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素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する 作者:ハーーナ殿下@青森県弘前市
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第16話:小学生4年生になった

 オレは小学4年生になった。
 4年生になったからといって、特に変わったことはない。
 相変わらずサッカー漬けの毎日である。

「朝練に行ってきます!」

 早朝6時に家を出て、チームの練習場に向かう。学校前に日課の朝練をするためだ。

「野呂コータ、遅いぞ」
「あっ、ヒョウマ君、おはよう! 早いね。それに他のみんなも」

 グラウンドには澤村ヒョウマ君、選手コースのチームメイトたちがいた。
 彼らは自分と同じ4年。あと5、6年の先輩たち。選手コースの人たちが、自主的に集まっていたのだ。

「それじゃ、今朝はこの技に挑戦してみよう! ボクが手本を見せるから」

 オレは全員の前で新しい技を披露する。実戦で使える技の一つである。

 このチームメイト合同の朝練は、今年の1月2日から続いていた。
 元旦はいつのように、オレ一人での朝練だった。

 でもチームメイトの皆も、次の日から誘うようにした。
 朝練の人数は段々と増えていき、今では選手コースのほとんどの人が参加していた。

 小学生の時の早起きは本当に辛い。オレも前世では学校ギリギリまで寝ていた。

 でも朝練の人たちは、誰も愚痴なんか言ったりしない。
 昨年末の全国大会での準々決勝で敗退。その時の悔しさを、皆でバネにしていたのだ。

「コータ、この技は難し過ぎないか?」
「ああ。こんな見たこともない技を、どう練習すればいんだ?」

 朝練メンバーは新技に手こずっていた。
 何しろコレは未来の知識で持ってきた、秘密の技の一つ。この時代には存在してなかった技である。
 それでもみんなは練習に戸惑っているのであろう。

「うーん、毎日コツコツ練習しかないかな? ボクは不器用だから取得に、半年くらいかかったけど……」

 オレのやり直しサッカー人生の技練習は、幼稚園の頃から並行して何個も練習してきた。

 毎日反復練習して、ミニサッカーで試す。
 ダメだったらまた反復練習して、ミニゲームで試す。
 不器用な自分には、そのアドバイスしかない。

「おい、お前ら。この技は、たぶん足首の角度がポイントだ」
「おお、さすがは澤村!」
「コータの何倍も分かりやすいぜ!」

 オレの説明を、ヒョウマ君が上手く補足してくれた。先輩たちはさっそく試していく。

「ふん。こんな技、オレ様は4週間で習得してやるぜ!」

 最近のヒョウマ君は誰よりも、熱心に練習に励んでいた。
 以前は他の皆の前では、こうしてアドバイスはなかった。それに自分の努力している姿も、他人は見せてくれなかった。

「ヒョウマ君、ありがとう」
「ふん。礼には及ばないぞ、野呂コータ」

 でも、あの全国大会の敗戦から、ヒョウマ君は少し変わった気がする。
 このチームの皆に対する態度が違う。
 自分の努力している背中を見せることで、チームの質を上げようとしていたのだ。

“孤高の天才ストライカー”からの“努力する天才ストライカー”へのクラスアップ。

 チームメイトからの好印象も爆上りである。
 なんだか嫉妬してしまうけど、オレは嬉しかった。チームが一丸になって前に進もうとしていることに。

「あっ、そろそろ時間だ? 学校に行かないと。じゃあ、また夕方の練習でね!」

 楽しい朝練の時間は、あっとう間に過ぎていく。
 ランドセルを背負って学校に行かないと。こういった時間の制限は、小学生だから仕方がない。
 サッカー少年である前に、本業は学業なのだ。



