理由
それから作ったクッキーの幾つかを袋に入れたものを渡す。
仕事の合間にでも後で食べて欲しかったから、なのだが、
「先ほどの話を聞いて、私のために作って頂けたのですか?」
「! や、やっぱり気づいていたのね!」
「それはそうです。クリスティーヌの気配に私が気付かないはずがないでしょう」
まるで当然というかのようにラウルがそう答える。
前からラウルはさといと思っていたが私の気配まで、と衝撃を受けているとラウルは小さく笑い、
「というのは冗談で、隠れている時にドレスの裾が見えていましたよ」
「……そう、なの?」
「ええ。ですから隠れて私を見ているなと。あまりにも可愛らしかったので放っておきました」
何となくひどい様な気がしなくもなかった私は、それ以上考えるのを止める。
こんな風に全部ラウルの手の平の中は、やっぱり気に入らない。
少しくらいは驚かせたいけれど、どうすればいいのか思いつかない。
でもこうやって、手作りクッキーを食べてもらえるのは幸せな気持ちになるのだけれど、驚かせるとは少し違う気がする。
何かいい方法はないだろうか、そう思っているとラウルが呼ばれてどこかへ行ってしまう……と思うと、ウィリー王子を呼んでいた。
何かお話があるらしい。
なんだろうと思いつつもそこで私は気づいた。
ここには乙女ゲームのヒロインであるキャンディがいる。
つまり女の子同士で恋人についての相談ができる状態だ。
これはとてもいい機会だ、と私は思いながらキャンディに、
「相談に乗ってほしいのだけれど、よろしいかしら?」
私はキャンディにそうお願いしたのだった。




