表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラグラジェント ストーリーズ  作者: 月野片里
黒き魔人と勇者の目醒め
23/30

聖女と神器

レイモンドと、ファラーが聖宮内に入ると普段は神聖な空間であるはずの場所に、まるで邪悪な何かが暴れまわったかのような惨状が広がっていた。

「こ、これは一体何事だ!?」

レイモンドは驚きを隠せずにいた。

しかし、すぐに気を取り直すとファラーに声をかける。

「ファラー殿、これって.....」

ファラーはレイモンドの疑問に対して軽く相槌を打って、神官達を指さし答えた。

「ああ……、アリュカンの手下が入り込んでいるみたい、早くマチルダ様達の所へ急ぎましょう!」そう言うと二人は急いで奥へと駆けて行った。

そして、二人が向かった先には血を流し倒れている数人の神官の姿があった。

その光景を見たファラーは思わず声を上げた。

――なっ! なんでこんな事に? それにこの傷口……。

ファラーは倒れた官たちの傷口を見つめながら、ファラーは驚愕と憤りを抱え込んだまま、倒れた神官たちに近づいた。彼らの息遣いは弱まり、命の光が次第に消えていくのが分かる。

「この凶行を許すわけにはいかない!レイモンド、私たちはマチルダ様を守らなければならない。急いで彼女の所へ行きましょう」とファラーは決意を込めた声で言った。

レイモンドも同じく怒りと決意が燃え立っていた。彼はファラーの言葉に頷きながら、神聖な空間を後にして二人は再び奥へと駆け出した。

聖宮内は静まり返り、歪められた風景が二人の前に広がる。倒れた神官たちの姿を通り過ぎながら、彼らの最期を胸に刻みながらも、ファラーとレイモンドは不屈の意志で前進した。

やがて、二人はマチルダ様がいるはずの部屋に到着した。しかし、そこには血塗られた光景が広がっていた。家具が粉々に砕け、壁には激しい戦いの痕跡が残されていた。

ファラーは息を詰め、心臓が高鳴るのを感じながら部屋に入った。そこにはマチルダ様が意識を失ったまま、無残にも倒れている姿があった。傍らには聖女候補3人が居て治癒魔法をマチルダにかけ死の淵にある状態を懸命に治療にあたっていた。

「マチルダ様!」ファラーは叫び声をあげ、駆け寄ってマチルダ様を支えた。

彼女の身体は傷だらけで、血が滴り落ちていた。ファラーの手が血に染まりながら、彼女の顔を優しく 撫でた。

聖女候補のうちアイシアとルシルの2人は魔力の枯渇状態らしく青い顔をしていた。ファラーは慌てずに彼女たちの健康状態を確認し、必要な治療を施すために行動を起こした。

「アイシア、ルシル、大丈夫か?魔力の補給が必要だな。私がマチルダ様を支える間に、レイモンドに魔石かエーテルリキッドを探すよう伝えてちょうだい。」とファラーは急いで指示を出した。

アイシアとルシルは弱々しく頷き、レイモンドに伝えるために部屋を出ていった。ファラーは再びマチルダに集中し、彼女の状態を見守った。

マチルダ様の表情は苦痛に歪み、息も荒くなっていた。ファラーは心を痛めながらも、決して希望を捨てずに彼女を支え続けた。彼女がこの戦いから生き延びることを信じていた。

しばらくして、レイモンドが急いで戻ってきた。彼は手にエーテルリキッドを持っていた。

「ファラー殿、こちらにエーテルリキッドがありました!」

とレイモンドは報告した。

「ありがとう、助かったわ!」

ファラーは感謝の念を込めてレイモンドに対し感謝の言葉を言うと、聖女候補たちにエーテルリキッドで魔力の回復を促す。

ミューラはマチルダの持ち物の杖を拾い上げ、回復した魔力を治癒の魔法として杖に注ぎ込むとしばらくの間、聖女候補とファラーは集中してミューラに魔力を送り続けた。彼女の持つ杖が熱を帯び、光り輝くエネルギーがマチルダ様の身体に満ちていくのを感じた。

