便利だと思いますか
カフェが空くまで、本日のデートの予定を繰り上げることにした。
カフェが混んでいるといっても、出店で昼食を購入する人たちもいるため目的の場所も込んでいるような気が私はしていた。
案の定、本日のデートコースの一つ、“カタリナ公園”には人が沢山いる。
「お昼時だからかな……今はこの、黄色い“テレの花”が満開だから見に来たのだけれど、他の人達も同じみたいね」
「そのようですね。ですが、花の美しさが霞んでしまうほどクリスティーヌ、貴方は美しいですよ」
「……お世辞に聞こえるような賞賛はやめてよ。それを言ったら男性なのにラウル、貴方だって花の美しさが霞むくらい綺麗だわ」
そう返すとラウルは目を瞬かせてから苦笑し、
「男性を花に喩えるのはおやめください、クリスティーヌ様」
「あら、どうして?」
「とても“か弱い”男のように聞こえます。私はクリスティーヌにとって頼れる人物でありたいと思っています」
「十分頼りになっているわ。むしろ、なりすぎるくらいよ? これ以上頼りになったら……もう私の行動を全部把握している状態になるわ」
「困りますか? 便利だと思いますか」
「……屋敷の抜け道を片っ端から塞いでおいて、よく言うわ。おかげで抜け道がほとんどなくなってしまったわ」
「それはつまり、あと幾つか屋敷を抜けだせる場所があるという事ですね」
微笑みながら告げたラウルに私は、彼が絶対にその抜け道をふさぐだろう未来が、容易に想像できた。
言わなければよかった、私は今更ながらに後悔しているとラウルが、
「綺麗な小鳥は鳥かごの中で大切に飼われるべきです」
「空が青いと、鳥かごの鳥だって空を飛びたくなると思うの」
「……では、その時はいつも私が一緒と約束してくださるなら、それ以上は詮索しませんよ」
「……分かったわ」
そう、私は渋々頷いたのだった。