恋愛話
ラウルに手の平で転がされている気がする。
「もしかして今まで全部、私の行動が気付かれているからあんな会話を……」
「クリスティーヌ嬢、流石にそれは考えすぎなのでは」
ウィリー王子に呆れたように言われてしまった私は、
「でも今、ちらって私の方を見たような」
「たまたまかもしれません。これからも気づかれるようならそういう事でしょう。ほら、移動してしまいますよ、どうするつもりですか? クリスティーヌ嬢」
楽しそうにウィリー王子にけしかけられて私は、更にラウルを追っていく。
すると今度は、公爵家の領地関係を管理している一人の女性、ベスがラウルに話しかけている。
だがあまりよろしい雰囲気ではない。
女性にしては珍しいと思ってみつつ私達は近づいて様子を見ると、
「だからこの書類を届けて欲しいだけよ」
「ですからそちらはご自分で、届けた方がよろしいかと」
「私はあいつと会うのが嫌だって何度も言っているでしょう!」
「……私も諸事情により今は誤解されたくない立場ですので、ご自分で頑張ってください。もしくは他の方々に……」
「それがみんな逃げるからこう頼んでいるんでしょう! なんでわざわざ意地悪を言ってくるアイツに私が会いに行かないといけないのよ」
「痴話喧嘩はほどほどに」
「誰が痴話喧嘩よ! でも今、貴方らしくなく、誤解されたくないと言っていたわね。ふふん、邪魔してやろうかしら」
いつもはきりっとした理知的な、落ち着いた女性であるベスの様子がおかしい。
しかもラウルに喧嘩をうっているように見えたがそこでラウルが、
「……もし邪魔をするようならば、睡眠薬付きで、貴方を先方に送りつけますよ」
「な、何よ、脅しには……」
「先日告白されたばかりだから会いたくない等という、下らない話に私は付き合いたくない、そう言っているのです」
「な、何で知って……」
「知りたいですか? そうすると、睡眠薬行きは確実になりますが」
「……」
「もう少し素直になってください。先方の方も、はっきり言って面倒ごとを押し付けてきて私が迷惑です」
どうやら、恋愛事にまたも巻き込まれているらしい。
そうしてみていると、ベスはすごすごと引き下がっていく。
それからまたラウルは移動していく。
そこでキャンディが、
「ラウルは恋愛関係の相談をよくされているようですね」
「……仕事をしている姿が全然見れない」
私が小さく呟いたのだった。




