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付与士は世界の配慮です。

作者: あおい蜜葉
掲載日:2026/05/21

四捨五入するとテンプレ誘拐聖女モノです。

しない場合は用済み勇者による国家破壊モノです。

 どうもこんにちは、通りすがりの転移者Dです。

 ……なんでD? 普通Aじゃないかって?

 魔王討伐のために勇者が四人召喚されたからです。


 伝説の剣を抜いて使いこなせる『剣士』が一名。

 瘴気を浄化し回復魔法が使える『巫女』が一名。

 理を知り多くの魔法を使える『賢者』が一名。

 三人の能力を大いに強化できる『付与士』が私。


 ゲームか? と思うような構成ですが、まぁバランスも悪くはないです。

 なにより、私立の女子校の初等部で知り合った幼なじみ四人組がまとめて呼ばれましてね。

 よくある聖女召喚モノみたいな、たった一人で呼ばれて世界の命運押し付けられるよりは全然心強いわけです。


 だとしても、今、思いませんでした?

 『付与士』は別にいなくても問題なくない? と。

 要するにバフ担当なのだから、ポーションとかでも代用できる程度の仕事なのでは? と。


 えぇ、我が事ながら、そう思いました。まだ盾役(タンク)とかの方が役に立つんじゃない? と。

 しかしこれは、私たちを召喚したこの世界自体の、ある配慮に基づく必須要素だったと後に悟りました。



 ***



 私たちがこの国に召喚(誘拐)されたのは、二年ほど前。


 女子高生を集団誘拐したロリコンジジィどもの言い分を要約すると

『この世界の人間では魔王倒せないから呼んだ』

『終わったら元の世界に返してあげるから頑張って』

『帰還の魔法陣は王城にあるよ』

 だそうで、こんな国滅べばいいと思いました。

 残念なことに、召喚当時は滅ぼす力が無かったので保留しましたが。



 一年かけて魔獣や魔族を倒しつつ、王国の北に続く峻厳な魔晶山脈の向こう、未踏領域にたどり着き。

 どうにか魔王を倒したのが、去年の今頃の話になります。

 魔王を倒して莫大な魔力を吸収したせいか、いつの間にかジョブも成長したり、まぁ色々ありました。


 復路は魔族や魔獣による妨害も少なかったので、半年ほどで済みました。

 無事に王都に凱旋し、王城で討伐の報告を王にしたところ――こちらに槍を向けた衛兵たちに囲まれました。



 はい、テンプレ。

 元はといえば自分たちの世界の問題なのに、自分たちで片付けようとせず、異世界から呼んだ人間に押し付けるようなクソどもの国ですから。まぁこうなりますよね。


 討伐したら元の世界に還してくれるとか言ってたけど、実際のところは用済み扱いで殺すだろうね〜、くらいのことはこちらも予想済み。


『もしも私たちが王城から、あるいは王都から出てこなかったら。魔王さえ倒せば用済みとして殺されたんだと思って、弔ってほしい』


 王都に向けての半年間の帰途や、王都に凱旋してから王城に挨拶に行くまでの時間で、めちゃくちゃにその手のウワサを仕込んでおきました。


 王も忙しいですからね、英雄が帰ってきたからってすぐ謁見できる時間が空くわけでもないので。

 登城予約を取り付けたら『謁見は五日後』って言われたから、ラストスパートとばかりに王都でめちゃくちゃその話を撒いておきました。



 もちろん、私たちは元の世界に帰りたい。

 帰還陣が動くなら、問答無用で帰る予定です。

 当然、無事に帰れたなら、私たちは王城から出てこない。


 その場合、この話を聞いていた国民には、どう見えるでしょうか?


 そう、私たち本当に帰すつもりがあろうが無かろうが、王城には『世界を救った英雄を害した大罪人』の名前を背負ってもらう予定で撒いた話です。

 それで革命が起きようが国が崩壊しようが、その隙をついて隣国に蹂躙されようが、私たちを勝手に誘拐して危険に放り込んだクソどもには相応しい罰です。


 それで被害に遭う国民がいたとしても関係ないです。私たちの都合を無視した誘拐で私たちに救われた人は、皆あのクソどもと同罪ですから。


 上から下まで口を揃えて『この世界の人間に魔王は倒せない』とかもっともらしい事言って私たちを英雄扱いしてましたけど、ふざけんなって話です。

 それを言っていいのは、この世界の最後の一人になるまで一旦魔王に突撃して、殺せるか試してからであるべきなんですよ。


 だって自分に眠る力を知らないだけで、誰かは倒せるかもしれないじゃないですか? それも試さずに楽な方に流されて、異世界から人を呼ぶ。

 その腐った根性で満ちた民衆も、全員有罪です。


 元々ね、誘拐された時点で「こんな国滅べばいい」と思ってましたし。まだ力がないから保留していただけで。



 そして五日後。

 魔王戦を終えて成長した私は『付与士』から『祝福者』にジョブ進化していました。

 そのスキルである【物理ダメージ完全無効】と【魔法ダメージ完全無効】と【状態異常完全無効】を四人全員に景気良く重ね掛けして準備完了。


 おなじく『賢者』から成長した『大賢者』が、巨大質量破壊魔法(グランドメテオ)を発動ホールドした状態で隠し持ち、いざ謁見の間へ。


 いやぁ、そもそも登城したくなかったですけどね?

