問いかけ
恐れないのか、といった男の声。
何処か笑いを含んだそれと同時に、興味深そうに私を観察しているのを感じる。
値踏みされている。
私はすぐに気づいたけれど、そんな私の後ろでキャンディが小さく震えている。
怖い、怖いと呟いている。
同時に目の前の男の白いローブのようなものに書かれたものが赤く光っている。
瞬時に消えてしまうその光が輝くごとに、キャンディが怖いと言っていることに気付く。
まさか。
「魔法? 魔法で、恐怖を感じるようにしている?」
「……正解だ。まさか、これに抵抗する人物がいると思わなかった」
私の呟くような答えに、目の前の男は楽しそうに笑う。
そのそれを愉快だというかのような目の前の人物。
そこで彼は、フードのようなものを自分の頭から取り払う。
月の光を煮詰めたような、輝くような銀髪。
けれどその銀色の髪も時々赤く光る。
私の頭が重くのしかかる何かに支配されそうになる。
恐怖に似た焦燥感、ざわめきを感じて、動けなくなりそうになる。
けれどここで私が動けなくなっては、そう思って気力を振り絞る。
目の前の敵を睨み付ける。と、
「やはり僕の魔法が聞いていない。何てことだ。君はとても強い力を持つ魔法使いなのかな?」
「……さあ、そこまで強い魔法を使えた記憶はないけれど」
「では、そんなに目に見えるものではなく特殊な魔法使いなのかな? 僕に抵抗できるくらいの強い力を持ちながら、目に見える魔法が使えないのは……奇妙だからね」
嗤うその人物は、その場所から一向に動かない。
もう少し近くに来たのなら、以前のように気絶させて、キャンディと一緒に逃げ出すのにと思う。
そこで目の前の人物は、
「君は確か、公爵令嬢のクリスティーヌか。そういえばあの家系には時々、未来を知るものが現れるといった話があったね。その大きな魔力は、そのせいなのかな?」
そう問いかけるように私に言うのだった。




