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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第七章 再会はトラブルとセットで>
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#07-01 合流に向けて




「すっかり世話になってしまったな、レイナ殿。もし何か困ったことがあれば、バンラント書房を訪ねて欲しい……と言いたいところだが、こちらも今は立て込んでいてな」


「いえ、謝礼は頂きましたし王都の話も聞けましたから、それで十分です。では、お元気で」


「ああ、レイナ殿も」


 朝食を採ってから支度を整え、私たちはホテルのロビーで一旦落ち合い、お別れの挨拶をした。コダンさんとは握手を、シェットさんとティーニさんとは軽くハグを交わす。


「お友達と再会して、暇が出来たら遊びに来てくださいね~」


「その頃には、こちらの事情が解決できていればいいのですが……。なにしろ労働環境がブラックですから」


「だからウチはブラックじゃない、グレー止まりだ! お前たち、商会でその用語を広めるんじゃないぞ?」


「こういう言葉は、広まる時は自然とそうなるものなのです。……ともかく、遊びに来てくれたら歓迎しますよ。カーバンクルちゃんも」


「ありがとうございます」「キュッ!」


「はぁー。まあ、確かに早いとこどうにかしたい問題ではあるがな……(ボソリ)。そろそろ行くぞ、シェット、ティーニ」


 さようなら~、また会う日まで~。


 シェットさんとティーニさんが振り返りながら手を振ってくれるので、こちらも手を振る。カーバンクルもパタパタと手を振ってる。


 うんうん。一緒に泊まったのは予定外だったけど、割とあっさりしたお別れは概ねヒッチハイクの様式美を守れたんじゃないかな。


 ちなみにコダンさんたちはこの外周市で騎獣を調達して、商会の本部へと一旦戻ると言っていた。先に逃がした本隊の人達が無事だと良いんだけどね。


 さて、じゃあこっちも旅を再開しよっか。――の前に。


 コンシェルジュさんらしき人に印籠(商会の身分証)を見せて、ミクワィア商会の王都での所在を訊いてみた。本部は王都メインストリートの貴族エリアにあって、商業エリアの南と西に支部があると。


 北と東には支部が無いんだ。王国で五指に入る商会って聞いたんだけど、五本目ってことなのかな。はい? そうではないと。王都は門閥貴族の力が特に強いから、これだけ勢力を広げているミクワィア商会は凄いことと。なるほどね。


 っていうか、ミクワィア商会に割と好意的?


「当ホテルもミクワィア商会様にはお世話になっておりますから」


 へぇ~。傘下という訳ではないけど、共同出資者で様々な物品の仕入れもミクワィア商会を通してるんだ。


 ああ、そっか。ミクワィア商会の事を訊ねたらコンシェルジュさんが一瞬変な顔をしたのは、私がこのことを知ってると勘違いしたからかか。いやー、ただの偶然なんだよね。そもそもコダンさんが選んだわけだし。


――っていうか、今回も神様が言ってたアレかなぁ。


 でもそういうことなら、ちょっと伝言をお願いできないかな?


「レイナ様が王都に入ったと、ミクワィア商会の者に伝える。……それだけでよろしいでのすか?」


「というか、商会の上の方に伝えるように伝言をお願いしたいんです」


 以前、会頭さんと知己を得てお世話にもなったから、差し当たり消息を知らせておきたい――みたいな感じで説明すると、快く引き受けてくれた。


 よし、これで一応義理は果たしたってことにしよう。


 現在地は南の外周市で南西の商業区に向かいたいから、商会の支部に行くと遠回りになっちゃうから丁度いい。


 お世話になりました。




「よし、じゃあ行きますか」「キュッ!」


 サムズアップつきで元気いっぱいだね。でも暫くはスケーターだよ?


 しょぼ~ん……


 王都玄関口の朝だけあって、人通りが結構多い。小回りの利くスケーターの方が便利なんだから仕方ないでしょ? っていうか、キミは本当に馬車を牽くのが好きなんだね。まあ、外周市を出たらまた牽いてもらうから。よろしくね。


 目的地は商業区の南西地区。具体的にはシェットさんから聞いた話題の屋台街だね。


 カーバンクルとタンデムでスケーターを走らせると、道行く人がギョッとした様子で足を止める。この反応も大分慣れたね。


 さて、なぜ目的地を噂の屋台街にしたのかと言うと。


 舞依たちが王都に居るのは間違いないと思っている。っていうか、ショタ神様のおまけ情報(笑)があったからね。改めて感謝です。


 神様から貰った特典で当面の生活費は賄えるだろうけど、何にしても仕事は始めなくちゃいけない。いつ私と合流できるのか分かってるなら、それを待ってからっていうのもアリだけど、予定は全く立たないからね。


 いきなりよく知らない世界での生活をするわけだから、秀は堅実で慎重な判断をするはず。とすれば、ヒモが付きかねない軍や商会なんかに就職するのは考えにくい。


 従って取れる選択肢はそう多くない。猟師ハンターになるか、ついでに農業も始めて自給自足生活をするか、自営業を始めるか――そんなだろうね。


 舞依たちが自営業を始めるとしたら、飲食店一択だね。秀の料理は本当にプロ級だし、活用しない手は無い。こっちの料理はショタ神様が溜息を吐くレベルだし、秀の料理ならきっとすぐに話題になる。


 料理とは関係ないけど、四人とも整った容姿だから客寄せもバッチリだしね! ちょっとズルい? いえいえ、見た目だって一種の才能なのですよ。


 ――そういえば以前、テレビで特集されたキッチンカー巡りを秀としたことがあるけど、やけに真剣にリサーチしてたっけ。もしかしたら営業する方にも興味があったのかな? いや、無いか。ご当主さん(タヌキじじい)の後継者だもんね。


 ともかく、皆が何かしらの屋台――いきなり店舗は難しいだろうからね――を営業している可能性は結構高いと思う。


 で、私との合流を考えると、目立つというか情報を発信するというか、探し易い行動をした方がいい。それで件の屋台街ってわけね。








第七章の始まりです。よろしくお願いします。

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