 それでも一応は、帰還の魔法陣が王城にあるとのことなので、それを使うために仕方なく王城に行っただけ。

 本当にあったとして使わせてくれるかどうかについては、最初から疑っていましたが。


「ふははは、無知蒙昧な小娘どもが! 帰還の魔法陣など信じおってのこのこと現れたわ! 魔王さえ倒せば用済みだ、殺せば帰す必要もない! お前たち、やれ!」

「「はっ!」」

「ですよねー。はい、【グランドメテオ】」

「「「!?」」」


 ロリコンジジィどもはお忘れのようなのですが、こちとら魔王を倒せる存在に成長しているので。

 もし邪魔するようなら、あるいは最初からウソだったなら、その時は王城も魔王城と同じ目に遭わせるだけ。


 そんな心積もりで謁見し――案の定、準備した魔法を使ったわけです。


 キレイでしたねぇ、空を埋め尽くすほどの流星群。

 発動した時間帯は昼なのに、一度空が夜色に染まり、それから星が降りました。

 時間を進める力はないので、終わったら本来の空の色に戻ります。


 けれど昼だったからこそ、その全てが不自然に王城に振り注いだところを王都の民たちが目撃していました。

 そして『用済みの英雄を処刑しようとした王に、天罰の流星群が降った』というウワサが爆速で王都中に広まりました。

 仕込みってちゃんとやっておくものですねぇ。


 その話が国中、そして世界中に広まるまで、数日もかかりません。そりゃね、各国大使館、王都にありますから。そんな面白話、爆速で自国に持ち帰るわけです。

 


 そもそもなんでそんな魔法を準備してたかって?


 大賢者曰く、膨大な魔力のおかげで、この世界版アカシックレコード、いわゆる世界の理に触れられるようになったらしく。

 ソレの言うことには、全ての魔法には対になる魔法が存在するので、召喚陣があるなら帰還陣も必ずあるそうな。


 あるのに使わせる気がないか、無いってウソついてるなら、探すしかないですよね。



 ただ、王やこの国の支配層が私たちに敵対的なら、城内の人間が教えてくれるはずもなく。

 だったら自力で最大限効率よく。


 大して使えない政府なら、人権を守るのにさえ、ある程度の自助努力が必要。政府の程度が低いほど、その『自助努力』には、汚職や暴力が含まれることがある。


 異世界に誘拐される直前、公民の授業でそう教わりました。つくづく良いことを教えてくれたと思います。教わったことを遺憾無く発揮していきます。



 曰く、魔法陣というのは、一度成立すると物理的には壊せない。なので王城全てを瓦礫にしてしまえば、どこかの部屋の床に描いてある魔法陣は、ぴかぴか光ってるのが宙に浮いて見つかるはず。


 建築技術が未熟なのか地質的にムリなのか、地下室という概念すら存在しないので、瓦礫に埋もれた地下にあって見つからない、という可能性はゼロなので、思いっきりやれました。

 事前にかけた【物理ダメージ完全無効】、いい仕事しましたとも。瓦礫が頭にぶつかると、今の私たちなら死にはしなくても、普通に痛いので。


 えぇ、見つかりましたとも。

 瓦礫の上に燦然と輝く、三つの魔法陣。


 一つは、異世界から人を呼ぶための召喚陣。

 一つは、元の世界に送り返すための帰還陣。

 そしてもう一つは、牢に閉じ込めた人間たちから魔力を吸い上げて『王都だけを守る結界』を作る魔法陣。

 この国の上層部は歴史的にカスか外道か無能しかいない可能性が出てきました。



 ただ残念なことに。

 大賢者が解読したところ、そもそも私たちを呼び出した召喚陣自体が、相当に不完全なものでした。

 本来は一個中隊規模を呼び出したかった規格のはずなのに、四人しか呼び出せなかった未完成品だそう。


 そもそもこの世界の魔力では、召喚陣の発動に足りないのだそうで。ターゲットにした世界の魔力を吸い上げて召喚する、盗賊もビックリの魔力略奪×勇者誘拐システムになっているのだとか。


