表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/157

第135話:予選リーグ

 開会式の翌日の8月6日となる。

 今日はオリンピックサッカーの初日だ。


 この時代のオリンピックサッカー本戦では、世界の予選を勝ち抜いた16か国が戦う。


 まずは4カ国を4グループに分けて、リーグ戦を行う。

 各グループの上位2カ国の、合計8カ国が決勝トーナメントに進出できる。


 そして最後は8カ国による一発勝負のトーナメント方式で、優勝……金メダル国を決めるのだ。




「よし、まずは予選リーグ突破を突破を目指すぞ。お前たちの力を、世界中に見せてこい」

「「「はい!」」」


 予選リーグ第一試合。

 澤村ナオト監督の激励を受けて、オレたち選手は気合の声を上げる。


「野呂コータとヒョウマ。お前たち高校生コンビは、後半から出す予定だ。ちゃんと前半を見ておけ」


 オレとヒョウマ君の二人はベンチスタート。

 これは澤村監督の戦略の一つ。

 

 相手のスタミナが切れてきた後半に、若い世代を投入して、一気に攻め込む作戦なのだ。


(キックオフか……ついにオリンピック本戦がスタートしたんだ……)


 審判の笛の音と共に、試合が開始される。

 満員のスタジアムは大きく揺れて、観客たちは日本の応援をしていく。


「凄い、熱気だね、ヒョウマ君!」

「ああ、そうだな。オリンピックが好きな日本人らしい、お祭り雰囲気だな」


 試合をちゃんと観察しながら、ベンチ隣のヒョウマ君と話をしていく。


 この大阪オリンピックは日本で開催。

 サッカーの試合は関西を中心にした、全国のスタジアムで行われる。


 そのため観客席の多くは、日本人によって占められていた。

 日本とっては常にホーム戦の雰囲気であり、選手にとってもかなり有利な条件である。


「だが外国の選手はアウェイの雰囲気には慣れているからな。油断はできんぞ、コータ」

「そうだね、ヒョウマ君。ヨーロッパのリーグは、半端ないアウェイの洗礼があったからね」


 海外のサッカーの盛り上がり方は、尋常ではない。

 そのためサポータも時には熱狂的になりすぎる。


 世界の過去のアウェイの事例はたくさんある。


・アウェイチームの選手が悪質なファウル、審判が不可解なジャッジをしたら、ホーム側のサポータが一斉に立ち上がる。物を投げたり暴言を吐いたりする。

・審判はホームのチームに対して甘くなる。

・非公開の大事な練習を、相手国に監視されていた。

・更衣室がなく着替えは外。

・練習場に危険物の散布。

・宿泊しているホテル周辺で一晩中騒動を起こして、アウェイ選手団を眠らせなかった。

・選手のバスに物を投げつけ。選手がそろっていないのにバスが出発。

・ロッカールームのシャワールームを、不可解な故障中で使用不能。


 など世界では事件が沢山あった。


 だから海外のサッカー選手は、アウェーに対応するためメンタルでタフな人が多いのだ。


「海外に比べて、日本は大人しいからな」

「うん、そうだね。日本人はマナーが素敵な国民性だからね」


 世界の中でも日本人は、かなり規律と節度を重んじる国民性である。

 そのためサッカーのアウェイの洗礼も、海外ほどひどくはない。


 今回の大阪オリンピックの開催に関しても、海外のサッカーチームに対しては、万全のおもてなしで迎えている。

 そのスポーツマンシップにのっとった日本の対応は、世界中でも高評価を得ていたのだ。


「たしかに日本は美徳で素晴らしい。だが世界のサッカーは戦いだ。負けたら、そこまでだぞ、コータ」

「うん、そうだね、ヒョウマ君。ボクたちも勝って、結果を出さないとね!」


 世界に比べて日本のサッカーの歴史は浅い。

 100年クラスのヨーロッパや南米に比べて、たったの20年ちょっとしかない。


 だが日本サッカーを愛する人たちは、絶え間なく努力と勉強を続けてきた。

 日本人らしい戦い方がある。


 それを証明するために、今はオリンピックで結果を出す必要があるのだ。


「よし。少し早いが、いけるか? 野呂コータ、ヒョウマ君⁉」


 そんな話をしていた時である。


 前半35分で試合が動いていた。

 澤村監督の声が飛んできた。


「はい、ボクは大丈夫です!」

「オレ様も、もちろんだ」


 会話をしながらもアップ運動は終えていた。

 前半の相手国の動きも観察して、イメージトレーニングも万全。


「よし、それなら二人同時で交代だ。頼むぞ」

「はい!」


 オリンピック本戦に出場する機会が、ついにやってきた。

 オレとヒョウマ君は、選手交代のスペースに立つ。


「さあ、大暴れして、オレ様たちの力を、世界に見せつけてやるぞ、コータ!」

「うん、そうだね、ヒョウマ君!」


 オリンピック本戦を目の前にして、いつになくヒョウマ君も気合が入っていた。


「よし、いこう、ヒョウマ君!」

「ああ!」


 こうして日の丸をつけたサムライブルーの二人の戦士は、戦場へと駆けていくのであった。



 それから数十分後。


 日本は初戦を勝利で飾る。

 ヒョウマ君が1得点で、オレが1アシストの活躍したのだ。


「よし。このままの勢いで、予選リーグを勝ち進んでいくぞ!」

「「「はい!」」」


 澤村監督の言う通り、日本代表は勢いに乗っていた。

 日本開催ということで、大歓声のエネルギーを追い風にできる。


 また8月の日本の気候は世界でも独特。

 幼い頃から日本の太陽を浴びでボールを追いかけてきた、日本代表にとっては天の利も味方につけた状況なのだ。



 それから数日が経ち、8月9日。

 日本代表予選リーグ2試合目。


 この日の日本代表は好調だった。

 前半から得点を重ね、そのまま試合の主導権をキープ。


 2対0で勝利することが出来た。




 それから更に日が経ち、8月12日。

 この日は日本代表予選リーグ3試合目。


 2試合が終わった時点で、日本は勝ち点6。

 他国の結果にも恵まれて、予選通過が確定していた。


 そのため3試合目で澤村監督は策をうつ。

 主力選手の多くを休ませて、サブメンバーで試合に臨んだ。


 何しろオリンピックサッカーは過密スケジュールで、選手の疲労が抜けにくい。

 またたったの18人しか本登録できなく、他の国際試合が20数人なのに、比べて圧倒的に選手の疲労が大きい。


 しかしサブメンバーでの試合はリスクもある。

 3試合目に負けてしまったら、チームの勢いが消えてしまう危険性あった。


 出来れば最低でも引き分けで、終えなければいけないのだ。


「よし! やったね、ヒョウマ君!」

「ああ、そうだな」


 だが澤村監督の策はピタリとはまる。

 試合結果は1対1の引き分け。


 数日の後の決勝トーナメントを臨んで、主力戦はスタミナを温存に大成功したのだ。


(いよいよ、次は決勝トーナメントか……)


 こうしてオレたち日本代表は、8カ国で戦う決勝トーナメントに、無事に進出するのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