表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

マユの宝物

久しぶりの投稿。今後の展開など、行き当たりばったりのところがあるけど、楽しく考えていきたい。

その日は朝から雨が降っていた。

雨のにおい。マユは嫌いではなかった。


においは時空を超えて昔のことを蘇らす魔法のようだと思う。


水たまり。空の色。風の音。その風に乗って湿った懐かしい悲しいような嬉しいようなある日のことが思い出だされる。


ゲン。確かゲンだった。その少年の名は。

雨の降るある日、本を読んでいた目をふと窓越しに見下ろすと、一人の少年が木の枝に引っ掛かった何かを取ろうと棒切れを持ってその木の中腹までよじ登っていた。


初めはいったい何者がこんな雨降る中で何をしているんだとびっくりした。

雨に打たれながらも木によじ登り、引っ掛かった青い何かを必死で取ろうとしている。後で知ったことだが風に飛ばされた老人のチーフか何かを取ろうとしていたとのこと。


湿った草の香りを抱いた風のにおいで、マユはあの日のことを時々思い出す。


マユには宝物がある。少し色あせたモノクロの写真。

マユが一時期通ったキリスト教会でその少年と二言三言会話を交わした。そして、イースター礼拝の後の祝会で撮った記念写真に彼が収まっている。なぜ彼がそこにいたのか、またなぜ同じ写真に納まっているのかわからない。彼のことをほとんど知らないし、また覚えていない。


だんだん記憶の中からも薄れてわからなくなりそうな思い出。

でも、雨のにおいで、とうに忘れていたことがふと蘇る。写真を引っ張り出して彼の顔を一番初めに探す。もう14、5年たったのだろうか。まだ十代の時の彼の優しく笑った顔。


これは初恋と呼んでいいのだろうか?マユは自問自答してみる。

いや違う。初恋は横浜の女学校の先生だったはず・・・・




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