うふとえっぐと、コロポックルのころん
ここは、妖精さんが住む島。
お空にぷかぷか浮いていて、島にはお星様の形をしたお花がゆらゆら揺れて、ハートの形をした木の実がなっていたり、綿菓子のような雲が浮いていたり。
そんな島に住む妖精さんたちは、色や形が違っていても、みんなウサギのように長いお耳が生えている。
お手伝い妖精として、誰かのお手伝いに向かう。
ありがとうの気持ちを受け取る事が、何よりも嬉しい妖精さんたち。
気が向いた時、誰かのお手伝いをしに、島の真ん中にある湖に飛び込んで、困っている人を助けに行く。そんな生物がここに暮らしている。
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こちら、コロンさま主催の『アフォの祭典』参加作品です。
うさぎの妖精さんシリーズ『えっぐと うふと、宇宙人なともだち。 〜お手伝い妖精の不思議な出会い〜』に登場したキャラクターが出てきます。
「よーし、お手伝いに行くぞー!」
おうちの中で、ひとり気合を入れる、たまご型ボディにうさぎの耳が生えている妖精さん『えっぐ』
扉がトントン叩かれて、えっぐの返事を待たずに開きました。
「えっぐー、うふ、お手伝い行ってくるねー」
えっぐのおうちを訪ねて来た、ピンク色をしたヒョロンとしたうさぎの耳を持つ妖精さん『うふ』
訪ねてきた、と言ってもお知らせだけして、そのまま目的を果たしにいくため、おうちにお邪魔することはなく、手を振って扉を閉めようとします。
「あ、えっぐも行くところー」
えっぐからの声に、うふはぴたりと止めました。
少しだけ口角を上げて、えっぐへ訊いてみる。
「一緒に行くー?」
「行こう!」
ひとりだと難しいことでも、ふたりならできるかもしれない。お手伝いの幅を広げて、たくさん喜んでもらおう。
妖精さんたちはニコニコ笑顔を浮かべて、島の真ん中の湖まで、軽快な足取りで向かいます。
島の真ん中にある、桃色の湖は、妖精さんたちが島を出るときに使うもの。
ここに入れば、出たとき、困っている人のところへ辿り着けるのです。
「「せーのっ」」
手を繋いで、湖にぽちゃんと入ったうふとえっぐ。
困っている人を助けよう。
湖から抜けたさき、そこは森の中。
切り株の上に、小さな女の子がいました。
「わわ、倒れてる!」
あわててうふが近寄って、女の子の様子を見てみると、うつ伏せに倒れているけれど、肩で息をしていて、疲れて突っ伏しているようです。
「ん? はっ、だ、だれ!!?」
声がしたので、女の子はあわてて起き上がり、後ろに飛びのきました。
声がした方をキッと睨みつけて、とても用心深い顔つきをして、うふとえっぐに目を向けます。
が、うさぎの耳が生えたヒョロンとしたコと、うさぎの耳が生えているたまごのボディのコ。
ぱっと見ぬいぐるみのようにも見えるし、その表情はぽやんとしていて、敵意は全くありません。
「えっぐだよ」
「うふだよ」
誰、と聞かれたので、素直に名乗る妖精さんに、毒気を抜かれた小さな女の子。
「あ、あたしコロポックルのころん」
「わー、おんなじ妖精仲間ー!」
ころんも、きちんと名前を伝えます。
うふがにっこり笑ってバンザイをしました。コロポックルも妖精の仲間。会えて嬉しいようです。
えっぐもニコニコ笑顔で小さな手を伸ばしました。
「よろしくね、ころん」
「よろしく……」
ニコニコと握手を求めてきた目の前の妖精に、ころんはちょっとびっくりしつつも、うふとえっぐの笑顔が、安心感をもたらします。そっとその手に触れると、きゅっと優しく握られました。
握手をした手をはなすと、えっぐは言葉を続けます。
「ころんは、何してたの? すごく疲れてたみたいだけど」
「ハンターに追われていたの。あ、ハンターってのはコロポックルを捕まえて、高値で金持ちに売りつけるようなやつよ」
ころんが大変な目に遭っている! とびっくりして飛び上がるえっぐ。うふも悲しそうな顔をして、ころんをそっと撫でました。
「ん? なんか、聞こえるー」
うふの耳がぴこぴこ動きます。えっぐも耳をぴこぴこ動かして、音を探しだしました。
ころんの耳に届くのは、森の中の草木がほのかに揺れる程度の音しかありません。
「えーとね、「へっへっへー、コロポックルちゃん、どーこかな、ふひひひっ」て気持ち悪い声が聞こえる」
うふが聞こえたのは誰かの声。独り言を言いながら歩いている音が聞こえるそうです。
声も歩いている音も、ころんには聞こえませんが、うさぎのように見える妖精さん、耳がとってもいいのだろうと思いました。ころんはその言葉を信じます。
「多分、そいつハンター! 大変、逃げなきゃ」
あわてて切り株から飛び降りるころんを、うふがふわりと掴まえました。
「自分の背より高いところから飛び降りるの、危ないよー」
「あ、ありがとう……」
えっぐはたまご型ボディをぐいーんとそらして、上を見上げて言葉をこぼします。
「木の上に逃げれば、はんたーってやつから見つからないよね」
みんなで上を見上げるが、この辺りの木は、枝の位置がとても高くて、小さなころん、うふ、えっぐでは登れるようには思えません
「上の枝まで登れるならきっと見つからないけど、あんなとこ行けないよ……」
15センチくらいのころんには、どう頑張っても登れない高さです。
悲しそうな顔を浮かべるころんとは違って、うふとえっぐはにっこりと笑顔を浮かべて頷きます。
そして、えっぐはぐーっと力を入れて、羽をぽんっと出しました。
ころんからは見えないけれど、うふも羽を出しました。
「うふも落とさないように気をつけるけど、ころんもちゃんと掴まっていてね」
「へっ?」
すっとんきょうな声を上げた瞬間、ころんの目に映る景色は普段とは全く違うものになり、瞬く間にはるか上の太い木の枝の上に到着し、枝の上にゆっくりと降りました。
うふが足を伸ばして座っても、足は木の枝から出ることがない、太い枝なので、見つかることもなさそうです。
えっぐは、ゆっくりパタパタと羽を動かして昇って来ています。
「ここからなら、離れているし、はんたーにも見つからないよ」
「ありがとー! ころんじゃこんな高いところ来れないよ、すごいね!」
「うふとえっぐ、飛べるんだー」
ようやく追いついたえっぐも、木の枝に降り立ち、ちょこんと座りました。