悩んだ
差し伸べられた手を握り返す。
手袋をした布越しではあったけれど、暖かく感じた。
けれどそれを口に出すのも恥ずかしくてそれ以上は何も言わず、手をつないで私達は歩きだす。
お昼時であったためか、劇場近くの何処のカフェも人が集まっていて混んでいた。
中には行列のお店もある。
その内の一つを見つけて私は、
「今日行ってみたかったカフェが、行列だわ」
「クリスティーヌはもうお腹が空いたのですか?」
「……そこまでではないわね。ホラー劇を見てお腹が空くというよりは何も食べたくはない感じかしら」
実際にあのゾンビ人形などを見た後では、食欲も失せる。
特にお肉関係はあまり見たくない。
私がそう思っているとラウルが小さく笑ってから、
「それほどまでに苦手なのならば、ホラー劇など選ばなければよかったのに」
「大人になったから大丈夫だと思ったのよ。なのにこんな事になるなんて」
「ですが、怯えるクリスティーヌも可愛らしかったので私には役得でしたね」
ラウルの言葉に私は、確かにラウルには役得かもしれないけれど私の目論見は外れたわけで、でもラウルは喜んでいるようだしと悩んだ。
するとラウルがそこで、
「それでどうしますか? カフェは人が並んでいるようですが……並びますか?」
「……いえ、お腹が空くころには空いている時間になりそうだから、それまで時間をつぶしましょう。もう幾つか行きたい場所があるの。いいかしら?」
「ええ、今日はクリスティーヌの選んだデートコースを行く事になっていますから」
そうラウルが答えたのだった。