プロローグ① 神様、雑すぎません?
――気づいたら、真っ白だった。
「……ここどこ?」
上も下もわからない、白い空間。
壁も床も天井もないのに、なぜか“立っている感覚”だけはある。
夢か?
いや、妙にリアルだ。
「……あー、やっぱ死んだ?」
最後の記憶を辿る。
夜。コンビニ帰り。
スマホを見ながら歩いて――
「トラックだな、これ」
「はい、トラックです」
「ですよね」
あっさり肯定された。
振り向く。
そこにいたのは――
「神様です」
白いローブを着た、少女だった。
「軽っ」
「何がです?」
「いや、“神様です”の自己紹介軽すぎません?」
「だって事実ですし」
「もっとこう、荘厳さとかないの?」
「出そうと思えば出せますけど、面倒なので」
「神様、面倒くさがりかよ」
神、雑すぎる。
少女はふわっと空中に座る。
いや、座る場所ないけど。
俺の前にも、突然椅子が出てきた。
「どうぞ」
「いや出し方雑っ!」
「座ってください」
「はい」
座った。
なんかもう流れに逆らえない。
「では説明しますね」
神様が指を一本立てた。
「あなたは死にました」
「知ってる」
「原因はトラックです」
「知ってる」
「結構スピード出てました」
「詳細いる?」
「いりませんか?」
「いらないです」
テンポ良すぎるだろ。
「で、ここどこ?」
「死後の待機所みたいなものです」
「雑だな表現が」
「細かいことは気にしないでください」
「神がそれ言うのか」
神様はにこにこしている。
なんか腹立つ。
「で、どうなるの?」
「異世界に転移してもらいます」
「きた」
テンション上がる。
「チートとかある?」
「あります」
「やったぜ」
拳握った。
これだよこれ。
俺が望んでたやつ。
「では能力説明しますね」
神様が手をひらひらさせると、目の前にウィンドウみたいなものが出てきた。
「まず一つ目」
指を立てる。
「メイクリーチ」
「名前ちょっとカッコいいな」
「ありがとうございます」
「どんな能力?」
「なんでも作れます」
「なんでも?」
「だいたい」
「だいたいってなんだよ」
「食材、料理、武器、家、素材、生活に必要なものは全部出せます」
「え、神じゃん」
「はい」
「え?」
「はい」
「軽く認めるな」
神様、ちょっと得意げである。
「生活には困りません」
「それどころか無双では?」
「まあまあ」
「“まあまあ”じゃないだろ」
めちゃくちゃ強いぞこれ。
「では二つ目」
もう一本指を立てる。
「ルミナスマイティ」
「名前強そう」
「強いですよ」
「どんな?」
「戦闘時に強くなります」
「ふわっとしてんな」
「とても強くなります」
「具体的に」
「全部です」
「全部?」
「体力、筋力、速度、魔力、耐久、全部最大になります」
「は?」
「状態異常も無効です」
「は??」
「疲れません」
「は???」
「死にません」
「待て待て待て待て」
今なんて?
「死にませんって言いました?」
「はい」
「それチートとかじゃなくてバグじゃん」
「仕様です」
「仕様かー」
仕様なら仕方ない……のか?
「え、これ俺めっちゃ強くない?」
「めっちゃ強いですね」
「やば」
「やばいです」
神様、語彙力どうした。
「ただし」
「お?」
制限くるか?
「本人はあまり自覚しません」
「は?」
「自分が強いと思わない仕様です」
「なんで?」
「その方が面白いので」
「お前ぇ!!」
神様、完全に観客側だ。
「いやいやいやおかしいだろ!」
「大丈夫です」
「何が!?」
「なんとかなります」
「雑すぎるだろ!」
この神、ノリで世界回してない?
神様はくすっと笑った。
「でもあなた、そういうの気にしないタイプですよね?」
「……まあ」
「でしょう?」
「いやまあ……うん」
否定できないのが悔しい。
「じゃあいいか」
「いいですね」
「いいのか……?」
流されてる気がするが。
「それでですね」
神様が少しだけ真面目な顔になる。
今までより、ほんの少しだけ。
「あなたが行く世界には、“勇者”がいます」
「勇者」
「はい」
「テンプレきたな」
「その勇者は、とても強いです」
「まあ勇者だしな」
「世界を救いました」
「おお」
「でも」
神様が、少しだけ目を細める。
「まだ、終わっていません」
「……え?」
「その勇者は、“不完全”なんです」
「不完全?」
「はい」
「どういう意味?」
神様は少しだけ間を置いて、言った。
「あなたが必要なんです」
「俺?」
「はい」
「なんで?」
神様は微笑む。
「勇者は“剣”」
「あなたは“創る力”」
「二つが揃って、初めて世界は救われます」
「……」
急に話がデカくなった。
「いや待って」
「はい」
「俺ただの高校生なんだけど」
「元、ですね」
「そこどうでもいい」
「大丈夫です」
「だから何が!?」
「なんとかなります」
「それさっきも聞いた!」
この神、全部それで済ませる気だ。
「まあでも」
神様は少しだけ楽しそうに言う。
「きっと楽しいですよ」
「……楽しい?」
「はい」
そして、少しだけ声を落として。
「その勇者」
「とても綺麗です」
「え」
「金髪で、すごく整った顔をしています」
「え」
「かなりイケメンです」
「え?」
「たぶん、あなたのタイプです」
「え???」
ちょっと待って。
「え、男?」
「どうでしょう」
「いやそこ重要だろ!?」
神様はにやっと笑う。
うわ、この顔。
絶対なんかある。
「まあ、楽しみにしていてください」
「いや絶対なんかあるだろ」
「ありますね」
「あるのかよ!!」
即答だった。
ダメだこの神、隠す気ない。
「そろそろ時間です」
神様が手を上げる。
空間が、少しずつ光り始めた。
「じゃあ、いってらっしゃい」
「いや最後に一個だけいい?」
「どうぞ」
「その勇者」
「はい」
「俺、惚れる?」
神様は少しだけ考えて。
そして、楽しそうに言った。
「もう惚れてますよ」
「は?」
「運命的に」
「え?」
「では」
光が、視界を埋める。
「良い恋を」
「ちょ待っ――」
読んでくださりありがとうございました
フォローやブクマなどよろしくお願いします!




