まずは味方が必要ね
私、クリスティーヌ・ランジェは公爵令嬢である。
とある乙女ゲームに出てくる、所謂悪役令嬢という物だ。
そのキャラクターは確か、高慢で性格があまりよろしくない美少女だった……はず?
そんな私は、とある行き違いにより偽の婚約破棄書を渡されて嫉妬のあまりに、某乙女ゲームの主人公を殺そうとするらしい。
本来のストーリーでは、それに気づかれて本当に婚約破棄され没落、ゲームのヒロインは私の婚約相手であった王子様とくっつくのである。
ただ没落することによって、その後起こる内戦がなかったことになり、私とヒロイン、王子が生き残ることになるのだが……。
「婚約破棄が発端になった権力闘争の結果の内乱ね」
との事だった。
確か処刑されるエンドもあった気がするが、それを見てどこかの革命で処刑されたマリー何とかさんを思い出したのをよく覚えている。
ただこちらの場合だと、権力闘争の敗北、といった意味合いが強かった気がするが。
「まあ、内乱が起きなければ処刑はされないし。今いる王子様には婚約破棄するように持って行って、後は、ヒロインをどうするかかな」
そう私は考えながら、悩む。
実の所この婚約も、私の両親がさらにこのランジェ家の繁栄を願い取り付けたものだ。
野心家な両親の説得、それが今回のいちばんの難関かもしれない。
そう私は思って少し考えてから、風邪でまだ頭がもうろうとするわね、と思いつつも、
「さてどうしよう、まずは味方が必要ね」
そう私は呟いて、ある人物を呼ぶようにメイドに指示を出したのだった。