様子を伺っているのです
額にキスをされてしまった。
油断したと私は思って、しかもそれが仕返しであるらしいと言われて気づく。
額とはいえ、異性にキスをされてしまった。
しかも先ほど私を兎と言っていて、だからこれは、
「何だか味見をされているみたい」
「そうですよ、様子を伺っているのです」
「それで伺った感じでは、どうかしら」
試しに聞いてみると相変わらず笑みを浮かべたままラウルは、
「極上、といった所でしょうか」
「……もう少し表情豊かにならないものかしら。そうしたら表情で貴方が何を考えているのかが分かるのに」
「では、分かったのならどうするのですか?」
「うーん、もっと楽しい?」
そういうと、そこで少しだけラウルは困った顔になった。
「……今までの生い立ちの関係で、私はこの表情以外は無理だと思います」
「……ごめんなさい」
私は謝る。
そういえばゲーム内でほんの少し語られていたラウルの過去は……そう思っているとラウルは、
「いえ、クリスティーヌが私に興味を持ってくれた、それだけでも大きな収穫です」
「……でも、ラウルには変わりないから、別にいいわ」
ラウルの本当の気持ちをもう少し知りたいと思っただけで、ラウル自身に変わってほしいと私は思っているわけではない。
無理にこちらの価値観を押し付けたくない、そう思ってしまったのは、私がラウルに嫌われたくないからだろうか?
それとも私はラウルを受け入れたいと思っているからだろうか?
どちらだろうと、私が思っているとラウルが、
「そう貴方に言われたのは二回目ですよ、クリスティーヌ」
「そう、だったかしら」
「ええ。だから私は貴方が欲しいのです」
そこでラウルが微笑む。
それは今までの作り笑いではなく心からの……。
反則だと、思った。と、
「では次は何処に行きますか? クリスティーヌ」
ラウルが私に手を差し伸べたのだった。