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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第六章 旅は道連れ、情けは不要?>
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#06-18 ワケあり(っぽい)ヒッチハイカー




 どうにか正気度が回復した三人と一緒に馬車の上に乗り――スペースがあるから人数分の椅子を出した――再び馬車を走らせつつ事情を聴いたところによると。


 三人はバンラント書房という、主に(貧乏)学生向けに古書を販売する商会に所属する護衛で、王都から出て隣の子爵領へ向かうところだったらしい。ああ、コダンさんが身元の証明として身分証も見せてくれた。私がミクワィア商会で貰ったものと形状はほぼ同じで、金属プレート製だった。


 ところが途中で賊に襲われたため、三人が食い止めている内に本隊は王都へ引き返したとのこと。賊はなんとか撃退することが出来たものの、最期の自爆攻撃で騎獣がやられてしまい、徒歩での移動を余儀なくされて難儀していたそうだ。


「なるほど。襲われる理由に心当たりはあるんですか?」


「……むぅ。残念なことに、有る。が、詳細に関しては言えん。乗せてくれたお嬢さんには説明したいところなんだが……」


「それは別に構いませんよ。ただ、理由があるなら王都へ引き返した本隊がまた襲われる可能性がありますよね? 追いつけそうなら急ぎましょうか? もうちょっとならスピードを上げられますけど」


「有難い話だが、襲われてからもう二日は経過している。追いつくのは無理だろう」


「二日ですか、それは確かに無理そうですね」


 本体の方も襲われて足が無くなっているならともかく――なんて、フラグを立てるようなセリフは言わないよ?


「まあでも、気持ち急ぎ目で行きましょう。行けるよね?」


「キュッ!(かしこまりっ☆)」


 クルッと上半身だけ振り向いて、ウィンクに横向きのピースサイン――って、だからそのアクションはどこで覚えて来たの? まあ面白いから良いけど。


 私も魔力をいつもより多めに注いでっと。これで野営地をスルーして行けば、大分時間短縮になるはず。この三人の強さなら敢えて野営地で休む必要もなさそうだしね。


「かわいい……」「ええ、可愛いですね……」


 ――ああ、やっぱり普通はこういう反応になるんだね。本性を知らないとはかくも恐ろしいものなのか(←大袈裟)。


 バラさないのかって? うん、今は黙っておく。ネタバレしたら面白くないでしょ。


「……本当にそいつは人間じゃないのか?(ボソリ) ……んんっ! すまない、感謝する」


「ありがとうございますー」「感謝します」


 いえいえ、どういたしまして。少々不可解なところがあってもそれには触れずに、ちゃんと感謝する。善い人たちだ。




 ただ――嘘を吐いているけどね。




 この三人――特に(たぶん)リーダーのコダンさんは、こっちの世界で出会って来た誰よりも強い。身のこなしや纏う雰囲気が違うし、魔力量も野営地で出会ったエルフのリディさんに次いで多い。


 しかも賊を食い止めて本隊を逃がしたってことは、そっちにもこの三人と同程度の護衛が居ると考えるべきだろう。


 貧乏学生がメインターゲットのしがない商会が、王国屈指の大商会であるミクワィア商会にすらいなかったレベルの護衛を多数抱えている? いやいや、無いでしょ。


 嘘を吐いてる――っていうとちょっと人聞きが悪いか。本当のことは話してない、が正しい表現かな。何か事情があるんだろう。そういう意味では、私だって同じだし。


 ただ話には淀みが無くて、不自然な印象は受けなかった。


 その辺から察するに、商会云々に関しては常に用意している偽りのプロファイルなんだろう。バンラント書房っていうのも実在してるのかもね。身分証も本物っぽかったし。


犬型獣人のシェットさんが口走ってた「姫様」っていう人が、かなり身分の高い人なのかも?


 ま、あくまでも想像だけど、自己紹介を額面通りには受け取らない方がいいだろう。


「ところでこの二日間って、食べ物はどうしてたんですか?」


「あー……、それがなぁ……」


 飲み水は生活魔法で何とかなるものの、食べ物はそうはいかない。コダンさんらは一日目は取り敢えず、ある程度形を残していた騎獣を解体バラして食料にし、二日目は魔物を狩って食べたそうな。


 ただこの辺りは王都にほど近いという事もあって定期的な魔物の駆除が行われているため、魔物の方も警戒してあまり近寄らないらしい。特に知能が高めの魔物は。


 つまりこの辺りに居る魔物はと言うと?


「まあイモムシとかワーム(ミミズ)とか、その辺だな」


 あ~、虫系ですか。好き嫌い――というか、ダメな人は絶対にダメって類だよね。


 ちなみに成虫もいるけど、硬くて斃すのが面倒な上に食べる部分が脚くらいだから、食用には向かないそうな。なお脚は蟹っぽくて、味自体はまあまあイケるらしい。


 魔物じゃなくて動物はいないのかな? ああ、いるにはいるけど小動物の類と鳥が飛んでるくらいで、そういうのを狩るスキルが無いと。まあ護衛は対人・対魔物戦が専門で、狩人じゃないからね。


「食べられなくはないです。ちゃんと調理すれば不味くも無いんですが、見た目がアレなので……」


「正直、どうしても食べなきゃいけない状況でもないと……。今は調理道具も調味料も無いので……」


「「…………ハァ」」


「……と、まあこんな感じでな。食える獲物が手に入るだけマシだと、俺は思うんだが」


 なんというか、その、大変だったんですね。心の中で手を合わせておきましょう。


 そう言えば、日本に居た頃に蝗の佃煮なら食べたことはあるけど、芋虫は無いね。エスカルゴ(カタツムリ)ならあるけど……、芋虫とはちょっと違うか。


 味とか食感ってどんな感じなのかな? ちょっと興味があるよね。まあ日常的に食べたいのかって言うと、そんなことはないけど。








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