妖精さんと銀色のプリン
「よーし、助けを呼ぼう」
「たすけ?」
うふの提案に、ころんはキョトンとした顔をしてしまいます。
えっぐも頷いているので、助けてくれる人がいるようです。
いったん、ここから離れて広い場所に行くため、うふはえっぐを抱っこ。
ころんはえっぐのかばんの中へ入ってもらい、うふは羽を出してびゅーんと飛びました。
そして、やまをふたつ越えた先にある草原で、えっぐはかばんから懐中時計のようなものを取り出して、スイッチを押します。
時計を草むらに置いて、少し待つ事を伝えました。
ころんより少しだけ小さい懐中時計は、ころんから見たらとても大きな時計。
「時計のネジを押して、何をするの?」
「プリンを呼ぶんだよ」
「プリン??」
ころんの問いにえっぐから返ってくる答え。ますますわからなくなる。
人間のお手伝いをしてる時に、おやつでプリンという食べ物をくれた人がいたので、黄色いフルフルしたおやつを思い出すころん。
「おともだちで、プリンって人がいるんだー」
「あ、名前か。てっきり食べ物かと思ったー! あははは」
うふとえっぐと一緒に過ごすようになって、ころんは笑顔でいることが多くなりました。
状況は何も変わっていないけれど、お話をしたり、お手伝いしたり、一緒にご飯を食べて寝て。
誰かと一緒にいる安心感がとても温かいし、うふとえっぐはニコニコしていることが多いので、ころんも自然と笑顔が浮かびます。
お友達のプリンは、少し前に、懐中時計のような装置を、うふとえっぐにプレゼントしてくれたそうです。
ネジの部分を押すと、プリンを呼ぶ事ができるのですが、うふとえっぐには、どうしてそうなっているのか、その仕組みがわからないそうです。
お話をしながら、のんびりと草原で過ごしていました。
体感で10分くらい経った頃、ころんがふと視線を動かすと、さっきとは時計が少し違って見えました。
「ねぇ! 懐中時計が光っているよ」
「プリンがきてくれるね」
ころんが時計を指さして、うふとえっぐに伝えると、ふたりはにっこり笑い、顔を上に向けました。
ころんも一緒にうふたちの見ている方を見ると、円盤がどんどん降りてきます。
うふたちから少し離れたところに、円盤は着地します。
下から見上げていた時は、円盤でしたが横に着くと、その姿は半球のものだとわかりました。
「な、な、な、なんかきた……!」
ころんはあわてて、うふにしがみつきますが、うふはそっと優しく撫でてくれました。
半球の塊を指し示し、うふとえっぐはころんに教えてあげます。
「お友達ー!」
「プリンがきたよ」
半球の塊の一部がプシュッと音を立てて開くと、中から出て来たのは、銀色の人。
うふは全身ピンクだし、えっぐはたまご型だし、全身銀色の人がいても驚くことはないころん。
お友達というのは本当のようで、うふとえっぐの姿を見た途端、にっこりひまわりのような笑顔を浮かべて近づいて来ました。
「久しぶり! まさか呼んでくれるなんて思わなかった! ってかすごい近くにいたんだね」
「プリン、久しぶり。助けて欲しいんだ」
「なんだって!? 喜んで!」
ちょこちょことえっぐが駆け寄っていき、再会の喜びをハグで表しています。
うふもころんを抱っこして、プリンの方へ向かいました。
プリンはみんなを半球の塊の中に招待して、いったん扉を閉めて、浮いている光の板を操作します。
周りからは見えないようになっているから安心してね、と自分が行なった操作を簡単に説明してくれました。
そして、プリンはえっぐから、ことのあらましを聞いて、うんうんと頷きました。
「そうか、コロポックルハンターってのがいるから、ころんが安心して暮らせる場所が見つからないんだね」
えっぐの説明を聞いて、悲しそうな顔を浮かべるプリン。
今日あったばかりなのに、こんなにも自分のことを心配してくれるプリンに、ころんの目はうるうるとしてしまいます。
