完璧執事のミス
ラウルを呼んだ私は、デートがしたいと告げた。
すると彼は目を瞬かせて、
「デートですか? それも今日、今すぐに」
「ええ、天気も雲一つない快晴だし、デートにはとてもいい日だと思うけれどどうかしら」
「……なるほど、失敗しましたね」
そこでラウルが本当に珍しく呟いた。
彼が自分で失敗だといったのだ。
この完璧な執事である彼が、ミスを犯したらしい。
それに興味があった私は、
「何に失敗したの? 貴方らしくないわね」
「……貴方を手に入れたと満足してしまっていたようです。そうですね、デートコースなども事前に調べておくべきでした。まだ猶予の時間を渡していましたし、すでにデートをしたいと聞いていたのに調べていなかった私の落ち度です」
「つまりどこに行くのかは決めていないと」
「そういった事になりますね」
困ったように笑うラウル。
けれど意外に抜けている所がある彼に私は、少し面白くなってしまって……ある事を思いついた。
「それなら、今日のデートコースは私に決めさせてもらえるかしら」
「クリスティーヌ様にですか?」
「ええ、丁度行ってみたい場所があったの。それに、貴方が決めない場所で、ラウル、貴方がどんな反応をするか見た見たいわ」
「それは……少し悪趣味では?」
「完璧な貴方も素敵だけれど、そうではない貴方も見たい、そんな私のお願いは聞いてくださらないの?」
冗談めかして私がそう告げると……いつも穏やかに仮面をかぶったような執事のラウルは、驚いたように私を見て、次に心からといったような微笑を浮かべ、
「だから私は、貴方が欲しいのです。いいでしょう、では、本日のデートコースの選定はクリスティーヌ様にお願いいたします」
そうラウルは答えたのだった。