名前を呼ばれて
選んだ服をそのまま着て行く事に。
先ほどまで来ていた服は、紙袋に入れてもらった。
それを受け取り店を出た私だけれど……その、特に深い意味はなかったけれど、ラウルと腕を組んでみた。
ラウルが驚いたような顔をして私を見た。
こんな顔初めて見た私は、自分からやってみて良かったと思う。
するとすぐにラウルは優し気に私に微笑み、
「貴女にはいつも驚かされます」
「でも私はラウルがこんなに驚いた顔をしたのは初めて見たわ」
「そうですか?」
「そうです。……これからももっと、色々なラウルを見せてもらえると嬉しいな」
「……私もまだまだですね。とても驚いてしまったのと嬉しさもあって、顔に出てしまいましたか。精進します」
「……別に私の前では素直に感情を顔に出してくれてもいいと思うの」
「……努力します」
そう答えるラウルの様子からは、努力しないように見えた。
気づいた私は次にラウルがどうしたらまた驚くか考えたのだけれど、いい方法が思いつかない。
そうして進んでいくと、今度は布やビーズで花などを語った飾りを売る店に辿り着く。
丁度で店のような形をしていて、特にか愛らしいものが沢山ある。
「見て行っていいかしら」
「構いませんよ」
との事で幾つか見て、花をかたどった髪飾りを一つ購入した。
ラウルが似合っていると言ってくれたものだ。
こうして他にも幾つもの店を見て回った所で……私達は遭遇してしまったのだ。
ある、人物達に。
「クリスティーヌ」
聞き覚えのある声で名前を呼ばれて私は振り返る。
そこにいたのは私を婚約破棄したはずの王子と、私が知っている乙女ゲームのヒロインがいたのだった。




