動きだす者達
国家クエスト、国家レベルの不祥事やクーデター国家存亡レベルのモンスタースタンピードの時に起こる特殊なクエスト
冒険者ヌックト・ヨーインは、国家クエストの発令によって追い詰められていた。
「くそっ! なぜこんなことに……」
ヌックトはギルドを通さない裏の仕事をレイノス教の司教から貰ったり、少しながら盗賊みたいに村を襲い悪事をはたらいてからである。
しかし、まさか国家レベルの問題に巻き込まれるとは思っていなかった。
国家クエストが発令された理由は一部の司教達が悪事に働き国の機関を完全に私物化し、レイノス教徒以外の者をありもしない罪で捕縛し拷問したり、奴隷として売買していたことが一部の冒険者の尽力のおかげでギルドに知らされ、遂には教皇カイルの耳に入ることになり
今回の国家クエストとなったのだ。
この国では教皇が絶対的な権力を持ち、貴族でも教皇には逆らえないのであった。
そんな状況の中、ヌックトは逃げ回っていた。
今は使われていない地下牢の中に隠れている。
ここにいれば見つからないだろうと思い隠れてはいるが、正直にいうと不安でしかなかった。
今にも見つかりそうな気がしてならない。
そう考えていると足音が聞こえてきた。
誰かが来たようだ。
ヌックトは息を殺し身を隠す。
すると一人の男が入ってきた。
どうやら看守らしい。
その男はあたりを見渡している。
そしてヌックトを見つけるとニヤリとした表情を浮かべ近寄ってきた。
ヤバイ……見つかったか? 俺は死を覚悟した。
しかし予想に反して何もせず出ていった。
どういうことだ? 俺は疑問に思ったが気にせずに助かったと思った。
だがそれは間違いだった。
俺のいる牢屋の鍵を開ける音を聞き俺は焦った。
鍵まで開けて何がしたいんだ?まさか脱獄させる気なのか!? そんなことを思いながらも必死に隠れようとするが遅かった。
あっさり見つかっちまった。
看守らしき奴は俺を見るとニヤリとし話しかけてくる。
そして衝撃的な一言を口にする。
いや、口にしてしまったという方が正しいかもしれない。
なぜなら司教の子飼いでしかない俺に対して死刑宣告をしたからだ。
もちろん俺を殺すつもりだ。
俺を捕まえるためにわざわざ鍵を開けたのかよ! ふざけんな!! なんで俺が殺されないといけないんだよ!! 俺は死にたくない! まだやり残したことがあるんだ!! だから逃げることにした。全力で逃げた。
捕まるわけにはいかない。
絶対に生きてやる! それからしばらく走り続け追ってこないことがわかると俺は立ち止まった。
なんとか撒いたみたいだな……。
さすがに疲れたぜ……。
それにしてもこれからどうするか考えないとな。
このままじゃ確実に殺される。
それならいっそどこか遠い国に逃げるか? しかしどこの国に行くべきか迷うところだよなぁ。
とりあえずこの国から出ることは確定だけど、どの方向に行けばいいかわかんねぇしな。
まずは隣国について詳しく知る必要があるな。
ヌックトが1人で助かる為に足掻いて模索をしている一方で、ヌックトの幼馴染のバルザード・クヌギンは、ヌックトの逃亡によりレイノス教の本部に連行されていた。
「ヌックトめ!あの野郎!!」
バルザードはヌックトのことを心底恨んでいた。
なぜならば、ヌックトはバルザードの恋人であるマリナを騙し自分のものにしようとしたからだ。
そのせいで、バルザードは恋人を失いかけた。
その時の苦しみを味わわせてやりたいと思っていた。
「あいつのせいでマリナは……」
しかし、今は違う。
今のバルザードの心にあるのは怒りだけだった。
それも全てヌックトが悪いと思っている。
そのためヌックトにどんな仕打ちをしてでも苦しめて殺してやろうと考えていた。
そんなことを考えているうちにレイノス教の本山に着いたようだ。
馬車から降りるように促され降りた先には、巨大な塔があった。
ここが見晴らしの塔か。
すげぇな。
こんなに大きな建物は見たことがないぞ。
こんなところで死ぬなんて嫌だな。
早く帰りたいぜ。
そういえば、俺以外にも連れて来られた人達がいるはずなんだがどこにいるんだろ? 辺りを見渡すと、他の人もいたようだ。
ただ、全員拘束されているようだった。
そりゃそうだよな。
