お揃いですね
こうして飲み物を飲み終わった私達は、再び公園を散策することに。
今度は私からラウルに手を伸ばして、握りしめる。
自分から手を握るのは私にとって勇気のいる事だった。
けれどそうするとラウルが微かにうれしそうな雰囲気になる。
それから私はラウルと手を繋ぎながら黄色い花を楽しんでいると、やがて噴水のある場所にまでやってくる。
実は別のガイドブックで、この噴水につながる小さな湖周辺にはこの時期しか見られない“リリーの花”という白い花が見られるという。
それほど沢山咲いているわけではないので、この周辺の黄色い花の絨毯に対しては見劣りするが、清楚な花でひっそりと咲く花は気高く美しいとかなんとか。
まだカフェが開いている時間であるので、その花を見に行くのもいいかもしれない。
それほど遠くなさそうだし、そう思った私はラウルに提案すると、
「では、見に行きましょう。本日のデートコースを決めるのはクリスティーヌですから」
と言ってラウルは頷いてくれた。
それから一緒に再び歩きながらラウルが、
「次回は私がデートコースを決めましょう」
「……ホラー劇は止めてね」
「残念です。あれは役得だったのですが」
「……意地悪」
「クリスティーヌに嫌われたくないので、ホラー関係は止めましょう」
ラウルがそんなことを言う。
ではくぎを刺さないと、そのホラー関係の所に連れていかれてしまう所だったのか?
ラウルは前から知っていたけれど、油断も隙も無いわねと思っているとやがて池が見えてくる。
そして水辺に白い、百合のような花が幾つも咲いている。
静かに凛として咲く花は気高く見える。と、
「クリスティーヌに似た花です。美しく気高い」
「そうかしら」
「少なくとも私にはそう見えます」
「私は貴方に見えるわ、ラウル」
「では、お揃いですね」
ラウルがそう私を見つめながら告げたのだった。




