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ラグラジェント ストーリーズ  作者: 月野片里
黒き魔人と勇者の目醒め
14/30

悪党退治 2

アベルは、扉を開き闇に包まれた小部屋に足を踏み入れた。

徐々に部屋の暗さに慣れていき、部屋の様子が分かるようになってきた、部屋の天井から大小様々な鳥籠が吊らされている。鳥籠の中には、妖精たちが囚われていた。

「なんで、金羊なのよ(怒)、ここに来るのは覇龍でしょう!」

妖精の一人が叫ぶと、周りの妖精たちも同意するように叫んだ。

「ごめんなさい!でも、私だって不本意だったんです!!」

アベルは必死になって弁明するが、妖精たちは聞く耳を持たない。

そんな時だ、部屋の奥の方から人影が現れた。

人影は、こちらに向かって歩いてきた。

「はじめまして、金羊の神子にしてアリエスの宿命のアベル様。わたくしは、ここに囚われている、妖精殿の巫女クロエと申します。」

クロエは、自分の右足首に繋がっている鎖をジャラっと鳴らして見せた。

「あなたは、私の事をご存知のようですね。」

「はい、私は囚われの身になる前に一度。といっても、遠くからですが」

アベルは思い出す。

確かに、この娘を見たことがある気がする。

しかし、その時の記憶は曖昧ではっきりとしない。

だが、彼女が身に纏っている衣装に見覚えがあった。

白を基調とした薄手の衣装。

あれは確か……。

アベルが思考を巡らせている間に、クロエは話を続ける。

彼女の表情は暗く沈んでいた。

無理もない、こんな場所にずっと一人で閉じ込められているのだ。

それにしても、先程から気になっていた事がある。

それは、クロエの首元についている黒い首輪だ。

一見ただのアクセサリーに見えるが、妙な違和感がある。

アベルが視線を向けると、クロエは慌てて首を手で隠した。

そして顔を赤らめながら言う。

その仕草を見て、アベルは確信した。

(なるほど、そういう事ですか……)

彼女は、おそらく奴隷なのだ。

しかも、かなり劣悪な環境に置かれていたようだ。

全身が傷だらけである。

アベルは自分の服が汚れる事も気にせず、膝をつくと彼女を抱き寄せた。

クロエは驚いた様子だったが、抵抗する事はなかった。

しばらくして、落ち着きを取り戻したのか、彼女は静かに語り出した。

自分がどうして、この場所にいるのかを……。

時は少し遡り、今より少し前の事だ。

場所は変わり、ここはアルビオにある神殿の中。

そこに一人の少年がいた。

彼の名前は、ブブ・ライローという。

彼は、南方にある国の部族の戦士であり次期族長候補でもある。

彼の一族は代々、特殊な能力を持つ者が生まれる家系であった。

彼もその一人であり、生まれつき魔力量が多かった為、将来を有望視されていた。

しかし、ある時を境に一族の運命は大きく変わった。

突如として現れた謎の集団によって、彼らの故郷は滅ぼされてしまったのだ。

生き残ったブブ達は、アルタイ山脈の地下にある秘密の回廊を抜け、このアルビオにやってきた。

このアルビオにやって来たブブ達は、とこの国の神殿に引き取られることになった。

神殿の名前は、精霊殿と言った。

精霊殿は、パイノーグに有る妖精殿と対を為すものであるらしい。

その為か、この国では精霊と縁が深いらしく、精霊殿には多くの精霊達が集っていた。

そこで、クラリオールはザルガネスに精霊の魂を捧げる儀式を行うために、精霊殿を攻め精霊を攫って行った。クロエは運悪く妖精殿からの用事で精霊殿に来ており、連れていた妖精共々一緒に攫われたのであるとのことだった。