あんなことがあった後だし、警戒するのは当然のことだと思う。
そう考えていると、教皇カイルが現れた。
教皇カイルを見た瞬間、周りの空気が変わった気がした。
それほどまでに威圧感があるのだ。
教皇カイルの後ろにいる護衛の騎士達も只者ではない雰囲気を出している。この場にいる全員が緊張している中、教皇カイルが口を開く。
すると、いきなり信じられないことを言い出した。
ヌックト他何10名かが国家反逆罪を犯したため処刑されるということを告げたのだ。
(つまり、俺たちは奴らを捕まえるための猟犬になれと)
バルザードたちは、選択を迫られたのだ、親しき者を売り自身の保身に走るか、それとも一緒に罰を受けるのか、もしくは、この国を出て行くかを。
そして、バルザード達はヌックト達を売ることにした。
自分たちが生き残るために、ヌックト達は死んでもらう。
そう決意し、名乗りを上げ行動に移す。
「私はヌックトと一緒に冒険者をしていました、バルザードと申します。」
「私は違うパーティーにいたものですが。ヌックトは私達の大切な仲間です。どうか私達にヌックトを助ける機会をください!」
すると教皇カイルはニヤリとした表情を浮かべながら言う。
「ふむ、ヌックトの仲間か。ならばヌックトと同じ盗賊という事か!」
教皇カイルの言葉を聞き周りにどよめきが起こる。
「いえ、違います。我々はヌックトと共に様々な仕事をしておりましたが。我々は悪事を働いてません!必ずやヌックトを捕まえてみせましょう!!」
バルザードは必死に訴える。
「ほう、ヌックトの居場所を知っているということなのだな?」
バルザードは内心焦っていた。
マズイ……どうする? ここで知らないと言えば怪しまれるかもしれない。
しかし、知っていると答えればヌックトが殺されるかもしれない。
どうすればいいんだ? そんなことを思っている時だった。
後ろの方で声が上がった。
「待って下さい!私たちはヌックトとは関係ありません!ただここに来いと言われ来ただけです!だから私たちには関係のないことです!お願いします!見逃して下さい!!」
小太りの男がなにやら関係ないと騒ぎ立てている、正直うるさい。
しかし、そのおかげで考える余裕ができた。
確かに俺にはヌックトを捕まえる理由はある。
俺は喜んで猟犬になろう。
バルザードは静かに踵を返すと辺りが薄暗い通りをヌックトが潜伏していると思われるスラムへと抜ける裏通りをぬけるとそこにはボロ小屋があった。
おそらくここだろう。
中に気配を感じる。
慎重にいこう。
ゆっくりと扉を開けると中には3人の男がいた。
そのうち2人はヌックトと仲間のスラートンだ。
もう1人がヌックトが言っていたヌックトの兄のカリウスだ。
バルザードは咄嗟に息を潜めて様子を覗い辺りの気配を探ってみる、すると自分の5m位後ろに人の気配を感じ取られる、敵か味方か分からないのでギルドで教わるハンドサインを後ろ手で送り、コンタクトをとってみる。
するとその男は小さくうなずいた。
やはり、俺の考えは当たっていたようだ。後にいた者たちは今回の仕事を頼んだ協力者だったのだ。
しかし、今は目の前の男をどうにかしないと……。
「おい!お前ら!こんなところで何をしている!さっさとここから出て行け!!」
ヌックトの兄が怒鳴ってきた。
しかし、ヌックトとヌックトの仲間たちは動こうとしない。
「兄貴よぉ〜、そう怒んなって。少し話をしようぜ。それに、ここは俺たちの隠れ家でもあるんだよ。だからあんまり騒ぐと迷惑がかかるぜ?」
ヌックトがなだめに入る。
「チッ、仕方ねぇな。話だけなら聞いてやる。だが、長居は無用だ。俺が見回りに行く時にすぐにここを出るんだぞ。」
「わかってるって。じゃあ、早速本題に入ろうぜ。」
「ああ、まずはこいつを見てくれ。」
そう言ってヌックトは袋から何かを取り出しテーブルの上に置いた。
それは、魔石だった。
それもかなり大きいものだ。
「こいつは結構価値があるもんなんだろ?なんせあの司教様が直々に渡してきた代物なんだからよ!」
それを聞いた瞬間、バルザードは驚愕した。なぜ、そんなものをヌックトが持っているのか。
そして、ヌックトが言っていることは事実なのか。
どちらにせよ、これは大問題になる。
そんなことを考えていた時だった。