時間が経ち、マチルダ様の表情が穏やかになり、息も落ち着いていった。彼女の傷は徐々に癒え、血の流れも止まっていった。

やがて、マチルダ様は意識を取り戻した。彼女は目を開け、ファラーの優しい顔を見つめた。

「ファラー...ありがとう。私は生きていることができたのね」とマチルダ様は微笑みながら言った。

ファラーは感動と喜びを抱きながら、マチルダ様の手を握った。

「マチルダ様、私たちはあなたを守る為に存在しています!」

マチルダはその言葉を聞くと涙を流しながら答えた。

「役目を終える私の為にここまでしてくれるなんて……! 私の事を本当に大切に思ってくれているのですね……。でも今はそれよりもやらなければならない事があるの」

マチルダは立ち上がると聖女の証であるペンダントを取り出し、そのままミューラの方に向き直る。

「ミューラ.....、神器を使えてしまったのですね....。」

マチルダは悲しそうな目をしながら言った。

「マチルダ様、何か問題でもあるのですか?」

ミューラはマチルダの目を見つめ、しっかりと自分の意思を伝えた。

マチルダ様はしばらく沈黙した後、静かに口を開いた。

そして、マチルダは語り始めた。

「ミューラ、その杖は宝杖ローウッドと言い14神器の1つなの、その力は癒しであるの、そしてバルゴの宿命...そう聖女

。」

ミューラはマチルダの言葉に驚きながらも、深い敬意を込めて答えました。

「マチルダ様、私が聖女と言うのは冗談でしょ?あの時、私の中に杖から何かが流れてきましたけど。」

マチルダとファラーは驚きを隠せませんでしたが、同時に喜びも込み上げてきました。この新たな力が彼らの戦いに役立つことを確信し、団結の絆が一層強まったのです。

ファラーは目を輝かせながら言いました。

「ミューラ、それは素晴らしいニュースです!私たちはますます強くなったと言えるでしょう。マチルダ様、ミューラと私たちが力を合わせれば、この邪悪な存在に立ち向かえるはずです。」

マチルダは、ファラーの勘違いを苦笑いで聴き訂正をしました。

「ファラー違うのよ、聖女は勇者が現れた時には、はるか東にあるマスタケロンの地にある塔に行かなければならないの。」

マチルダはレイモンドに視線を向けて問いかけた。

レイモンドは、マチルダの疑問に対して答えた。

「マチルダ様が言うことは分かるのですが、俺は勇者では無いですよ、たまたまこの武器が勝手に手元に来ただけですから!」

レイモンドは、謙遜気味に答えるがマチルダにそんな言い訳みたいな物は通じない訳で、

「あなたは、勇者なのですよ。今の状況を考えれば明らかだと思いますが……」

マチルダは、ため息をつくように言った。

「しかし、レイモンドが勇者なのは分かりますが、マチルダ様はどうされるのですか?」

ファラーは、マチルダに問いました。

「私は、聖女を引退ですね....」

バターン、マチルダが喋っている横でアイシアとルシル2人が急に苦しみ出した、

「マチルダさ..ま.....からだが....」

アイシアが、体の不調を訴える、その横に仰向けで横たわるルシルは目の焦点が合ってなく身体が震えていた。

「アイシア、ルシルしっかりしろ!!」

2人は返事する余裕も無くなっていた。ファラーは2人の身体を調べたが特に異常はなかった。2人は魔力切れによる疲労で倒れているだけの様に感じた。

レイモンドは2人に駆け寄り治癒魔法をかけようとするが、2人は魔力切れでは無いらしく虚空を見つめていた。

レイモンドとファラーは、マチルダとミューラを少し奥で休ませて交代でアイシアとルシルの様態を確認する、ファラーと交代したレイモンドが少しウトウトした時突然それは起こった、アイシアとルシルは突然、異形の姿に変わりはじめた。彼女らの肌は青っぽく変色し、目は白目が黒くなり赤く輝く、牙や鋭い爪が現れた。彼女らの存在はまるでオルバ種そのものだった。

ファラーとレイモンドは驚きと恐怖に満ちた表情を浮かべた。彼らはアイシアとルシルの変貌に戸惑いながらも、彼らを助ける方法を探さなければならないと思った。

「アイシア、ルシル、どうしてこうなったのだ?」ファラーは声を震わせながら尋ねた。

しかし、アイシアとルシルは人間の言葉を話すことができなくなっていた。彼らはただ異様な声で咆哮し、凶暴な態度で二人に襲いかかってきた。

ファラーとレイモンドは必死に身を守りながら、彼らの攻撃をかわすように動いた。彼らは何が起こったのか理解できないまま、アイシアとルシルを元に戻す方法を模索した。

その時、ファラーの脳裏に一つの考えが浮かんだ。彼女はアイシアとルシルが何日か前に襲われケガをし治療院で神官に治療をしたと聞いていた。もしかすると、治療した神官が今日襲ってきたもの達の仲間なのではと。

