反乱者
中大王朝とブライムの国境にある関所と町がひとつにまとまった町"拑燁"交易都市の筈だが寂れてる町
私の名前は桐玢仆、中大王朝に仕えるしがない下級役人の一人です。
そんな私が何故こんな所にいるのかと言いますと……まぁ簡単に言ってしまえば左遷されたからですね。
理由は上司の不正を暴いた事なんですが、その事を密告したのが私の幼馴染でしてね? そのせいで私はお役御免になりましたよ、でも私は、新たな主を得て幸せですよ! えぇ本当に! 今度こそは裏切らずに頑張りたいと思います!!……さて、前置きが長くなりましたがそろそろ本題に入りましょうか。
今日は新しい主である、あるお方から頼まれましたお仕事をしないといけませんからね!
……では早速始めていきましょうかね。
まずは、冒険者ギルドでブライム出身の冒険者を20名ほど私直々に面接して雇い入れて準備をして、皇帝であらされる毛昆無様の視察の護衛として同行させなければ……。
それにしてもこの仕事も久しぶりだなぁ〜。
昔はよく上級官僚の方々と一緒に護衛の任務についていましたっけ。
あの時は楽しかったなぁ~、色々な場所に連れて行って貰えて美味しい物を食べさせて頂いて、そして何より沢山のお小遣いまで頂きまして……あの頃が一番充実していたかもしれませんねぇ。
しかしそれももう昔の話ですけどね……。
おっといけない、感傷に浸っている場合じゃありませんでしたね、早く準備に取り掛からないと日が暮れてしまいます。
桐玢仆は、妄想し緩みきっていた顔を元に戻すと町の入口まで急いで向かい視察団が来るまで待機するのであった。
皇帝が乗る馬車を中心とした一団は街道を順調に進み続け、昼過ぎには拑燁へと到着した。
そこには警備兵が数人立っており、こちらに向かって敬礼をしていた。
それを見た皇帝は労いに手を振り馬車はそのまま通り過ぎた。そのまま暫く進むと、今度は大きな門が見えてきた。
どうやらそこが目的地らしい。
一行が到着したことを確認すると、警備兵達は一斉に門の扉を開いた。
すると、その先に見えた光景を見て皇帝は驚愕の声を上げた。
何故なら目の前に広がる街の風景が1年前に見た光景は消え去り少し寂れた治安の悪そうな町並みになっていたからだ。
「これはどういうことだ!?」
あまりの変化に怒りを覚えた昆無はその感情のままに声を上げる。
しかしそれに対して一人の兵士が答えた。
「申し訳ございません陛下、実は最近になってここ一帯の土地を買い占めている輩がいるらしくその影響でこのような有様になっているのです!」
そう言う兵士の顔はとても悔しげだった。
恐らくは何とかしたいと思っているのだが相手が相手だけに手を出せない状況なのだと思われる。
だがそれでも、このまま放っておくわけにもいかない為こうして報告に来たというところだろう。
だがそんなことは関係ないと言わんばかりに、昆無の怒りはさらに増していく。
それはそうだ、自分の治める土地が自分の知らない間に勝手に買い取られていたのだ、怒らない方がおかしいと言うものだ。
しかもそれだけではない、もしこれが他国の仕業だとしたら大変なことになるかもしれないのだ。
なので彼は決断をした、この国を統治する者としてこれ以上好き勝手させるものかと。
そして彼の心は既に決まっていた。
例えどんな手段を使ってでも犯人を見つけ出し処罰を下すことを…………。
その頃とある屋敷の一室で二人の男が会話を交わしていた、
「玢仆、準備は万端か??」
一人は椅子に座りながら机の上に足を乗せ偉そうな態度を取っている男。
こいつが今回の黒幕でありこの町の地主でもある奴だ。
名前は"麿爲圓と言い、中大王朝の選皇家の者である。
「はい、問題ありませんよ旦那様。既に部下達によって必要な情報は全て集め終わりましたから後は実行に移すだけです。」
もう一人は床に膝をつき頭を下げたままの姿勢で答える。
この男はこの部屋にいるもう一人の人物で、この男の右腕的な存在である。因みにこの二人は打算だけの関係で目的が一緒のうちは協力し合う仲である。
この二人の目的はただ一つ、この国の土地を全て自分達のものにしてしまおうという考えである。
つまりはこの町も彼らにとっては単なる通過点に過ぎないのだ。
だから彼らは焦っていなかった、むしろ余裕すら感じさせていた。
何故ならばこの作戦に必要な人材はすでに揃っているからである。
だからこそ彼等は笑みを浮かべることが出来るのだ。しかしそんな中で、ただ一人だけこの場の雰囲気とは正反対の表情をしている者がいた。
それはこの館の主人である、曼什であった。
(一体何を考えているんだあの馬鹿どもめ!!こんな事をしてタダで済むと思っておるのか!?)
