表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戸侯記  作者: まさごろう
15/20

3-9 美濃道中


関ヶ原宿に入ると、一行はしばし休憩を取った。


怪我をしていた者には付き添いを一人付け、町医者へ連れて行かせる。

松松と長松は、捕らえた賊二人と足軽らと、性慶らと共に宿内の建物の軒先を借りて休んでいた。


奥方様方も輿から降り、側付きの補助を受けながらともに休憩を取っている。



やがて、休んでいた足軽の一人を兵庫助が呼び止め、二言三言言葉を交わした。

足軽は軽く頭を下げると小走りに駆けて行った。


続いて兵庫助は別の足軽をもう一人呼び、馬に水と飼葉を与えるよう指図する。

それを終えると、こちらへ歩み寄ってきた。



「皆の者、ここまでご苦労であった。

疲れておるであろうが、今日はもう少し進む。

――だが、行き先を変える」



最後の一言で、場の空気がわずかに張り詰める。

皆の顔が一斉に兵庫助へと向いた。



「いずこへ?」

長松が問う。


「広瀬へ向かう」

兵庫助が静かに答えた。


「広瀬と申しますと……」


「そなたの家のお城じゃな?」

横からねねの方が、兵庫助の顔をじっと見据えたまま問いかける。


「はっ、左様にございます。

ここより北にございます」

兵庫助はねねの方へ向き直り、深くはないが頭を下げた。

顔を上げると、再び一同を見回す。



「先ほど使い番を走らせた。

正直広瀬城まではかなり距離がある。

が、今の情勢では広瀬へ向かうのが無難と判断した」


「兵庫助殿。

大垣ではまずいのであろうか?賊のこともある。

街道を行く方が無難ではなかろうか」


それまで黙していた住職・性慶が口を開く。


兵庫助はすぐには答えず、ひと息置いてから性慶を見た。


「性慶殿、大垣までは無事に行けるでしょう。

ただし――その先が読めませぬ」


「大垣も戦になると?」

ねねの方が、間髪入れずに問い返す。


「あくまで可能性に過ぎませぬ。

しかし、安土が燃え長浜が落ちた今――」


兵庫助は一度言葉を切り、ねねの方の目を正面から見据えた。


「大垣や岐阜が無事とは言い切れませぬ」

そう言うと視線を一同へ戻す。


「その点、広瀬なら主要街道からも外れており、少なくとも優先して攻められるとは考えにくい。

また、地の利もあり何らかの事が起きた際の対処もしやすい」


ゆっくりと視線を巡らせて兵庫助は続けた。


「垂井から大垣の北方――揖斐を抜けてひたすら北上する。

隘路ではあるが、強行で抜ける。

いましばらく休み、怪我人が戻り次第出立する」


はきとそう言うと、御方様方へ一礼し兵庫助は馬の方へ歩いて行った。



美濃広瀬城――


美濃北方、東に黒津川、西に大谷川を望む要害の尾根に築かれた山城である。

ここ関ヶ原宿からは、おおよそ十里余。

長浜からここまでの道のりの、倍以上の距離にあたる。



「……行くしかないな」


長松が決意を込めて言うと、松丸もまた、深くうなずいた。


その時だった。


「お待ちくだされ!!」


横合いから、場を裂くような声が響く。


歩みを止めた兵庫助は振り返り、声の主を見据えた。

それが誰かを認めた瞬間表情が険しくなり、ずかずかと引き返してくる。


声を上げたのは――

後ろ手に縛られた、若い方の賊であった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