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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第七章 再会はトラブルとセットで>
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#07-02 芽が出るのはいつ頃?




 そう言えば久利栖はRPGもかなり好きだったし、異世界転移・転生もののマンガも大好物だったから、きっと冒険者になりたかったんだろうね。


 っていうか、あんな都合の良い組織なんて、無いよね? 異世界転移のしおりには――うん、やっぱり載ってない。ああ、でもこのしおりの情報は基本、メルヴィンチ王国内の常識に限定されてるみたいだから、もしかしたらよその国にはあるのかも? その辺は旅をして自分の目で確認したいね。


 まあ仮にあったとしても、目立ちすぎると面倒事を押し付けられそうだよね、アレも。組織に所属すればしがらみはあるものだから。


 組織が無いんだから、逆にそういう仕事を請け負う商会を立ち上げるのはアリか。あっちのもので喩えると、私立探偵とか民間軍事会社とかね。


 ちなみに久利栖お薦めのその手の作品をいくつか読んだことあるけど、よくよく考えると冒険者ギルドってすごいんだよね。主に技術的な意味で。


 だってハイレベルの偽造改竄防止技術が施された登録証とか、個人情報を管理するデータベースとか、その情報を世界各地のギルドで閲覧できる通信ネットワークなんかがあるってことでしょ? それだけでも現代地球の先進国並だ。凄いね。


 この世界でも大災厄が起こらず、滅んだっていう魔法技術の進んだ国が残ってて、さらに異世界人から先進技術のアイディアが入ってくれば、或いは今頃はそういう技術があった――かも?


 おっと、話が逸れた。


 いずれにしても冒険者っていう選択肢は無いから、皆はたぶん飲食店をやってると思うんだよね。


 シェットさんの話してくれた、ブームの火付け役になった幻の屋台とやらがそう(・・)なのかは分からないけど。取り敢えず(こっちの世界では)珍しい料理を出す店を探してみようと思ってる。


 唐揚げとか、焼きそばとか、ハンバーガーとか、ラーメンとか――なんか考えてたらラーメンが食べたくなってきちゃったよ。ラーメン屋台、やってないかな?


 スイーツ系もアリだよね。クレープとか、パンケーキとか、魔法を駆使すればアイスクリームもイケるかな?


 ――じゅるり


 よし、早くみんなと合流しよう!







 外周市を出て街道を外れて北西方向に移動すること数時間。大きな湖に着いたところでお昼時だったから、そこで一旦お昼休憩にした。っていうか湖って。どんだけ広いんだか(笑)。


 テントの中にテーブルと椅子を出す。今日のご飯は……ノウアイラで仕入れた貝と茸がメインの具沢山クラムチャウダー風シチューにしよう。あったかいものが美味しい季節だからね。――まあ、ローブの中は常に適温にしてるから、寒くは無いんだけど。


「では、いただきまーす」「キュッ!」


 うん、お腹があったまるとホッとするよね~。ん? これはすごく美味しい? これはっていうところがちょっと気になるけど、それは良かった。


 そういえば、キミはずっと馬車を牽いてて寒くは無いの? 大丈夫、問題ないと。まあフカフカの毛皮があるもんね。――それだけじゃなくて? ん~っと、馬車を牽いてると前に壁? がある。ああ、そうか、自動的に展開されるシールドって、そっちの方もカバーしてるんだね。


 今日もありがとう、神様トランク。ほら、キミも感謝しておきなさい。


 …………


 ごちそうさまでした。さて、お腹も一杯になったし、日課の水遣りをしておこう。キミは収穫をお願いね。


 トランクに自分を収納して精霊樹の鉢植え(・・・)を取り出す。朝昼晩と毎日欠かさず水と魔力をあげてる。そろそろ何か変化が欲しいところなんだけど……。


「んっ?」


 今……、ちょっと違う手ごたえがあった?


 うん、間違いない。これまでは乾いた砂に水をかけるみたいに、ひたすら魔力が浸み込んでいくだけって感じだったけど、今は魔力を注ぐと微かに反応がある。


 喩えるなら、種がようやく目覚めたって感じかな? いやー、結構時間と魔力がかかったね。とんだ寝坊助さんだ。まあ目覚めた以上、芽が出る日もそう遠くない――はず。


 だよね? ここから芽が出るまでさらに半年とかって無いよね? いや、もしそうでも続けるけど。でも変化がなさすぎると飽きるというかモチベーションが下がるというか――ね。


 ともあれ、一歩前進。早く芽が出ないかな~。


 トランクの外に出て収穫物を収納。――収穫物も随分溜まって来てるんだよね。いくらでも収納できるし悪くもならないけど、早いとこ秀に押し付けてイイ感じに加工して貰おう。


 さて、では再出発!


 湖には魚も結構いたけど今はスルー。魚の在庫は沢山あるし、王都ここまで来て寄り道をするのもちょっとね。もういい加減、舞依が足りない。早く補給しないと心が乾ききっちゃうよ。――気が急いてる自覚はあります。


 という訳で、全速の筏で湖を突っ切り再び馬車に乗り換え北西に向かう。


 ノウアイラとかちょこっと覗いたドゥズールの農村エリアは、だいたい壁の門と門を繋ぐメインストリート沿いに建物があり、商業エリアに近づくにつれて増えて行って、壁の近くは住宅地になっているって感じだった。


 それが王都の場合は農村エリアが広すぎるからか、所々に民家が集まって集落というか村になっている所がある。で、そういった村同士が街道で繋がってる構成になってる。まあ、商業エリアの壁付近が住宅地になってるところは同じみたいだけど。


 通過した湖の畔にもあって、遠目で見た感じでは結構立派な建物が並んでた。景色も綺麗なところだったから、もしかしたら夏場には水遊びと釣りが楽しめるリゾート地として賑わうのかもね。








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