彼だけは知っていたのだ、この国が今置かれている状況を。
何故ならこの国の皇帝である毛昆無は、この国に蔓延っている不正を正そうと自らこの国を視察に訪れた際に、偶然見てしまったのである。
彼が長年かけて集めた資料の数々が何者かの手によって燃やされているところを。
それを知った毛昆無は激怒した、自分が今までしてきた努力が全て無駄になった事に。
しかし、そんな事はどうでも良かった。彼にとってはそれよりも大事なものがあったからだ。
それはこの国の民の生活だ。
この国は豊かな資源がある代わりに、治安が悪く貧しい者達が多く存在している。
そのせいで日々の暮らしに困り犯罪に手を出す者も多く存在する。
そしてそのせいで更に貧富の差が広がり、その負の連鎖が続く事で国民全体の生活水準もどんどん落ちていく。
それが今の現状なのである。
そしてその原因を作った張本人が、目の前の男ともう1人の男なのである。
それを理解しているからこそ、彼は怒りを抑えられなかった。
しかし今はその時ではないと自分に言い聞かせ、怒りを押し殺し冷静さを取り戻す。
そして改めて目の前の人物を見据えると、いつも通りの口調と態度で話し始める。
しかしその内心では怒りを抑えることに必死だった……。
曼什は怒りを抑える為に茶を一気に呷る。
そして一息つこうとしたが、喉の調子がおかしいのに気が付く。
「.........!」
顔を上げ2人を見る。
するとそこにはニヤついた顔をした男たちがいた。
そこでようやく嵌められたと悟った曼什は、急いで懐から短刀を取り出して構えるが時すでに遅しであった。
次の瞬間には強烈な喉の痛みと眠気が襲ってきて、そのまま吐血し意識を手放し永眠についたのであった。その様子を見ていた2人組は笑い声を上げた後すぐにその場を後にした。
その後この館には誰もいなくなった……。
一方その頃、皇帝一行は町の中心にある広場に来ていた。
そこには大勢の民衆が集まっており、皆一様に皇帝の姿を見ると歓声を上げて喜びを露わにした。
皇帝は町の人間を見て、町は荒んだように見えても人々の心は変わってないと思え軽く笑みを浮かべる。
すると、そんな彼に一人の兵士が近寄ってきた。
「陛下、この町の民が我ら兵士に飲み物などを振舞ってくれるようですので是が非でも受け取ってよろしいでしょうか?」
その言葉を聞いて、彼は一瞬呆気に取られたような表情になったが直ぐに笑顔になり了承の意を示した。
その返答を聞いた兵士達は、嬉々としてその好意を受け取るべく行動を開始した。
皇帝は、その光景を見て心の底から安堵していた。
何故なら、この光景こそが彼が望んでいた光景だったからである。
しかしそんな穏やかな時間も長く続くことはなかった……。
突然、何処からか悲鳴が上がったのだ。
それも一つではなく複数個所で同時に起こったのだ。
最初は何が起こったか分からず混乱する人々だったが次第に落ち着きを取り戻し始めるとその正体に気づいた。
それは、この町の民と兵士がバタバタと倒れていったのだ。
それにいち早く反応したのは、皇帝と護衛の兵達だったが遅かった。
既に彼らの身体の自由は完全に奪われており、その場に膝をつくことしか出来なかった。
そして、いつの間に現れたのか全身黒装束に身を包んだ集団が現れ、ゆっくりと近づいてきた。
「貴様らは何者だ!?」
「我々は、あなた方を殺しに来た暗殺者でございます。そしてどうかご安心ください、貴方達は苦しむことなく死ぬことが出来ますので……」
「きっさまぁ~!!」
皇帝は声の主に向かって怒りをぶつけようとしたが、既に口を動かすことすら困難になっていた。
それでも何とかしようと足掻くが、もはやどうすることも出来ずにいた。
そして遂に、護衛の兵は1人づつ確実に息の根を止められていき、皇帝の番が来たところで彼の視界は真っ暗になった。
「……」
「……」
「……様、起きてください」
「うぅん??」
「やっと目を覚ましましたね、おはよう御座います」
「嫌な夢を見ていたようだ。」
