5年生の教室に、4年生の妹の葵が迎えにきた。
 学校の授業が終わったから、チームの練習に行く時間なのだ。
想像しただけで、本当に辛くなってきた。

「葵? ……そうか……!」

 そうだ、オレにはサッカーがあった。
 リベリーロ弘前ひろさきの仲間たちがいたのだ。
 たとえバレンタインのチョコがヒョウマ君の6分の1以下でも、オレにはチームメイトたちがいたのだ。

「よし、今日も放課後の練習を頑張ろう!」

 自分で削った精神エネルギーが、一気に全回復した。
自動自傷&自動回復の術。地産地消みたいだ。

 オレはランドセルを背負って、練習に向かうことにした。

『コータ君、ガンバ……』
『コータ君、いつもカッコイイよね……』

 ん?
 何やら教室からオレの名前が聞こえたような気がする。クラスの女の子たちのヒソヒソ話かな?

 でも、今のオレには練習場に向かうことしか頭にない。
 5年生になっても平常運転。今日も我が青春の場所に向かうのであった。

ツギクルバナー
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