この時の防衛で、ブブが瀕死の重症を負いながらもキャンサーの宿命の力が覚醒

した。だがその反動で身体に負荷がかかり、一時は生死の境を彷徨う事になり、いつ意識が取り戻せるかわからない状態になってしまったのだ。

そして、現在に至る。

アベルはクロエからの情報を、静かに聞き終えクロエを見ると、クロエは涙を流すと、ポツリと語り始めた。

妖精達を開放したい。

このまま、何もせずにここに居たらいずれ自分は衰弱死してしまうだろう。

そうなる前に妖精を解放したい。

それが、クロエの願いだった。

アベルは、クロエの話を聞いた後、ある提案をした。

それは、自分も妖精を解放するのに協力するというものだった。

クロエは最初は戸惑っていたが、やがて意を決するとアベルの手を取り、二人は妖精達の囚われているこの部屋で破錠の魔法を唱える、

「古き精霊王の盟約に従い、」「我は秘密を打ち砕く者なり、」「雷の音、」「花の香りと共に」「「鍵よ砕けよ、キセンタブラ」」

二人の詠唱と共に、雷鳴が鳴り響き、2人を中心に屋敷中の鍵が開いたり、奴隷の首輪が壊れたりして解放された妖精たちが現れて部屋のあちこちに飛び交った。

解放されて喜ぶ妖精たちを尻目に、アベルとクロエはすぐに行動を開始した。

アベルとクロエは妖精たちの救出を他の妖精たちに頼み、自分達はクラリオールの部屋に向かった。そして、扉を開けるとそこには、クロエが言っていた通り怪しげな儀式を執り行っているクラリオールが魔法陣の中央に佇んでる、そしてクラリオールと対峙する様にエドの姿があり、エドは覇龍の神子の覚醒状態になり片端には仔龍リュートが付き添っているのであった。

アベルはクロエを庇いながら、彼女に話しかけた。「クロエさん、ここから逃げてください」

「えっ、でも……」

「大丈夫です。必ず、助けますから」

アベルの言葉を聞いたクロエは戸惑いつつも、部屋から飛び出していった。

それを確認したアベルは、クロエが部屋から出ていったことを確認すると、クラリオールに話し掛けた。

「さあ、これで我々4人だけですね。あなたの悪事もここまでですよ。」

アベルがそう言い放つと、クラリオールは笑い声を上げた。

そして、アベル達に告げる。

「君たちは、何か勘違いをしているようだね。私は、神徒ザルガネス様の神託を受けただけだ。神徒ザルガネス様はこの世界を混沌に陥れようとしている魔王を倒す為に、神徒の力が必要とされている。だから、私が選ばれたのだ。」

