何で黙るのかしら
それから一通り公園周辺を見て回って、そろそろ時間だからとカフェへと向かう事に。
途中、私が婚約破棄されたことになっている王子と、乙女ゲームのヒロインに似た人物を目撃した気がしたが、多分気のせいだろう。
気のせいという事にしておく。
まだ婚約破棄されて添えほど時間がたっていないのに、どんな顔をして会えというのか。
そう私が思っているとそこでラウルが、
「どうしたのですか? クリスティーヌ」
「いえ、さっき、見たことがあるような気のする人物がいたような気がして」
「婚約破棄したあの王子とその恋人がいましたね。それが何か?」
ラウルが事もなげに答えるのを聞きながら、会うのが少し気まづい気持ちになっていた私は、もう関係ないわと思った。
けれど、すぐにある疑問が浮かぶ。
「そういえばラウル。私、風邪をひいていたのでよく知らないのだけれど、どうやって婚約破棄させたの?」
詳しい顛末を私は聞いていなかったのでそう問いかけると……ラウルは沈黙した。
「……」
「ラウル、何で黙るのかしら」
「……手段は選んでいられませんでしたので」
「ちょ、顔をそむけずに私の方を見なさい! そして何をしたのかを言いなさい!」
「……大丈夫です。多分これで他の男性も近づいてきませんし」
「ラウル、正直に答えて。一体あなたは何をしたの?」
「先ほどのカフェが幾つか見えてきましたね。どこも列もなくなっています。さあ、行きましょう」
そう言って目的のカフェに私達は向かい、結局ラウルは一言も答えなかったのだった。