 学校が始まる。
 オレは小学校では真面目に授業を受けている。
 今のところ無欠席で無遅刻を継続中。風邪で休んだこともない。これもサッカートレーニングのお蔭かな。

 また例によって授業中は足の感覚や、スポーツビジョンのトレーニングは欠かしていない。先生の視線を、敵チームの視線として反応していた。

 学校ですら精神的に休むことはない。
 相変わらずサッカーのために、二度目の人生を突き進んでいた。
 まさにサッカーのために、一人ぼっちで学校にいるようなものだ。

「ねえ、コータ君ってサッカーで全国大会に行ったんだよね?」
「有名な選手とかに会えたの?」
「リフティングとか何回できるの?」

 だが最近、学校で変わったことがある。
 休み時間と放課後に、クラスメイトによく話かけられるのだ。

 これも昨年末に全国大会のベスト8まで進んだ効果であろう。
 地元の新聞に載ったこともあり、活躍が広く知られていたのだ。

 そういえば今年の2月14日のバレンタインデー。クラスの女の子からチョコを何個か貰った。

『前世31年間+今世9年間=40年間』の人生で初めての経験だった。
 これもサッカーを真面目に打ち込んできた影響であろうか?

 そういえば前世でもスポーツができる奴らは、女子にモテていた気がする。特にサッカー部やバスケ部の連中は。

「じゃあ、練習があるから」

 クラスメイトに騒がれるのは、悪い気分ではない。そんな二度目の人生も悪くはないであろう。

 だが今のオレには放課後に、行くべき場所がある。
 サッカー場という戦場に、行かないといけない戦士なのだ。

 ……少し自分に酔っている。



 放課後はダッシュで家に立ち寄り、いつものように間食のおにぎりを食べていく。
 同時に着替えて、サッカー場に向かう。
 義務教育の時間は終わり、ここから先は待ちに待ったサッカータイムだ。

「野呂コータ、遅いぞ」

 朝練と同じようにヒョウマ君と、他のチームメイトたちが先に自主練習していた。
 ボクの学校が地理的に、一番遠いから仕方がない。

 でも、こういった練習前の自主練も、前はなかったこと。
 本当に皆の練習に対する姿勢が、大きく変わったような気がする。

「さあ、今日の練習を始めるぞ」
「「「コーチ、よろしくお願いします!」」」

 夕方5時になり、チームでの練習がスタートする。
 ここから先はコーチに従っていく。

 そしてコーチも前より、気合いが入っていた。
 全国大会ベスト8という結果を出して、コーチも自信がついたのであろう。

 そういえば最近では、チームに入会する小学生も増えてきた。
 これも全国大会の実績と、地元新聞に載った好影響。チームは以前よりも活気がついてきた。

「よし、ミニゲームを始める。本番と思って、頭を使ってプレイしろ!」

 練習の後半1時間は前回を同じように、5対5のミニゲームが主体である。
 これはオレたち選手たちにとっても、有りがたいことだ。

 テクニックや基礎は自主練習でも、身につけることができる。
 だがサッカーに必要な経験値の多くは、こうしたゲーム内でしか習得できないのだ。

 それにミニゲームが多いと楽しい。
 だってオレたちはまだ12歳以下の小学生ばかり。チームメイトたちは、楽しそうにミニゲームをしていた。

 “楽しい”&“夢中”。

 もしかしたら、この二つに勝る、練習モチベーションは無いのかもしれない。



「ふう。休憩の時間か」

 オレは一度、休憩に入る。
 ミニゲームは5対5で、選手コースの全員が交代で行う。
 攻守が常に疾走なサッカーは、時間が短くても濃密な練習なのだ。

 こうした休憩中も他のチームメイトの動きを見て、ゲームの勉強していく。

「おい、野呂コータ」
「あっ、ヒョウマ君」

 ちょうど同じタイミングで休憩に入ったヒョウマ君が、隣にやってきた。
 こうして練習中に話かけてくるのは、彼にしては珍しい。
 いったい、どうしたのであろうか?