「ちょっと待ってね、調べてみるよ」
そういって、プリンは光る板を出して、空中を叩き始めます。
何をしているのかわからないころんは、うふに訊いてみました。
「ね、ね、プリン、何してるの?」
「わかんない! なんか、すごい便利なことしてるはずだよー!」
うふにもわからなくて、隣で頷いているえっぐも、プリンが何をしているのか、詳しいことはわかりません。
生活様式がアナログなうふとえっぐは、ハイテク機器を詳しく知らないのです。
ころんもアナログな生活をしていたため、プリンのやっていることがチンプンカンプン。
「えーとね、私たちは手紙をとても早くやりとりできるような生活をしているんだ。なので、知りたいことを素早く知ることができるんだよ。今は、コロポックルハンターについて調べているんだ」
わかりやすく説明してくれて、3人は大きく頷いた。
「お、お返事が返ってきたよ。なになにー……。ふむふむ」
光る板の文字を読んだプリンはうんうんと頷いて、また少しの間光る板を操作していました。
操作が終わると、3人の方を向き、再び言葉を出します。
「えーとね、コロポックルハンターは、すっごい悪いお仕事なので、やっちゃいけません。そんな悪いお仕事をするハンターをお仕置きしてくれる人がいます」
「「「おぉー」」」
さらに、説明を続けてくれるプリン。
「その人たちに、『コロポックルハンターがいます。捕まえてください』ってお願いをしたから、もうちょっとしたら、ハンターは捕まると思います。その間、ころんは私が保護することになりそうですが、大丈夫ですか?」
ハンターを取り締まる組織に、保護対象のコロポックルがいることを伝えると、ハンターを捕まえるまで保護して欲しいと言われたとのこと。
ころんはちょっとだけ困った顔をする。
「あぁ、うふとえっぐにも、ここにいてもらうから、大丈夫だよ」
その言葉を聞いて、ころんは顔を明るくして、うなずきました。
いきなり知らない人が、自分を保護をすると言ってきたらびっくりするはずです。
プリンはその気持ちを察してくれて、ころんが安心できるように、言葉を渡してくれました。
「えー? うふたちも、いていいのー?」
「もちろんだよ」
ハンターとハンターを捕まえる人と、ころんとプリン。そこに、自分たちは必要ないような気がしてしまったうふとえっぐだが、いてほしいということは、お手伝いである。
うふとえっぐの耳はぴょこぴょこ動いて、少し嬉しそうです。
「ころんを保護している間、うふとえっぐには、私のご飯を作って欲しいっ!!」
以前、少しの間一緒にいた時、うふとえっぐが作ってくれた美味しいご飯。プリンにとっては忘れられない味だったようです。
再びその機会が巡ってきたので、プリンはお願いをしてしまいます。
お手伝いがあるのは嬉しい事。えっぐはぴょんぴょん飛び上がって喜びを表し、うふはぱちぱちと拍手をします。
「「いいよー」」
そうして、うふとえっぐところんは、プリンの家に行くことになりました。
プリンが、初めてうふ・えっぐとあった時は、宇宙旅行もしました。
その思い出をかいつまんで、ころんに伝えると、ころんは窓から空を見て、指をさしました。
「もしかして、そ、空の上に行けるの?!」
ちょっとだけほっぺたが赤くなり、興奮して訊ねると、プリンはころんを優しく撫でました。
「今いる星が、私の故郷だから、宇宙を渡る必要はないんだけど、ちょっとだけ行こうか」
今いる惑星の周りを回る程度ながらの、宇宙空間ドライブを、プリンの家に行く前にすることになりました。
ぐんぐんと空を上がり、ふっと暗くなったら、眼下には青い大きな丸いものが見えて、ころんは大興奮。
うふとえっぐも、少し前に初めて空の上に行ったので、おんなじように興奮したことを分かち合って、ころんは楽しみました。