1人は心配そうな眼差しでこちらを見つめていた。
その様子から察するにどうやらかなり長い時間寝てしまっていたらしい。
しかし、何故だろうか? 身体が動かない、目が少しぼやけるが周りが見え始めてきた。
そして徐々に思考能力も回復していき、状況を理解し始めた。
自分は今、先程の広場で仰向けになっており、両手両足の腱が切られ動かすことができる状態ではなかった、
しかもそれだけではなかった。
何故か服を脱がされており、下着姿になっているのだ。
「これはどういう事だ、桐玢仆よ!」
皇帝は、まだ動く首を動かし頭を持ち上げ、自分の傍にいる桐玢仆に問いかけた。
「はい、実はですね。私は今とても悩んでいるのです。それはもう深刻な悩みでして、このままでは私の精神が崩壊してしまうかもしれない程に……。なので皇帝であるあなたに私の相談に乗って欲しいと思いましてこうして苦しんでもらおうと思った次第です。因みに、私達が今いる場所はお分かりですよね!」
桐玢仆は、目に狂気を輝かせ歪んだ笑顔で話し始める。
そんな桐玢仆に対して、皇帝は恐怖を感じ始めていた。
しかし、そんな事はお構いなしと言わんばかりに桐玢仆は話を続ける。
そして、とうとう桐玢仆の口から決定的な一言が出てしまった。
それは、この国の未来を決定づける出来事であった。
「先ず、あなたにはとーっても苦しんで貰います、私の受けた苦しみの何分の一かは苦しんでもらわなきゃ割に合いませんから!それから、この国の人達も全員捕まえて拷問にかけちゃいましょ♪あ、勿論あなたの家族も例外じゃないから、覚悟しといて下さいねぇ~☆」
その言葉を聞き皇帝の顔から血の気が引き、絶望に染まっていく。
喉に激痛が走る、喉を切られたようだ。
そして、そのまま気を失ってしまった。
その後、皇帝は何度も殺されかけるが、その都度奇跡的に命を取り留めるのであった。
日が暮れ始め少し涼しくなり始めた頃、脇腹の激痛で目が覚める。薄暗い広場から動かされのは確認できた。裸で磔られているようだ腹部を見ると長細い杭が突き刺さっていて激痛が走る。
そもそもここはどこなのかすらも分からなかった。
ただ、分かることは一つだけあった。
それは、誰かが自分のすぐ傍に人がいるということだった。
皇帝はその人物の正体を知っている、だからこそ信じられない気持ちでいっぱいだった。
なぜなら、その人物は……。
この国で最も信頼している人物であり、最も愛した皇后毛芖曄だったからだ。
彼女は涙を流しながら皇帝を見ていた。
皇帝は彼女に何か言おうと思ったが声にならない声しか出てこなかった。
彼女も裸にされ四肢を切られ鎖で繋がれている状態だった。
そして彼女の目には生気がなく虚ろで焦点が合っていなかった。
それを見た皇帝は確信した。
彼女は既に正気ではないことに。
そしてその事にショックを受けるが、今はそんな事を考えている場合ではなかった。
何故なら、自分の身が危うかったからである。
すると、遠くから複数の足音が聞こえてきた。
皇帝は、その足音の主が何者なのか理解した。
その者達は、桐玢仆と3人の男であった。男は皇后を代わる代わる陵辱し、その光景を皇帝に見せつけるようにしていた。また女の方も、抵抗する素振りは一切なくただされるがままになっていた。
その様子を見た皇帝の頭の中でプツンと何か切れるような音がした後、今までに感じたことのないほどの怒りと憎しみを感じた。
それは、人としての感情を超えたものだった。
彼は、自分の中に眠る怒りの感情が高まっていくのを感じたまま首を切られ息絶え無念のママ息絶えていく
「皇帝陛下、あなたが悪いのですよ。宦官になりたい私の気持ちを踏み躙ったあなたがいけないのです。だから、私は復讐するんです。あなた方のせいて、私がどんな目にあったか思い知らせてやるんだから!!」
桐はそう言い残してその場を去った。
その後、町は桐達によって徹底的に破壊され尽くされた。
皇帝の首は門上に晒された後体とともに剥製にされるのであった




