影の加入と、逃亡者の足音
「リナ殿! なにとぞ、この拙者に命令を下され!」
土下座の姿勢から顔を上げたレンが、目を輝かせて懇願する。
「……あなたは、何ができるの?」
リナが冷ややかな視線を下ろすと、レンは胸を張って答えた。
「拙者の職業は『忍者』。隠密行動が得意でござる!」
「あなた、山に入る前から私たちの感知にバレバレだったわよ」
「さすがはリナ殿! 拙者程度の隠密では、手も足も出ませぬなぁ! ハッハッハ!」
なぜか嬉しそうに笑うレンを見て、俺は思わず吹き出しそうになった。
「具体的にどんなスキルが使えるんだ?」
俺が尋ねると、レンは真面目な顔に戻り、指を折りながら説明を始めた。
「隠密、縮地、空蝉が使え申す。隠密はその名の通り気配を消して行動する術。縮地は目視できる範囲での短距離転移にござる。空蝉は攻撃を受けた際、丸太や身代わり人形と一瞬で入れ替わる回避術にござる」
「なるほど。リナ、レンのステータスは見れるか?」
「やってみるわ。……なるほどね。素早さは多少高いけど、他のステータスがかなり低めに設定されているわ」
リナの『真理魔眼』による解析結果を聞き、俺は思考を巡らせた。
正面切っての戦闘力には期待できないが、固有の回避スキルと移動スキルは有用だ。よほどレベルが離れた格上でなければ、一方的に気付かれずにやり過ごすことも可能だろう。
「レンには戦闘ではなく、諜報活動と索敵をしてもらおうか」
「信用するの?」
リナが疑念の目を向ける。
「まぁ、悪い奴じゃなさそうだしな。それに、仲間に忍者がいるってテンション上がるだろ? 半分だけ信用するってことでいい」
「はぁ……わかったわ」
リナは大きくため息をついた後、レンを鋭く睨みつけた。
「レン、裏切りは絶対に許さないわよ」
その威圧に、レンは弾かれたように姿勢を正した。
「はっ! ありがたき幸せ! 姫のためにこの命、喜んで捧げまする!」
「姫って……」
頭を抱えるリナを尻目に、俺はレンへパーティー申請を送信した。
「よし、そうと決まればワイバーンでレベル上げだ! この山脈の害獣を狩り尽くして進むぞ」
一方その頃。
ドラグフ山脈を越えた反対側、緑の豊かな麓の森。
「はぁっ、はぁっ……!」
ガサガサと茂みを掻き分ける音が、静かな森に響く。
泥にまみれたフードを深く被った小柄な影が、木の根につまずきながらも必死に駆け抜けていた。
(死にたくない、死にたくない……死にたくない!)
肺が焼け付くように痛むが、足を止めるわけにはいかない。
『チッ……! どこに行きやがった! あの商品だけで金貨10枚は堅いんだぞ!』
遠く後方から、追っ手である奴隷商の野太い怒声が聞こえてきた。
フードの影は身をすくませながら、さらに鬱蒼とした森の奥へと逃げ込んでいった。
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