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エピソードその1:ヒョウマ君の家の秘密(前編)

最近はサッカーの試合が見れないので、サッカーのことを逆に考えて、ふと投稿してみました。よろしくお願いいたします。














これはオレが小学4年の春休みの時の話だ。


 今日はヒョウマ君の家で、お泊り会の日。メンバーはオレとチームメイト数人である。

 今宵は日本代表の試合が放送されるので、みんなでTV観戦してそのまま泊まらせてもらうのだ。


「こんにちは!」


 オレだけひと足先に早く着いた。玄関でヒョウマ君のお母さんに挨拶をする。


「あら、コータ君、早いわね。こちらこそ、よろしく」


 ヒョウマ君のお母さんはかなり美人さんだ。

 何でも元はモデルの仕事をしていたという。三十歳を越えているのに、まだ二十代前半にしか見えない若々しさだ。 

 うちの年齢相当で庶民派の母親とは違う。


 もしかしたらプロサッカー選手になると、キレイな女の人と出会うことが出来るのであろうか? もしもそうなら、オレも将来はプロ選手にならねば。


「ヒョウマは買い出しに行っているから、先に上がってちょうだい」

「おじゃまします!」


 ヒョウマ君はみんなの分のジュースやお菓子を買い出し中だという。彼が帰って来るまで待たせてもらうとするか。


「コータ君たちの荷物は、二階のヒョウマの部屋に置いておいてね」

「えっ……今日はヒョウマ君の部屋に入れるんですか?」


 オレはヒョウマ君の部屋に入ったことはない。この澤村家にはサッカーのTVの勉強会の時に、何度かお邪魔したことはある。


 でもTVのあるリビング以外の部屋には入ったことがないのだ。


「あら、そうだったかしら? じゃあ、折角だから家の中を案内するわ」

「本当ですか? ありがとうございます、ヒョウマ君のママ」


 ヒョウマ君が帰って来るまで少し時間がある。こうしてオレは家の中を案内してもらうことなったのだ。



「まず、ここがヒョウマの部屋ね」

「うわー、ここが……」


 最初に案内されたヒョウマ君の部屋は、かなり広かった。

 畳にして十二畳以上はあり、庶民のオレの部屋の倍以上はあった。サッカー用品は何も置いてなく、大人っぽい部屋である。


「あっ、このポスターは?」


 部屋の片隅に、サッカー選手のポスターを発見した。

 張られていたのは世界トップクラスの選手のポスター。ヒョウマ君と同じようにFWの人だった。


「こんな一面があったなんて、意外だな……」


 どちらかといえばヒョウマ君は、サッカーに関してミーハーな部分を見せない。

 いつもクールにしていて、こんなポスターを張っているのはイメージがなかった。


「そのポスターは去年から張り出したのよ」

「去年ですか?」

「そうね……去年の全国大会の後かしら? サッカーに対する情熱を、急に燃やし始めた時期だったわ」


 去年の全国大会か……それはオレたちが準々決勝で、横浜マリナーズに負けた年だ。


 あの敗北はオレたちに大きな転換期となった。ヒョウマ君は個人主義から、チームに貢献するようになった時期である。

 きっと彼の中でも心境の変化があって、ポスターを張ったのであろう。


「じゃあ、次の部屋を案内するわ。サッカー関係だと、こっちね」

 お母さんの案内で、次の部屋に移動する。

 サッカーに関係する部屋か……他にどんな部屋があるのかな。


「ここよ……今、電気をつけるから、ちょっと待ってね」


 案内されたのは、一階の薄暗い部屋であった。雰囲気としては、室内用の車庫みたいな場所である。


「電気のスイッチは……あった、ここだわ」

「うわ……」


 電気が付いて、部屋が明るくなった。目の前の光景にオレは思わず声を上げる。


「ここは……室内用の練習場ですか?」

「そうね。車庫と倉庫を繋げてリフォームしたのよ」


 目の前に広がっていた練習場は圧巻であった。

 車が三台は楽々に入る広さがある。天井もけっこう高くて、圧迫感はない。


「しかも、ここは人工芝か……」


 練習場は全面人工芝が敷かれていた。ゴムチップもまかれており、小学生用のゴールも設置。これは完全にサッカー専用の空間である。


「ここは凄い家ですね……」

「やっぱり、ちょっと、ビックリするわよね。元々は普通の家だったのよ」


 お母さんが練習場について説明してくれる。

 この家は元々ヒョウマ君のお母さんの実家だという。


 ヒョウマ君が二年生の夏休みに、ここに引っ越すことが決定。大々的にリフォームして、今の形になったという。


「練習場は主人が息子のために用意したのなの」


 車庫を練習場にリフォームしたのは、ヒョウマ君の父親だという。自分で設計して、業者に依頼して改造。人工芝やゴールネットも、本物を用意したという。


「す、凄いお父さんですね……」

「よっぽど嬉しかったのかもね……ヒョウマがサッカーに本気で取り組みはじめて」


 なるほど。父親というのは、そういうものなのかもしれない。我が家の父親も、オレのために色々と用意してくれた。


 野呂家にも六畳だけどサッカー練習場がある。練習場といっても、部屋に絨毯を敷いただけの簡単な場所。ヒョウマ君の家ほど立派ではない。


 でもオレにとっては大事な場所であった。三歳の時から毎日のように、あそこで自主練をしていた。


 そう考えると家族の協力はありがたい。改めて両親に感謝である。


「ん……あれ? この穴は?」


 天然芝が大きく削れた場所を見つけた。不思議とそこだけ消耗している。

この穴はいったい何だろう?










読んで頂きありがとうございます。


後編は明日以降に投稿します。



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[一言] 何回か、読み返していますが、とてもうれしく思います。
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