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僕のバイトは探偵です。番外

僕と君とエイプリルフール

作者: 赤柴紫織子

「にく、今日はエイプリルフールだそうだ」

 ツインテールを揺らし、色ちがいの瞳を不敵に細めてシアンちゃんは言った。

 公園のそばの自販機。ここは何故か知り合いにあうことが多い。

「うん、そうだね」

 ちなみに姉さんの誕生日でもある。夜にいっしょにご飯食べに行く約束だ。

「ということで、何かすごい嘘をつこうと思う」

 それはまだ言っちゃだめなんじゃないかな。

 まあなんだ、小学生のウソは可愛らしいものだろうしここは微笑ましく――

「実は私は橋の下から拾われたんだ。ほら、あそこの急な坂のある橋」

 予想のはるか斜め上を越えていた。

「重い!!冗談でもそれは重いよ!!」


 しかも場所の説明のせいでとても生々しい!

「えっ、ダメか」

「ダメだよ!」

「うーん…じゃあそうだな、実はこの地球を滅ぼすために送り込まれた宇宙人とか」

 悟空かよ。

「もっと笑えるネタを言おうよ…」

 重々しくて笑えない。

「例えば?」

「例えば、うーん……帽子ってあるよね」

「ああ」

「あれ元々は坊主頭の子供に頭を守らせるために被せたものなんだって、髪がないと危ないって。だからぼうに子。帽子というそうだよ」

「へぇ!」

「嘘だよ」

 きらきらした瞳に罪悪感を覚えながら事実を言うとがくっとシアンちゃんが滑った。

 即興の嘘話をころっと信じてしまうあたり可愛い。

 いつもヤンチャしているから可愛いらしさより危なっかしさが先行しているんだよね。


「それにしても、どうしてシアンちゃんはここを歩いているの?」

「おつかいを頼まれたんだ」

「ふうん。えらいね」

「えろいね?」

「…え、ら、い、ね」

 どこをどう間違えたらそうなるんだ。

「何買いに行くの?」

「これ」

 メモを渡されていたらしく、四つ降りにされた小さな紙を見せられた。

 ええと…。

「あのさ、シアンちゃん」

「どうしたにく」

「このオリーブのオンパレードって冗談だよね?」

「? お母さんはいたって真面目に渡してきたぞ?」

「………」

 なにをするつもりなのだ、あの人。まさかオリーブのオリーブオイルかけとかしないよな。

 二三回会ったきりだったがこういうのやりかねない雰囲気の人だな…。

「まあ、一からカレー作ろうとした人だからな。また何かやるんじゃない?」

 平然ととんでもないこと言い出したよこの子は。

「…香辛料から作ったの?」

「そう。しばらく家ん中スパイシーな匂いで充満していた」

「だろうね…」

 めちゃくちゃ嘘みたいな話だが、シアンちゃんは真面目な顔をしている。

 大変なお母さんの元に生まれたみたいだな…。

「じゃあ、私はそろそろ行くぞ」

「あ、うん。気をつけてね」

「ありがとう」

 メモをおりたたんで僕と正反対の道を歩いていく。

 と、ふいに振り返って彼女は少し大きい声をだした。


「にくーっ!好きだぞ!」


「え?」

「なんちゃってー!」

 いたずらっ子ぽく笑ってシアンちゃんは駆けていった。

 自然と頬が緩む。微笑ましい嘘だなぁ。




―――――




 道を歩いていたら、電柱にごんごん頭をぶつけている友達に会いました。

 すんげーびっくりした。

 とりあえず死にかねないので静止して事情を聞くことにした。

「なにしてんの、シアン」

「ま、マゼンタ…」

 死にそうな顔してる。

「なんちゃってなんて言わなきゃ良かった…なんちゃって言ったから絶対告白無効になった…」「はあ?」

 告白?

「カルネのお兄さんに?」

「うん……」

 一途だなぁ。

「…言う日にちが悪かったよ、シアン。今日エイプリルフールじゃない」

 嫉妬で胸の中が暴風雨を起こしていたがなんとか表に見せないようにする(支離滅裂)。

 おちつけー。

「流れでいけるって思ったんだもん…」

「またチャンスはあるでしょ?大丈夫よ」

「かなぁ」

「うん」

 慰めながらさらさらの髪を撫でる。


 それまでシアンはわたしのそばにいればいいの。

 嘘ではなく、本当だけど…まあ、言う必要はないよね。




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