報酬は何を頂けますか
お願いできると私は聞いた。
それにラウルは少し黙ってから、
「報酬は何を頂けますか?」
「何が欲しいの? 富、権力? でも権力はすでに手に入れる予定だし、富だって……となると、何か宝物でも欲しいの?」
熱で頭がぼんやりとしながら私は問いかける。
彼はすでにそのどちらも、確かこの時点で手に入れているはずだ。
そのような状況で、“私”の執事を演じているのならば酔狂という言葉しか思いつかない。
そこで彼が、
「そうですね、欲しいものは二つ。そのどちらも、クリスティーヌ様、貴方の手で得られるものです」
「そうなの?」
「そうです」
どうやら、私自身で用意できるようなものが欲しいらしい。
だったらそれでいいわねと、熱が再び上がりかけた私は、
「ではそれでいいわ、その二つで」
「何かを聞かないのですか?」
「ラウルは、そんなにとんでもない要求はしないと思うの」
「……分かりました。では二つのうち一つは、クリスティーヌ様の願いを聞いた成功報酬としていただくことにしましょう」
ラウルが何処か困ったように私に言う。
どうやらまずは一つでいいらしい。
そう思っているとそこでラウルが、
「どうして私が、そうだと気付いたのですか?」
「……この世界でこれから起こる物語を見たの。夢うつつ、といった感じではあるけれど」
乙女ゲームの世界全部を私は今思い出せるわけではない。
そして乙女ゲームはこの世界に存在しない。
だから私はそう答えた。
するとラウルは、
「ランジェ家の姫君は、時折そういった“夢”を見ることがあると聞いています。それにより数多の危機を“回避”してきたと」
「そうだったかしら」
「そうですよ、風邪であまり頭が働いていないようですね。……その方が私には好都合ですが。それで、どんな結末をクリスティーヌ様は変えたかったのですか?」
囁くラウル。
だから私は、幾つかの不幸な結末を告げるとラウルは薄く笑い、
「もしもあなたが処刑されるようなことがあれば、この国を滅ぼします」
怖い事を言っているな、と私は思ったのだった。