「率直に聞く。今のこのチームで横浜マリナーズU-12に、年末に勝てると思うか?」
「あの横浜マリナーズU-12に?」

 今はまだ4月の春。
 ヒョウマ君は7ヵ月後の年末に開催される、全日本少年サッカー大会の話をしてきた。
 自分たちのチームが全国大会にいった時に、結果はどうなるかと。

「善戦は出来ると思う……」

 これはオレの客観的な予測である。
 たしかに今年の元旦からチームの皆は、自主練習に取り組んできた。
 このまま順調にいけば12月には、昨年よりも強いリベリーロ弘前が完成するであろう。

「でも今のままでは、勝つのは難しいかもしれない」

 オレは断言する。
 だが成長するのは、相手も同じ条件だ。
 特に横浜マリナーズは才能ある小学生を集めている。能力の上昇値がウチよりも高い。

 それに例の三人組は脅威であった。今年の彼らは三人とも6年ということもあり、大きく成長しているであろう。

 他の選手の総合力も計算しても、オレたちが負けてしまう確率が高いのだ。

「そうか。オレ様も同じ計算だ」

 ヒョウマ君も同じ推測だと口にする。
 幼い頃からプロの世界を間近にしてきた、彼の意見は本質をついていた。
 ヒョウマ君も特に、あの三人の力が脅威だと断言する。

「せめて、あと一人……凄い選手がいたら、勝てる確率が、一気に上がるのに……」

 オレは勝利への道を模索する。
 ミニゲームをしているチームメイトを、一人ずつチェックしていく。
 リベリーロ弘前の4年生から6年生まで、選手コース全員を見ていく。

 だが残念ながら、横浜マリナーズU-12に対抗できる選手は、今のところ一人もいない。
 元々の才能の差が、あまりにも違いすぎるのだ。

 こちらには圧倒的なヒョウマ君がいてくれる。そのアドバンテージは大きい。
 でも、せめてあと一人、凄い仲間が足りないのだ。

「あと一人か? それなら、アイツをレギュラーとして鍛えよう」

 ヒョウマ君は一人の選手を指差す。
 ミニゲームでたった今、得点を決めた小柄な選手。このミニゲームではハットトリックを決めた選手だ。

「たしかにアイツは上手いけど……でも……」

 その選手がこちらに近づいてくる。まだ試合中だというのに、大胆な行動である。

「ねえ、コータお兄ちゃん、今のゴール見た? 凄いでしょう!」
「うん、さすがはあおいだな」
「えへへ……お兄ちゃんに褒められちゃった」

 ヒョウマ君が指さした、その選手はあおいである。
 オレの1才下なので、まだ3年生の妹。今月から飛び級で選手コースに昇格してきたのだ。

「えーと、でも、あおいは3年生だよ、ヒョウマ君?」
「お前やオレ様も去年は3年生で、全国大会に行った」

「それはそうだけど……それにあおいは女子だよ?」
「ジュニアの大会に性別は関係ない。それにオレ様とお前以外だとは、アイツがチームで一番才能がある」

 何故かヒョウマ君はあおいのことを、ベタ褒めしていた。
 でも、本当にそうなのかな……?

 だって、あのあおいだよ。
 小さい頃は、こんなに小さかった女の子だよ。

 たしかにあおいが3歳のなった頃から、オレとサッカーで毎日遊んでいた。
 自主練も真似して、毎日のようにしていた。

 あれ? でも、そういえば、あおいは最近は、めっぽう上手くなっていた気がする。
 この自分との1対1で、いい勝負をするようになっていた。油断するとオレは、葵にも負ける時もある。

 このチームでもヒョウマ君以外では、オレは負けないようにしていたのに。

 そう考えたらあおいは、ものすごくサッカーの才能があるのかな?
 あまりにも身近にいすぎたせいで、客観的に見られずにいたのだ。

「とにかく猫の手も借りたい状況だ。アイツもレギュラーとして考えるぞ」
「うん、分かった。でも、コーチが何ていうかな?」

 ヒョウマ君の提案に、コーチは大賛成してくれた。
 何しろ今日のミニゲームであおいは大好調だった。コーチとしても想定外の選手だったのであろう。

「やったー! ついに葵も念願だった、お兄ちゃんと同じチームになれるんだね!」

 こうして妹のあおいは、リベリーロ弘前の選手に選ばれた。
 次の小さな大会でデビューするという。

 でも本当に大丈夫かな?
 怪我とかしないかな。
 兄として今度の大会が心配だ。
ツギクルバナー
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