表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/52

いい香りはする

 こうして屋敷を抜け出すときは、ラウルと一緒にと約束させられてしまった。

 だが現在この状態ではどう考えても、


「これからのデートの約束をしただけなのでは」

「気づかれてしまいましたか」

「……こうやって私が油断するとすぐにそう……」

「申し訳ありません。クリスティーヌだけはどうしても諦められませんから」


 ラウルがそんなことをのたまう。

 どうしてこう、少しの切っ掛けとなる会話だけでこれほどまでに口説くのか。


「私をそこまで口説いて、疲れない?」

「疲れるというよりは、私の場合は“必死”でそれどころではないのです」

「……何だか悪い事をしている気持ちになるわ」

「どうしてですか?」

「ラウルが必死なのに、私はそこまで情熱をまだ持てていないの」

「かまいませんよ、貴方の心を落とすのも楽しみの一つですから」


 ラウルが楽しそうに私に言う。

 何だか恋愛ゲームをしているみたいねと思いながらしばらく歩いていくと、のどが渇いてくる。

 そしてすぐそばには偶然にも空いているベンチと、飲み物を売っているお店が。


「ここで休んで、何か飲みましょう」

「では私が買ってきましょう、クリスティーヌは何が飲みたいですか?」

「そうね……果実を絞った飲み物がいいわ」

「沢山ありますよ。仕方がありません、クリスティーヌが好きなものを選んできますね」


 そう言ってラウルが飲み物を購入しに行く。

 それを見送りながらそこで、どうしてここのベンチが開いていたのかに気付いた。


「花から少し遠いな。でも、いい香りはする」


 目に見える物だけが魅力的だとは限らない。

 私はそう思いながら座っていると、飲み物を二つ購入したラウルが戻ってきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