「なるほど、確かに良いものを持っているようだな。それで、これをどこで手に入れたんだ?」
ヌックトの兄が問いかけてきた。
それに対してヌックトが答える。
「まぁ、そんなことより、これがあれば俺たちも楽できるんじゃねえかと思ってよ。だから、俺たちはこれを使って金を稼ぐことにするわ。そんでもって、いつかこの国を出て行くつもりだ。」
それを聞いてバルザードは焦った。
マズイ……このままでは計画が台無しになってしまう。
しかし、ここで焦って行動に出てはいけない。
そう思いバルザードは必死に考えた。
すると、ヌックトの兄が口を開いた。
「ほぅ、つまり、この国から出ていくということだな。つまりはそういう事か。わかった、お前らのやりたいようにやればいいさ。ただし、あまり目立つような事はするなよ。」
「もちろんだ。そこは抜かりない。」
「よし、話は終わりだ。俺はそろそろ行かないといけないんでね。俺はもう出るが、くれぐれもこの事だけは忘れないようにしてくれよ。」
「分かってるよ。気をつけてな。」
「おう!」
ヌックトの兄のカリウスは部屋から出て行った。
バルザードの後ろにいた男達は不思議な札を用いカリウスを拘束すると、意識を失わせ無力化させていた。
バルザードは小屋の換気孔に、パラライズモスの鱗粉で作った麻痺薬を投げ込む
と、紫色の靄が充満し立ち込める。
すると、ヌックトたちは苦しむ様子もなくその場に倒れ込んだ。
「よし、今のうち信号の火球を上げるぞ。」
そう言うとバルザード達はすぐに火球を上げてその場を離れ、次の目標を目指すのだった。
一方モンティーヌは、シデリウスの邸宅の地下避難通路をアベルと共に駆けていく、目指すはシデリウスの居るであろう執務室だ。
その道中には、シデリウスの部下達がいたが、皆、アベルの部下によって無力化され捕縛されていた。
そのおかげで、難なく進むことができた。
しかし、その先には1人の男が立っていた。
「おや?貴方は確か、シデリウス様の子飼いの方ですね?何故ここにいるのですか?」
シデリウスの右腕の男がこちらに話しかけてくる。
しかし、アベルはその男に見覚えがあった。
以前、教皇カイルを狙って暴動が起きたことがあった、其の時に首謀者として捕らわれた男だ。
男は剣を抜くと構えをとる。
アベルもそれに合わせて腰の剣を抜いた。
男は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに元の顔に戻った。
どうやら男はアベルのことを知らなかったようだ。
その証拠に男の顔からは余裕が見える。
しかし、アベルもただの男ではない。
彼は神器に選ばれるだけの実力を持つ男だ。
そして、アベルは先手必勝と言わんばかりに男の懐に飛び込んでいく。
しかし、それを易々と許すほど相手は甘くなかった。
アベルが飛び込んできたタイミングを見計らい、男は横薙ぎの一閃を放った。
しかし、それは悪手だった一閃した剣がアベルの身体を捉えたと思われた瞬間、アベルの姿が霞のように消え去ったのだ。
いや、消えたのではない。
それは残像であったのだ。
本来なら避けられたはずの一撃だが、あえて受けることで相手の隙を作り出すためにわざと受けたのだ。
それにより、ほんの数秒ではあるが、完全に動きを止めてしまった。
そして身体の左側から大きな衝撃が走った。
気づいた時には既に遅く、そのまま壁に叩きつけられていた。
肺の中の空気が全て吐き出され呼吸困難に陥る。
それでも何とか立ち上がり再び剣を構える。
しかし、そこには既にアベルはいなかった。
一体どこに……。
そう思った直後、背後から声が聞こえてきた。
振り向くとそこにいたのは、先程まで正面にいたはずのアベルだった。
しまった!そう思う頃には時すでに遅し。
アベルの渾身の一撃が男に直撃した。
そして、男はそのまま地面に崩れ落ちた。
そして、男は完全に気絶していた。
それを確認すると、すぐさまアベルはシデリウスの元へと向かった。
バルザード達はその後、順調に仕事をこなしていった。
そして、いよいよ最後のターゲットであるのクラリオールの捕縛へと向かうのであった。
(〃_ _)σ∥ 最近サボり気味の遅筆の作者です、もし面白いと思ったら感想とかお願いします。




