コロポックルのころんと、家族。
――1ヶ月後
「ハンターは、捕まったよ。これでころんを追い回す悪い奴はいなくなったからね」
「ずいぶんかかったんだね。あいつ結構近くにいたよね??」
プリンから、ハンターが捕まったことを教えてもらったのですが、ころんは首を傾げてしまう。
ハンターを最後に見た場所も、きちんと伝えたはずです。
それなのに1ヶ月経って、ようやく安全になった事を教えてもらったので、逃げ足が早いのかなと、ころんは思ってしまいました。
「ころんが見たハンター以外にも、コロポックルを狙う奴がいたんだよ。だから、そいつら全員捕まえたんだよ」
「え、あいつ以外もいたの?! こわーっ!」
優しい言葉で、プリンは教えてくれます。
うふとえっぐも、よかったよかったとニコニコ笑顔を浮かべて、ころんを撫でます。
コロポックルハンターというのは違法な職。
そのため、ころんを追い回した奴や、他のハンターは、逮捕されたら二度と牢屋から出てこれません。ということを、説明してくれたプリン。
ころんは、これで大丈夫と聞かされて、大きくホッとした息を吐きました。
プリンは情報端末を見ながら、詳しくは伝えなくていいだろう。と頷きました。
妖精ハンティングは、全ての国で禁止されている事で、捕まった時に受ける罰の内容は、とても重たいものになります。
今回捕まえてもらったハンターたちは、言葉にするのもためらうような、重たい重たい罰を受ける事が決まっています。
優しい心をもつ妖精さんたちに、ハンターたちがどのような罰を受けたかまで、説明するのは気が進みません。簡単な言葉で、安全安心を伝えるだけにしました。
「それじゃ、ころんの住む場所探しだけどー」
うふがパッと顔を上げて、キョロキョロ見回して、小刻みに体を倒しています。
えっぐもあたりを見回して、体を上下に揺らしています。おそらく、うんうんと頷いているようです。
「「???」」
プリンところんは、大きく首を傾げます。
うふはパッと両手を広げて、嬉しそうに声を上げました。
「このお家の気持ちが、ころんに向いているんだよー」
「ころんに、いて欲しいって」
えっぐもニコニコとお家の気持ちを、ころんに教えてあげました。
お家の気持ちが向いていても、ここはプリンの家です。
ころんはあわてて首をぶんぶん横に振りました。
「だ、ダメだって、ここはプリンの家じゃん!」
「私は構わないよ?」
家主であるプリンが、サラッとなんともないことを告げたことで、ころんは固まってしまいました。
「ただ、ころんが住むには、色々大きいんだよね、この家」
小人と言われるコロポックルのころん。
扉もひとりで開けることはできません。
プリンは光る板を操作して頷いています。
「よし、ころんが住みやすいように改築しよう」
「えーーーー、何言ってんの! ころん、何にも返せていないんだから、これ以上迷惑かけれないってば!」
あたふたと、ころんはあわててしまいます。
しかし、プリンはにっこり笑って、ころんに言葉を渡します。
「何を言っているのかな? ころんとお話ししているとね、なんか新しいアイディアが浮かんできててね、この1ヶ月でいくつか新製品出せているんだよ。私としては、いてくれると嬉しいんだよなぁ」
ころん自身は知らないけれど、コロポックルは幸運を招く小人なのです。
プリンも知らないけれど、ころんといると温かい気持ちになり、毎日が幸せだ。と言ってくれました。
「ころんは知らないかもしれないけど、この国にも他の国にも、ころんくらいの大きさの種族はいるんだから、特別なことじゃないんだよ。ころんが生活できる家具もいっぱいあるんだ」
うふとえっぐが見える優しい人であるプリン、ころんを使って悪だくみや、お金儲けなど考えていません。
純粋に一緒にいてくれることを願っている。それを感じ取ったころん。
プリンの家でお世話になることになりました。
「ころんが他に暮らしたい場所が見つかったら、そこに行ってもいいし、ここにずっといてもいいんだからね。私たちは家族だ。これからもよろしくね」
種族が違えども、一緒に思いやりあいながら暮らしていくことができる幸せを大事にしたいと、プリンは伝えて、ころんに握手を求めました。
ころんも小さな手を伸ばしきゅっと握り、少しだけ頬を赤くして照れながら言葉を返します。
「これからも、よろしく」
うふとえっぐはニコニコ見守っています。
そんな視線に気づいたころんは、うふとえっぐの方に体を向けて、しっかりと頭を下げました。
「うふ、えっぐ、ありがとう。ふたりが助けてくれたから、こうして今もいられるし、素敵な家族もできたの、本当にありがとう」
「うふとえっぐのおかげで、素敵な家族に出会えたこと、私からも心からのありがとうをお伝えするよ。本当にありがとう」
ころんとプリンから、溢れんばかりのありがとうの気持ちを、たくさんたくさん受け取りました。
うふとえっぐは、頬を赤らめ照れながら、どういたしましてと言葉を返して、にっこにこ。
「それじゃ、えっぐたち……」
「ちょっと待ったーーー!」
いつものパターンだと、たくさんのありがとうを受け取った妖精さんたちは、サッサと帰ってしまいます。
そこに待ったをかけるプリン。
「ご、ごめん。もうちょっとだけ、ごはん作っていてくれないかな……冷凍分も……」
少し申し訳なさそうな顔をしつつも、もう少し一緒にいたいし、いきなりのお別れは、ころんがビックリしそうなので、プリンはほんの少しの間、引き留めたかったのです。ご飯ももちろん欲しいのですが。
「「いいよー!」」
「やったー! まだうふとえっぐのご飯食べれるんだね!」
ころんは、夏のひまわりのような笑顔を浮かべて、喜んでいます。
心からの笑顔を見て、うふもえっぐもプリンもにっこにこ。
うふとえっぐのお手伝いは、もうちょっとだけ続くようです。