実力行使
花々を見たりして楽しんだ私だが今回のデートについて考えてみたのだが、
「ラウル、貴方、私の事を口説いてばかりいるような気がする」
「それはそうでしょう、デートなのですから」
「デートってここまで口説く物なの?」
今まで殿方と一緒にデートを……したことはなかったというか、友達付き合い以上には発展しなかったし、婚約破棄されたかの王子は一緒に遊んだ程度で友達同士以上の何者でもない。
女友達の恋の話も聞いたが、ここまでだっただろうか?
確かに断片的ではあったけれど、似ている気がする。
そう思って問いかけるとラウルは、
「確かに私は、クリスティーヌを貰える密約を貴方とかわしました。ですが、それはあなた自身しか手に入れられられない」
「? 私が好きだからラウルは私が欲しいのでしょう?」
「私は欲張りなので、貴方の心が欲しいのです。だから私も必死なのですよ」
肩をすくめたラウルに私は、ここまで情熱的に口説かれると、彼の心を疑うのはどうなんだろうという気持ちになってくる。
悪い人物でないのは知っている。
私の記憶にある乙女ゲーム内でもそうだった。
ただ苦労をした人物ではある。
そう思いながらも考えてしまっているとそこで、
「どうしたのですかクリスティーヌ」
「いえ、自分の罪悪感と戦っていただけ」
「それは約束を反故にして私から逃げるという事でしょうか?」
「違うわよ、口説いてくるラウルが本当は私に全く興味が無かったりしたらどうしよう、と悩んでしまったの。以前友人でそう言った男に口説かれた子がいたから」
「なるほど、そのような不安でしたか。よかったです」
「よかった?」
「ええ……私が実力行使に出なくて済みますから」
笑うラウルに私は、実力行使って何をする気なのかと問いただしたい気持ちになりながらも言い出せなかったのだった。




