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#プロローグ

「…やばい。本当にこうなるのか?」


俺は震える手でスマートフォンを確認した。


全財産をかけた株のチャートが真っ赤に燃えていた。


バッテリー大手TCE、-27.5% ストップ安

「…クソ。」


一瞬で俺の金が蒸発した。


正確に言うと、300万ウォンで始めて200万ウォンまで減り、最後に残った100万ウォンを「これはチャンスだ!」と思ってオールインしたら、すべてを失った。


これが、よくある個人投資家の最期。


俺は血の気の引いた顔でスマホを置いた。


心臓が異常なほど激しく鼓動していた。


手が震えて水を一口飲もうとしたが、喉が詰まったように通らなかった。


『なんでこうなった…?』


最初は単なる興味だった。


未来はバッテリーの時代だ。


電気自動車の時代が来る—


そんなニュースを見て、自然とバッテリー産業に関心を持つようになった。


俺なりに勉強もした。


リチウムイオン、全固体電池、4680バッテリー、ESS(エネルギー貯蔵システム)といった専門用語も覚えたし、国内外のバッテリー企業の動向もチェックしていた。


「バッテリーこそが未来だ!」


そう信じていた。


だから、借金までしてバッテリー株を買った。


だが現実は…


バッテリーも、俺の口座も放電してしまった。


俺は空を仰いだ。


いや、スマホの画面を見た。


口座残高がマイナスになっているのを見て、俺の未来もないことを悟った。


どうしてこうなったんだ?


一ヶ月前、投資成功で300万ウォンまで増やす。

二週間前、モスラ社の決算発表後、バッテリー関連株が急落。

一週間前、借金して「耐える」決意。

今日、残りの100万ウォンを全投入した結果、ストップ安直行。

…クソ、むしろ借金があれば、もっと必死に生きようとしたかもしれない。


もう立ち直る資金もないのに、これからどうすればいいんだ?


呆然としたまま、俺は街を歩いた。


居酒屋でマッコリを三本空けながら、俺の人生を振り返った。


29歳。


仕事なし。


恋愛経験なし。


財産なし。


『…あぁ、いっそ異世界にでも行って、新しい人生をやり直せないかな?』


その瞬間だった。


スマートフォンが突然振動した。


【緊急速報】未確認信号、電子機器の異常発生…


「…は?」


俺は酔った目でニュースをクリックした。


「世界各地で異常な電波干渉が観測され、一部の地域では電子機器が誤作動する事例が報告されています。」


その時、俺のスマートフォンの画面が突然点滅し、意味不明な文字が流れ出した。


【エネルギー源 充電完了… 接続開始…】


次の瞬間、スマホが「バチッ!」と音を立てて閃光を放った。


視界が真っ白に染まった。


俺は最後の希望のようにスマートフォンを見つめた。


だが、そこにあったのは希望ではなく、破滅だった。


目を覚ますと、俺は冷たい床の上に横たわっていた。


頭が割れるように痛い。


体を起こそうとするが、うまく力が入らない。


『何だこれ…二日酔いか? てか、なんで床が石なんだ?』


俺は必死に首を上げた。


天井は高く、どこか中世風の建築様式だった。


揺れる蝋燭の灯りが照らす長い廊下。


そして目の前には、ローブを纏った怪しげな人々が立っていた。


「ついに偉大なる継承者が召喚されました!」


俺は一瞬で覚醒した。


『継承者? いや、待て…これ、どこかでよく見る設定じゃね?』


俺は咳払いをして、できるだけ冷静を装って尋ねた。


「えーっと…ここはどこですか?」


ローブを纏った者の一人が、戸惑いながら呟いた。


「うーん…少し予定とは違う気がするが…まあ、召喚は成功したから大丈夫か。」


…は?


俺はようやく周囲を見回し、違和感に気づいた。


俺を取り囲む魔法使いたちは、皆どこか不安げな表情を浮かべていた。


「ちょっと待てよ…まさか、間違って呼ばれたのか?」


その瞬間、魔法使いの一人が咳払いをし、何事もなかったかのように言った。


「偉大なる大魔法師様、この世界を救ってください!」


「…いや、俺はバッテリー株で破産した無職なんだけど?」


「…」


一瞬、空気が凍りついた。


しばらく沈黙の後、魔法使いたちの間で議論が始まった。


彼らは俺が「大魔法師」として召喚されたと言い張ったが、どうも話がかみ合わない。


やがて、彼らは何か結論を出したようだった。


「えーっと…実はですね。召喚魔法にちょっと…誤差がありまして。」


「誤差?」


「はい、本来は偉大なる魔法使いを召喚するはずだったのですが…間違って…」


「間違って?」


「その…あなたが来てしまいました。」


「…」


つまり、元々はこの世界で100年ぶりに現れるはずの「クラス9」の大魔法師を召喚しようとしたが、何かのミスで俺が引っ張られたってことか。


呆れた。


俺が何をしたっていうんだ? なんでスマホが爆発して異世界まで飛ばされたんだよ!


「…で? 本物の大魔法師はどこ行ったんだ?」


「あ…それが…我々にも分かりません。」


「…は? じゃあ俺を元の世界に戻せ!」


「それは…不可能です。」


…クソ。


俺は深いため息をついた。


バッテリー株で破産した上に、異世界まで飛ばされるとか…。


だが、それよりも重要なことがあった。


「…ってことは、俺、借金返さなくていいの?」


魔法使いたちは呆れた顔で俺を見つめた。


こうして、俺の異世界強制転職が始まった。

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