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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第六章 旅は道連れ、情けは不要?>
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#06-17 人生初ヒッチハイク(ただし拾う側で)




 素晴らしい! 正しい作法に則ったヒッチハイクだよっ!


 惜しむらくは女性が水着姿で、スケッチブックとかに<→王都>とか書いてあれば完璧だった。まあ季節的に凍えちゃいそうだから無理だろうけど。


 念の為に探知魔法で改めて探ってみたけど、周囲に他の人間が潜んでいるような反応はない。彼らが盗賊団の一味とかで、囮って可能性は低そう。


「よし、あの人たちの前で停まってあげて」


「キュッ!」


 ちょっと危険かなー、とも思うんだけどこれを逃す手はないからね。


 いやー、ヒッチハイクってちょっと憧れるよね。


 バックパック一つで旅をして、通りすがりの車に――ピックアップの荷台とかでもグッド――乗っけて貰って、旅の話をしたりドライバーのカミさんへの愚痴とかを聞いたりして、街に着いたら笑ってお礼を言ってサラッと別れる。


 うん、ロードムービーっぽくてカッコイイ。


 実際にやろうと思ったらハードルが高いからこそ、浪漫があるよね。


 ――ただねー、拾う側の浪漫については考えたことが無かったよ(笑)。







 三人のハイカーさんは目の前に停まった馬車らしきものに対して、どう反応したらいいのか表情の選択に迷っているみたい。


 普通なら「馬車が停まってくれてラッキー!」って思うんだろうけど、肝心のソレが車輪の付いたただの箱で、馭者も見当たらずに騎獣が引っ張ってるだけ。しかもその騎獣が巨大カーバンクルで、人力車っぽく手押しで走ってるんだから。


 唖然とするのも無理無いって話ね。


「な……、なんだ!? 騎獣だけが牽いてる馬車? いや、これは、馬車……なのか?」


 ハイカーさんたちは、男性は三〇歳前後くらいで女性は私より二~三歳上くらい――かなぁ? 外見的にはそう見えるけど、魔力量がかなりある上に女性二人は獣人族だ。獣人族は体格とかの身体的特徴が何の獣人かによって異なるから、この世界初心者の私にはちょっと歳が分かり難い。


 ちなみにフサフサ垂れ耳の犬(ゴールデンレトリバー)型と、縞々柄の耳と尻尾がチャーミングな猫(アメリカンショートヘア)型。


 地球と同じ種類の犬猫が居るのかって? さぁ、どうなのかな? でも名前は違うとしても、似たような外見の種類はいると思う。だって彼女たちがいるわけだし。


 ガッチリ体型の男性は背中に大きな盾を背負ってて、武器は――ああ、メイスを腰から提げてる。犬型獣人さんは片手半剣バスタードソード、猫型獣人さんは短弓と短剣、バックラーを装備している。


 ――なんか物理に偏ったパーティーだね? いや、魔力量的にたぶん三人ともある程度の魔法は使えるのか。アクセサリータイプの魔法発動体を持ってるのかも?


「馬車じゃなかったら、何なんです? 魔物が遊びで引っ張ってるだけとでも言うんですか? そんな話聞いたことが……」


「そ、それよりも、この魔物は? 特徴的にはカーバンクルだけど、こんなに大きい個体が居るなんて、それこそ聞いたことが……」


「どうでもいいがお前ら、俺を盾にするんじゃない!」


「「だってコダンさんが壁役じゃないですか♪」」


「ハモるな……。こんな得体の知れないものの対処方なんぞ、俺は知らんぞ?」


 得体の知れないとは失礼な! ――確かにそうだけど(笑)。


 自分で言う分には構わないけど、他人に言われると何故かムッとするというこの不思議。


 さておき、カーバンクルはこっちの世界でもカーバンクルなんだね。あとこのサイズはやっぱりおかしいらしい。


 チラッ チラッ ふむふむ


「フュー、フュー!(グッ)」


 猫獣人さんを見て、犬獣人さんを見てから、コダンと呼ばれた男性に向けてサムズアップ? 「両手に花だね、兄ちゃん(ニヤニヤ★)」って感じかな。冷やかすのは止めてあげなさい。――あと口笛鳴ってないから。


 まあ三人の距離の近さから察するに、信頼はしてるだろうし気安い関係ではありそう。でもどっちかというと兄妹というか先輩後輩というか――そんな印象かな。恋愛っぽい熱はあんまり感じられない。種族が違うから結婚は無いだろうけど、恋愛は別だからね。


「……な、なんか、妙に人間臭い魔物だな。中に人が入ってるのか?」


「冗談言ってる場合ですか。それよりどうするんです?」


「どうするって……、何が?」


「乗せてもらうんですか、ってことですよ。当たり前じゃないですか」


「ええっ!? ティーニ、本気? 急いで姫様たちに追いつきたいとは思うけど……。っていうか、そもそも乗せてくれるの?」


 ――姫様? 追いつきたいってことは、護衛中にアクシデントがあってはぐれたってことかな? だとすれば、旅をしてるには荷物が少ないし、移動用の()がないのも理解できるね。


「うーむ。乗せてくれたとして、王都までって言って通じるのかって問題もあるな」


「……そう言えば、魔物ですからね」


「お前~、さっきは冗談とか言っておいて、コレを人間扱いしてたな?(ニヤリ)」


「だ、だって話が通じてる感じじゃないですか!」


 おっと、つい話に聞きいってしまった。そろそろ外に出るとしよっか。ええと、彼らとは反対側からそっと出て、さり気な~い感じでね(←無理があります)。


「こんにちは、相談は終わりましたか? 乗っけていくのは構いませんけど」


 カーバンクルの背後から私が姿を見せると、三人は素早く身構えた。


 うん、なかなかいい反応だ。緩んでいるようで警戒心は忘れていない。日頃の鍛錬と経験の厚みが垣間見える。――なんて上から目線の論評をしてみたり。


「あんた、一体何処から?」


「それはもちろん馬車の中から。まあ、ちょっと特殊な魔道具なので、普通の馬車とは違いますけど」


「そ、そうか、魔道具……? いや、それより、乗せてくれるのか? 礼はどのくらいすればいい? あいにく今持ち合わせは無いんだが、王都に着けば――」


「あー、そういう細かい話は走りながらにしませんか? 長々と立ち話は、ちょっと不用心ですから」


 トランクの高さ(厚み)を思いっきり低くする。こうすると遠目には荷馬車っぽく見える。あとは縁に腰かけるなり、上に座るなりすればいい。


 ――流石に初対面の人を馬車の中に招待するつもりは無いからね。魔力的にはこっちが圧倒してるけど、そこまで不用心じゃあありません。


「さ、取り敢えず上に乗って下さいな」


「「「…………」」」


 ハイハイ、驚くのは後回しにして、ちゃっちゃと動きましょう! コレの正体なんて考えるだけ無駄だから。――なにせ私だって、たぶんまだ全部の機能を知らないんだし。








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