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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第六章 旅は道連れ、情けは不要?>
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#06-11 閑話 王都の拠点確保(ただし賃貸)




 実質的な意味で王都入りした私たちは、農村エリアと商業エリアを行ったり来たりしつつ情報を集め、最終的に王都南西地区の農村エリアに腰を落ち着けました。


 壁にほど近い場所に建つ一軒家で、門に繋がる街道から少し離れていて、しかも壁や屋根に修繕が必要な箇所が多々ある物件だったので、家賃は格安です。


 商業エリアのアパートを借りることも考えたのですが、四人で相談の上、全会一致で一軒家の方を選択しました。


 利便性のみで考えればアパートの方が上です。けれど私たちの場合、料理の研究をしたり、魔物の解体をしたり、魔法の研究をしたりと、少々一般人とは言い難いことをします。また浴槽のあるお風呂を設置したいという願望もありました。これも全員の意見が一致しています。


 そういった諸々の事を考慮すると、ある程度自由に使える一軒家の方が私たちにとっては都合が良かったのです。


 借りた物件は率直な言葉で言えばボロ屋ですが、日本風に言えば二階建ての4LDKでそれなりの広さがあり、一応庭もあります。そして建物の方は修繕なりリフォームなり、私たちが好きなように扱ってよいと言われています。


 借り手が付かなくて放置されていた物件で、オーナーは取り壊しも考えていたそうです。


 幸い懐には大分余裕がありますのでクランとしての活動はひとまず置いて、私たちは秀くんの指導の下、リフォーム作業に取り掛かりました。日本に居た頃ならば大変だっと思いますが、こちらでは魔法を使えます。清掃も込みで、丸一日ほどで作業は終わりました。


 気になる点はちょこちょこありますけれど、それは適宜手を入れて行けばよいでしょう。賃貸物件ですし、なによりここにずっと定住するとは誰も考えていませんから。


 それにしてもDIYの経験もあるなんて、秀くんには脱帽ですね。ちょっと齧った程度だと謙遜されていましたが、指示は的確で、手際も良かったように私には見えました。


 以前「ああいうのをスパダリって言うんだろうねぇ」と、怜那が言っていたのを思い出しました。怜那がそれを言うの? と、私は思うのですけれどね。


 ――そうでした。ちょうど男女で部屋も分かれたことですし、鈴音さんに確認しておきましょう。







「やっぱり男女で部屋が別れたのはいいわね。だいぶ慣れちゃったけど、お互いやっぱり気を使うもんねぇ……」


 私と鈴音さんは女子部屋に割り当てられた二階の一室に居ました。怜那と合流すれば女子が三人になるので、三つある部屋の一番大きな部屋です。恐らく主寝室なのでしょう。


 ちなみに家具も何もありませんので、ラグ代わりに敷いたレジャーシート的に使用する魔道具――材質は毛布のようなものです――の上にクッションを置いて座っています。殺風景なのは否めませんが、女子だけのスペースということでやはりどこか落ち着きます。


「まだな~んにも無いから、夜は結局寝袋だけどね(笑)」


「ふふっ、そうですね。……そういえば、家具類も自作するのでしょうか?」


「どうかしら? 秀からは何も聞いてないけど……。まあ寝袋は結構良い魔道具のを買ったから暫くはそれでいいけど、大きな食卓と椅子くらいは欲しいわよね。あと願望を言えばソファとかも」


「せっかくの自宅なんですから、寛げるスペースは欲しいですよね」


「そうそう。ここまで結構急ぎ足で来ちゃったから、余裕が欲しいところよねぇ」


 二人同時に力のない笑いが漏れました。


 思い返せばこちらの世界に来てからずっと、割とあくせく働いていたように思います。突然異世界に放り込まれて、生活基盤も何も無い状態に不安や焦燥感があったのでしょう。


 小さな目標を定めてクリアしては、また新しい目標を設定する。というのを繰り返していた気がします。そう言えば、一日丸ごと休息を取ったことが無かったかもしれません。


 もともと私たちは怜那も含めて五人全員が、日常的に予定が詰まっているのが当たり前だったこともあって、それを不思議に思わなかったようですね。


 こういうのをワーカホリックと言うのでしょうか?


 ともあれ、これからは基本“待ち”になるわけですから、のんびりペースにしてもいいでしょう。秀くんたちと要相談ですね。


「ところで鈴音さん、確認しておきたいことがあるのですが……」


「改まってなに? 私に答えられること?」


「……っと、その前に一応」


 シートに手をついて遮音結界の魔法を起動します。基本的には音を通さない領域を作る魔法ですけれど、今回使ったのはちょっと改良したもので、こちらからの音は通さずに外からの音は聞こえる半導体仕様になっています。


「遮音結界? まあどこに隙間があるか分からないから、内緒話はできないか」


「はい、念の為に。単刀直入にお聞きします。鈴音さん、秀くんとのことはどうするおつもりなのですか?」


「えっ!?」








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