 ……そして、地球には魔力がほぼない。

 多分私たちを召喚するときに根こそぎ吸い上げられてしまったせいで、その残り少ない魔力すら枯れたのではないか、と。


 召喚陣と対になって自動生成された帰還陣もまた、未完成品。かつ、地球の魔力はおそらく枯渇。

 これを無理やり発動してしまうと、魔力の足りてる別の世界行きになってしまう可能性が高い。


 そういうわけで私たち四人は、地球へ帰る手段が見つかるまで、この世界で生きていくしかなくなったのでした。



 ***



 ……ここまでが『女神の配慮』の前日譚です。

 前置きが長かったですが、ようやく本題です。



 私たち四人はそれぞれ、剣士、巫女、賢者、付与士として召喚されましたが。

 旅の中でも強くなりましたし、魔王の討伐ボーナス的な感じで莫大な魔力も貰ったしで、ジョブが進化したことは既にお話した通りです。


 剣士は剣聖に。

 巫女は聖女に。

 賢者は大賢者に。

 付与士は祝福者に。


 そして、使えるようになったジョブ専用スキルが強化され。使える汎用スキルの数も、莫大になりました。

 すると、どうなったか。


 普通に生きていくのが、少し難しくなりました。



 剣聖は、見た目こそ女子高生のままですが、すんごい筋力になりました。ムキムキマッソゥな見た目ではないので、ギャップがすごいです。


 その結果、ちょっと力を入れただけでモノを壊してしまうことが頻発しました。ハンドパワーでもてこの原理でもないのに、軽く持つだけでスプーンが曲がります。木製なのに。食堂の女将さんに怒られました。

 さすがに生きづらすぎる枠代表です。



 聖女は、魔力を治癒力に変換して人を治しますが、変換力が強くなりすぎました。

 近くにある魔力は、自分の魔力でなくとも治癒力を持たせてしまうようになったのです。


 その結果、空気中の魔力で動いている噴水の魔道具から低級ポーションがだばだばして大騒ぎになりました。助かる人も多いですが、行く先々で問題が起きることを次第に気に病むようになりました。

 これはこれで、市井で生きづらい枠です。



 大賢者は、詠唱無しでも、いちいち丁寧に魔力を込めなくても、魔法が発動できるようになりました。

 王城グランドメテオの時もそうですが、術名だけで良いのです。


 その結果、日常の何気なく発した言葉で発動判定になってしまい、本人も予想してないタイミングで魔法が出現しました。

 例えば「今日暑いねぇ、涼しくならんかなー」と言うだけで雨が降り始めました。迂闊に口が利けなくなり、しばらく筆談生活になりました。

 どう考えても生きづらいです。



 私は私で、バフを付与するのが役目でしたが、グレードアップして、デバフも掛けられるようになってしまいました。

 バフが光の祝福、デバフが闇の祝福、二つとも使えるので祝福者となったようです。


 元々少しばかり育ちと口が悪いので、こちらが若い女だからとナメた態度を取った男性には「ハゲろ」「もげろ」と言ってしまうタイプでして。

 それがまぁ、闇の祝福と認識されてしまってですね。即時発動しました。えぇ、ハゲました。多分もげた人もいます。

 さすがに問題だろうということで、しばらく口を慎みましたが、ストレスが溜まって仕方ないです。



 そういうわけで、四人全員に、闇の祝福を施すことにしました。

 召喚当時まで戻すとさすがに非力すぎるので、【ジョブ能力半減】のデバフを掛けました。

 それでやっと魔王を倒す直前くらいだったので、討伐ボーナスがどれだけヤバかったのか分かるというものです。



 今なら物理で国くらい軽く滅ぼせたのでしょうが、直接手を下すなんて非効率なので、いい感じに自滅してもらうのが一番です。

 ……多分、私が大賢者に【威力上昇】を掛け、大賢者が【発動位置指定】を乗せてグランドメテオを撃ちまくり、聖女が大賢者に【魔力即時回復】を掛け、剣聖が物理的に守ってくれたら、世界のどこからでも滅ぼせますけど。


 ひとまずはこの国に、召喚陣と帰還陣の完成度を高める手掛かりがないか探し切るまでは、焼け野原にするわけにもいかないのでやりません。



 ともあれ、半減してようやく普通の人のフリをしながら、ヒントを探す旅が始まり、気づいたわけです。


 最初、付与士は要らなくない? って思いましたけど。

 『こう』なる展開が見えてたから、将来的にデバフ要員として必須だったんだぁ、と悟りました。


 この世界に来るときに、神や女神の類とは遭遇していないため、魔王はいても神はいないようですが。であれば、そう計らったのは、いわゆる『世界の意志』そのものなのでしょう。


 この国の人間は試しもせずに人に頼るクズで、国家の上層部は生きてる価値の無いゴミカスロリコンどもで、そんな国でもそこそこ繁栄してるということは、世界そのものに国家単位での自浄作用は無さそうですが。


 呼んだなら帰れる対魔法の構造といい、盾役を抜いてでも付与士を入れた配慮といい、「ま、思ったよりやるじゃん」と。


 そう思えたので『一番近い世界に無理やり繋げて呼んだのだとしたら、今すぐ世界ごと滅ぼしたら元の世界に繋がらないかな計画』は、無期限凍結(さいしゅうしゅだん)になったのでした。




書いてる本人は高火力主義なので、前衛、前衛、中衛(遊撃or暗殺)、後衛(範囲攻撃or回復)で組むことが多いです。

バフ打つMPで攻撃したい脳筋。

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