クラリオールは得意げに語る。

アベルはそれを聞いても、冷静に言葉を返す。

「なるほど……、あなたの目的は分かりました。それで、ザルガネスは何とおっしゃっていたのです?」

「覇龍の神子……、つまり、この男だ。この男は、世界を破滅させる存在なのだそうだ。」

そう言うと、クラリオールはリュートを指し示した。

アベルはそれを聞くと、ため息をつく。

そして、彼に問いかけた。

「その話を信じろと言うんですか?そんな荒唐無稽な話を信じられるとでも思っているのですか?」

アベルが呆れたように話す。

それに対して、クラリオールは余裕の表情を浮かべながら答える。

「信じる信じないは君の勝手だよ。だが、事実は変わらない。それに、どちらにせよ君はここで死ぬんだ。ならば、真実を知る必要はないだろう。さあ、死になさい!」

クラリオールはそういうと、アベルに向かって魔法を放つ。

アベルはそれを難なく避けると、クラリオールに向けて魔法を放った。

しかし、クラリオールは魔法を喰らっても平然としていた。

アベルの攻撃を見て、クラリオールは感心したような素振りを見せる。

それから、クラリオールは笑みをこぼすと呟いた。……やはり、素晴らしい。

この力があれば、きっと……。

クラリオールは、ぶつぶつと独り言をつぶやいていた。

一方、アベルはというと、クラリオールの様子がおかしいことに気がついていた。

先程までは、自信満々に攻撃を避けられた事に驚いていたが、今はその逆で全く焦る様子もなく、アベルの攻撃を悠々と避けていたからだ。

アベルは疑問を抱きながらも、クラリオールへの攻撃を止めなかった。

だが、いくら攻撃を仕掛けてもクラリオールに当たる気配はなく、それどころかアベルの身体は徐々に傷だらけになっていった。

その様子を見たクラリオールは、高笑いをする。

その光景を見たアベルは、自分の身体がクラリオールによって操られていることに気づく。

そして、アベルはクラリオールの能力の正体を見抜いた。

彼の能力は、対象を洗脳する事だった。

相手の脳に直接干渉し、思考を書き換えることで相手に思い通りの行動をさせる事が出来てしまう。

それ故に、アベルは自分の意思とは関係なしにクラリオールの傀儡になっていたのだ。

アベルはクラリオールを睨むと、魔法で反撃する。

クラリオールは、アベルの魔法を避けると、今度は魔法で応戦した。

クラリオールが放った魔法の威力は凄まじく、アベルの防御を突破して、彼は吹き飛ばされてしまった。

アベルが攻撃を受けた事で、クロエ達の元へ駆けつけようとしていた妖精達は足止めを食らう。

クロエの元に駆けつけた妖精が彼女を見ると、彼女は苦しそうな顔をしてその場に倒れ込んでいた。

妖精達が慌てて駆け寄ると、クロエは辛そうにしながらも起き上がる。

そして、妖精達に話しかけた。

妖精達の視線は、リュートとエドの2人に注がれている。

クロエは妖精達に、彼等を頼んだと告げると、自分はリュートとエドの2人を連れて逃げるように言った。

クロエの言葉を聞いた妖精達は、リュートとエドの2人を担ぎ上げてその場から立ち去った。

2人の姿が消えると、クロエは安心したのか意識を失ってしまった。

クロエが気を失ったことで、リュートとエドも正気に戻ったようだ。

リュートとエドはクロエの様子を確認すると、クロエを抱え上げ急いで部屋から飛び出していった。

アベルは、クロエ達が部屋から飛び出していくのを確認した後、クラリオールに再び魔法を放ちながら、クロエの後を追いかけていった。

クロエが部屋から飛び出すと、そこにはシデリウスの姿があった。

彼女はシデリウスに話し掛ける。

すると、彼は微笑みながら答えた。

クロエさん、ご無事で何よりです。

シデリウスがそう言うと、クラリオールも現れる。

そして、彼は語り出した。

「神徒ザルガネス様のお言葉を伝える。

『お前の力が必要だ。私の元に来るが良い。』」

クラリオールは、そう口にした後、ニヤリと笑う。

「さあ、私と共に来い。」

クラリオールは、手を差し伸べる。

「……お断りします。」

クロエはきっぱりと断った。

「ほう、断るか……。」

クラリオールはそう言うと、彼女の目の前まで近づく。

「なら、死ね!」

クラリオールはそう言うと、彼女に魔法を放つ。

しかし、それは突然現れた人物により防がれた。

「間に合ったみたいだね。」

そう言って、アベルはクラリオールの前に立つ。

「貴様……、どうやって抜け出した?」

クラリオールは驚いた表情を浮かべながら尋ねる。

「そんな事はどうでもいいでしょう?それより、貴方の相手は僕がやりますよ。さあ、早く逃げてください!ここは、僕が引き受けました。」

