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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第六章 旅は道連れ、情けは不要?>
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#06-16 馬車モード≒キッチンカー?




 山を越えの時に気球で高~~く昇ると、遠くに王都らしきものが見えた。


 いや、これは――王都の壁? っていうか何処からが王都? う~ん、よく分からない。


 ひたすら長~く伸びてる壁があって、たぶんその向こうが農村――なんだろうけど、壁のこっちと向こうで景色に差がない。森もあるし河も流れてて、自然そのまんまって感じね。


 会頭さんのところで王都は大きいって聞いてたんだけど、実際見てみるとスケール感がちょっとおかしい(笑)。ノウアイラも大きな街だったけど王都は桁違いだね。


 なんにせよ目的地をようやくこの目で確認できた。そうは言ってもまだ距離はあるんだけど、ちょっと感慨深いものがある。


 なんだかんだでいろいろあったからねぇ……


 寄り道ばっかりだったじゃないかって? そ、そんなことは……無い、よ?


 基本、それなりに理由がある事だったり成り行きだったりで、私自身の意思で明確に寄り道をしたのは、竜酔蘭の洞窟に立ち寄ったことだけ――のはず。それだって大したタイムロスにはなってない。


っていうか、当初の予定を変更して大峡谷を突っ切るルートを取ったから、むしろ早くなっているくらいだ。うん、大丈夫、問題無い。


 ジトーッ


 なんですか、その目は。言い訳がましいって? そんなこと言っていいの? キミを連れて来てることって、旅の本筋からはズレるんだよ。


「つまり、私が寄り道してなければ、キミはご飯にもお酒にもあり付けなかったってことなのだよ!(ビシッ!)」


 パチクリ キュルン ……コテン?


 だからキミは、困った時にあざと可愛さで誤魔化そうとするのを止めなさい。私には通用しないんだから。――っていうか最近はこの流れがお約束化してきたから、むしろコントっぽいよ?


「チチッ!?」


 あれ、結構ショックなのかな? ま、初見の人は可愛さにやられるだろうけどね。何事もやり過ぎは禁物ってこと。今後は気を付けるように。


 さておき、山越えは特筆することもなく無事終わった。やっぱり空を飛べると楽だね。こっちの世界の山は大抵魔物の巣窟だし、それをスルー出来るのは大きい。空を飛ぶ魔物に襲われることもあったけど、頻度はかなり低かったしね。


 街道で馬車にモードチェンジ。もう後は道なりに行けば王都へ着く。


 ってことで運転はキミに任せた。私は車内でちょっと料理をするから、何かあったら呼んで。窓から音は通るように設定しておくから。


 フムゥ~ン…… チラッチラッ


 ナニ、その疑いの眼差しは? 大丈夫だよ、今は創作料理を作る気分じゃないから。単純にストックしておいたスープとかカレーとかが少なくなってきたから、補充を作っておきたいだけ。


 創作料理にしたって勝率は六~七割くらいなんだから、文句を言われるほどのものでもないでしょ。


 え? 首を横に振って……、下を指差す? もっと勝率は低いって言いたいの?


 コクコク キュピーン!


「成敗!(弱デコピンショット)」「プギャッ!」


 だから、最後にイイ笑顔でサムズアップっていうのが余計なのよ、キミは。


 変に学習能力が高い割に、こういうところは何時まで経っても変わらないね。ま、それこそがカーバンクルクオリティ(笑)。







 馬車の中は基本的にテントの時と変わらない。壁の透過率を設定出来るところとかもね。


 イコール、デフォルトでは車内にはな~んにも無い。椅子とかクッションとかを用意しないと、荷馬車と変わりない。まあ揺れはほとんど無いから、乗り心地は全然違うけど。


 ま、何にもないお陰で調理台とかを出して料理もできるんだから、これはこれで悪くないよね。全体のサイズを前後に伸ばして軽ワゴンワイズにしてあるから、今の内装はキャンピングカーかキッチンカーってとこかな。


 揺れがほとんど無いから、走りながらでも普通に調理が出来る。超便利。今日もありがとう、神様トランク。――あと、カーバンクルもね。


 時間があるからいろいろやってみよう! ってことで、うろ覚えの知識でコンソメを作ったり、チャーシューっぽい物を作ってみたり、うどんづくりに挑戦してみたりした。


 久しぶりに食べたうどんは、なんかちょっと懐かしい気分になった。カーバンクルも気に入ったみたい。箸は使えないけど、フォークを使って器用にちゅるちゅる食べるのはちょっと可愛かった。調子に乗るから言わないけど(笑)。


 しおり情報によると、こっちの世界にも蕎麦(蕎麦粉)があるらしい。ノウアイラでは手に入らなかったけど、王都にはあるかな? あったら蕎麦打ちもやってみたいね。


 あ、これは余談だけど米もある。でもこれは会頭ドルガポーさんから聞いた情報で、しおりには載ってなかった。メルヴィンチ王国では北方の限られた地域で細々と生産されているだけで、一般には全く出回っていない食材なんだとか。


 そんな感じで料理をしながら移動を続け、いくつかの野営地を通過した。


 さて、今日は何を作ろうか? 果物のストックが沢山あるからシャーベットでもつくってみる? でもこれから寒い季節だから、ちょっと合わないか。


 ショートケーキとかフルーツのタルトとか、そろそろまともなスイーツを食べたいんだけどね。基本、大雑把な料理の私にとって、お菓子作りはある種の鬼門だ。いや、レシピを見れば作れるんだよ? 本当だから。


 ぶっちゃけお菓子作りは舞依に任せた方が美味しいからね! 最初からレシピを覚える気が全く無かった。


「チチチッ」


 ん、どうしたの? 魔物でも襲って来た?


 ――いや、魔物なら弾き飛ばしていけばいいだけか。馬車もスケーターの時と同じでシールド機能があって、それは馬車を牽いているカーバンクルもちゃんと保護してるからね。


 ついでに言うと、カーバンクル自身も魔力量がかなり上がってるし、日々私と模擬戦をして鍛えてるからそんじょそこらの魔物に負けることはない。技術のある人間相手でもかなりやれると思う。


 はて、じゃあ一体何が?


「ぬなっ!? あれは、まさか!」


 森と言うには木々がややまばらな領域を貫く街道。その脇に三人の兵士風の人(男性一人に女性二人)が立ち、街道に向けて腕を横に伸ばして親指を立てていた。








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