「レイモンド、私たちは彼女らを元に戻さなければならない。何か良い手はないか?」ファラーは急いで尋ねた。

レイモンドは思案しながら周囲を見回したが何も無かった。彼はファラーが言った言葉を思い出し、マチルダの方を見ると彼女のそばにはミューラがいた。

彼女はマチルダを抱きしめ、ミューラの瞳からは涙が溢れ出していた。

ミューラは、マチルダの手を強く握りしめて泣きじゃくっていた。

ミューラはマチルダとの別れを惜しんでいた。彼女は、マチルダがいなければここまで来れなかったし、マチルダはいつも優しく見守ってくれてた。ミューラは心の中でマチルダに感謝し、マチルダの手を握る力を強めた。

レイモンドが神器を握りしめアイシアとルシルに近ずいて行く、神器を振りかぶった瞬間アイシアとルシルの首がポロリと落ちる。

「躊躇すると死ぬぞ!」

アイシアとルシルの体の後に黒いローブを纏った人物が立っていた。

ファラーが怒りの声をあげ、剣を構え攻撃しようとした時、ミューラがそれを止める。

ミューラはファラーの腕を掴み、首を横に振って悲しげな目でファラーを見る。

ファラーは涙を流し、ミューラをじっと見つめ返した。

ファラーは、ミューラの気持ちを察し黙り込んだ。

ミューラは、ファラーに背を向けるとマチルダの方に歩いて行った。そして、嗚咽をかみ締めながら、マチルダをそっと抱きしめた。

マチルダは、ミューラの頭を撫でながら、ミューラの耳元で囁いた。

ミューラは、マチルダの胸の中に顔を埋め、マチルダを抱き寄せた。

マチルダは微笑みながら、優しい口調で慰めていた。

「悲しむのは良いが、悲嘆にくれる時間はないぞ。」

黒衣の男は再びレイモンドの前に姿を現した。

レイモンドは無言のまま、男を睨んでいる。

男は、レイモンドの目を見てニヤッと笑う。

レイモンドは、マチルダから貰ったペンダントを首から外し、それを見つめていた。

(マチルダ様……私は……)

レイモンドは、マチルダの事を想い、自分の無力さを悔やんで泣いていた。

黒衣の男がレイモンドに語りかける。

レイモンドはハッとして我に帰る。

男は、レイモンドの心の隙を見逃さなかった。

レイモンドが気がついた時には、彼の目の前に立っていた。

「ほんとに困るんだよ!ラガスの頼みで来てみれば、女みたいにメソメソと!」

男は、ラガスの知り合いでレイモンドを助けに来だと言う。

しかし、その男の言うことを鵜呑みにするのは危険だと感じたレイモンドは、マチルダとミューラを守る為に戦う事を決意した。

レイモンドは、神器を構えると、全身全霊を込めて振り下ろした。

しかし、神器は簡単に受け止められてしまった。

「レイモンド、敵を間違うな!」

男は、レイモンドを諌めるとマチルダの前で立て膝でひざまつく。

「マチルダ様お久しぶりです、クリシュバナです。」

マチルダは、目を丸くして驚いている。

マチルダの驚きようは、クリシュバナがマチルダに危害を加えないと判断したレイモンドとファラーは武器を収めた。

ミューラは、まだマチルダの胸に抱きついていた。

ファラーは、ミューラの肩を叩き、マチルダから引き離すと、クリシュバナに紹介した。

「こちらは新しき聖女、ミューラ様です。」

クリシュバナは、紹介されるがいなや頭を垂れて、

「新しき聖女よ、このクリシュバナがマスタケロンまでの道程を案内をします。」

自己紹介をする。

ファラーとレイモンドは、アイシアとルシルの遺体を埋葬の準備をしようと近づくがクリシュバナに止められる。

彼は虚空に剣を投げると、そこからトカゲみたいな化け物が現れ、アイシアとルシルの遺体を喰らい始めた。

ファラーとレイモンドは、その光景に唖然とし、言葉を失った。

クリシュバナは、レイモンドに話しかけた。

「私が、始末します。」

レイモンドは、アイシアとルシルの亡骸が、オルバ種に食べられているのを眺めながら、静かに答えた。

「......お願いします。」

ファラーとミューラは、レイモンドの言葉を聞きながら、ただただ呆然していた。

クリシュバナは、魔力を両手に込めると突き出し放出させ、魔物達を一網打尽にした。

レイモンドは、クリシュバナの行動を見て、彼に対する警戒心を解いた。

ファラーは、レイモンドとクリシュバナが会話をしている間にマチルダ達を休ませていた。

ファラーがレイモンドに近づき、小声で話し掛ける。

ファラーは、レイモンドを抱きしめると、 涙を堪えながら、レイモンドに言った。

レイモンドはファラーの言葉を聞いて、涙を流した。

ファラーは、レイモンドを抱きしめたまま、声を殺して泣いた。

2人は、マチルダの安らかな表情をみて、涙が止まらなかった。

マチルダは、ミューラの手を握りしめながら、2人の冥福を祈るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