アベルはそういうと、クロエに背を向ける。

「アベル君、ありがとうございます。でも、大丈夫なんですか?」

クロエは心配になり彼に尋ねた。

「えぇ、問題ありません。だから、早く行ってください。僕は負けませんから。」

アベルは自信ありげな顔をしながら答える。

彼の言葉を聞き、クロエは安心したような顔をした。

そして、クロエはリュートとエドを連れ、この場から離れる。

その後ろ姿を見送った後、アベルはクラリオールに向き直った。

その頃、アベルの予想通り、リュートとエドは妖精達に助け出されていた。

妖精達は2人を担ぐと、すぐに走り出す。

リュートとエドは妖精達に運ばれながら考えていた。……クロエは一体何処へ行ったのだろうか。

俺達は、クロエを探す為に辺りを見回す。

すると、視界の端で何かが動いた気がしたので、そちらの方角を見る。

すると、クロエが誰かと言い争っている光景が見えた。

俺はクロエの元へ向かおうとしたが、妖精達によって止められる。

妖精達はリュートを必死に止めると、自分達に付いてくるように言った。リュートは、妖精達の指示に従い、彼女達について行く事にした。

そして、しばらく走ると、ある部屋へと辿り着く。

その部屋には、シデリウスとクロエがいた。

クロエは意識を失っているようで、倒れていた。

シデリウスはリュートとエドを見て微笑むと、話しかけてきた。

「貴方達が神徒となる資格を持つ者達ですね。私はシデリウスと申します。神徒ザルガネス様に遣える者です。」

シデリウスはそう名乗ると、彼の隣にいた少女が口を開く。

「私が神徒ザルガネス様の眷属にして、覇龍の神子である、クラリオール・アスモドールよ。」

彼女はそう名乗りを上げると、自分の事を指差す。

「そして、これが私の力の象徴でもあるわ。」

彼女はそう言うと、黒い翼を広げた。

その姿を見たリュートは驚く。

「お前は悪魔なのか!?」

エドはそう叫ぶと、クロエの側へと向かう。

「違うわ。これは、悪魔の力を取り込んだ結果生まれた副産物に過ぎないもの。」

エドの言葉を聞いたクラリオールは、不機嫌そうな声で答えた。

「さて、貴方達には私達の為に死んでもらいましょうか。」

シデリウスはそう言うと、魔法を放った。

リュートとエドは慌てて避けるが、避けきれず魔法が直撃する。

「くっ……。」

2人は苦悶の声を上げた。

「ふぅん、まだ生きてたんだ。しぶといねー。」

クラリオールは、楽しそうな声を上げながら2人に近づく。

「じゃあ、今度はこれでどうかしら?」

彼女はそう言いながら、手に魔力を集める。

すると、彼女の手の平に漆黒の球体が現れた。

「これって、まさか闇の球?こんな高等な技が使えるなんて……、やっぱりただの馬鹿じゃないのか。」

エドはそう呟きながら、上半身裸になる。

「おい、何をしている?馬鹿か?」

クラリオール?は慌てる。

しかし、エドは気にせず詠唱を始めた。

「我は求める!龍の血よ、我が身を守れ!」

彼が呪文を唱えると、光の膜が現れ、彼を守る龍鱗を体に纏い鎧となった。

その様子を見ていたリュートは、エドの側に近づき、肩に前足を置く。

「ギュオーン(いくよ!)」

「あぁ、任せてくれ。」

リュートはエドにそう言うと、エドは笑顔で答えた。

「偽の覇龍の神子よ、本当の神子の力を味あわせてあげよう。」

クラリオールはそう言うと、闇を凝縮した球をリュートに向かって放った。

しかし、その攻撃はあっさりと避けられてしまう。

「何よ!どうして当たらないの?それに、この子は一体?」

「そんな事はどうでもいいだろう?さあ、早くかかってこいよ。」

エドは挑発するように、手招きをする。

「舐めるな!」

クラリオールは再び、リュートに向けて攻撃を繰り出す。

「ギュオオン!」

リュートは、その隙に彼女の背後へ回り込む。

「こっちだぜ。」

「しまった!」

リュートは、彼女を羽交い締めにする。

「放して!」

クラリオールは、リュートを振り払おうとするが、振り払う事が出来ない。

リュートはエドに目配せをした。

「わかった。」

エドはリュートの意図を理解し、剣を構える。

「これで終わりだよ。」

エドはそう言うと、クラリオールの背中から心臓を突き刺した。

クラリオールは、悲鳴を上げる事もなく息絶える。

「……お疲れ様。」

エドはリュートに声をかける。

「ギュオン(当然)!」

リュートはブレスを放ちクラリオール?の死体を完全に焼き尽くす。

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