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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第六章 旅は道連れ、情けは不要?>
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#06-06 落ちてからの……




「うーん、結構落ちたねー」


 とは言っても、おもいっきり魔力を込めてジャンプすれば、たぶん届くだろう。このまま魔法でトランクを動かしても良いし、崖の反対側に登るのはそう難しくない。


 ――でもせっかくだから、ちょっと新技を開発してみよう。


 デコピンショットを開発した時に考えてたんだけど、これを応用すればいわゆる空中ジャンプが出来るんじゃないかな?


 足の裏に空中の魔力をかき集めてピンポイントの足場にする。で、足に纏わせる魔力を調整して、自分の方を弾き飛ばす。――うん、できそう。


 練習中…… 練習中……


 最初の何回かは足場を踏み抜いたり、逆に魔力弾を飛ばしたり――トランクで寝っ転がってたカーバンクルの横に着弾してプンスカさせてしまった(笑)――とバランスの調整に手間取ったけど、コツは掴んだ。


「では本番、行きまーす!」


 魔力を軽く込めて真上に一メートルくらいジャンプ。そして空気中の魔力を右足の裏に集中させて自分の足を押し出す。――よし、完璧! 同様に左足で、三段目……もオッケー。


 縦方向のジャンプは問題無しと。じゃあお次は応用編。真上ではなく角度を付けて、それから前方宙返りに後方宙返り、反発を弱めて階段を降りるようにして……、よし、着地成功っと。


 我ながら上出来! 二段ジャンプはゲームだと普通にできるものだけど、現実では魔法無しだと無理だからね。これはなかなか気分がいい。


 それじゃあトランクを魔法でこっちまで移動させてと。――手元にワープさせるとカーバンクルが落っこちちゃうからね。


「ヒューヒュー!(パチパチパチ)」


 あれ? 珍しく素直ね。エレベーターのように上がってくるトランクの上で、カーバンクルが目を円くして拍手をしている。あんまり音は鳴ってないけど。


「ふふっ、ありがと。今の技ならキミにもできるんじゃない? 挑戦してみる?」


「フムーン……」


 悩むんだ? 空中を跳び回れると便利だし楽しいから、少しずつで良いから練習してみれば? うん、じゃあ頑張れ。ちょっとなら協力してあげるよ。


 まあ魔力は然程必要ないけど、制御にはコツがいるからそこは注意かな。反発力のベクトルを上手に制御しないと、足だけ持っていかれてひっくり返っちゃうことになりかねない。高いところでそうなるとかなり危ない。(注:普通は危ないじゃ済まない)


 私も要練習だね。今はジャンプのイメージが強くて、横方向の移動がどうしても直線的になっちゃう。ボールが壁で反射するような感じっていうのかな? スピードは出るけど軌道が簡単に読めてしまうから、まだ戦闘では使えない。


 無意識的に発動できるようになって、空中でも普通に歩けるようになるのが完成形かな。


 ま、おいおいね。


「じゃあ出発するよー。スケーターモー……、ん?」


 おや? トランクのようすが……







 眼下(・・)に広がる雄大で荒々しい大自然。階段のような段差が付いた山が立ち並び、崖が複雑で入り組んだ模様を描く様は、上から見下ろすと場所によってはまるで迷路みたいに見える。


 遠くから見た時の全体像はグランドキャニオンみたいだなって思ったけど、近くで見ると案外緑が多い。私が見た映像だと、確か向こうは岩山というかほぼ砂漠地帯って感じだったから、印象がだいぶ違う。


 というか、テーブル状の山頂がほぼ丸ごと湖だったりとか、切り立った崖の途中から(・・・・)滝が噴き出してたりとか、所々にファンタジー要素が散りばめられてて面白い。魔力のあるこの世界だからこそ、有り得る風景なんだと思う。


 これが観光旅行だったら、一週間はここで遊べる自信があるね! ――が、今は写真で我慢我慢。舞依たちと合流したら、遊びに来てもいい。なにしろ空を飛んで移動できるようになったからね。


 そう、トランクの新たな機能、気球モードが解放されたのです! 恐らく空中移動をマスターしたことがトリガーだったんだろう。


 気球モードではトランク本体の形状は立方体で固定。ハンドル部分がバスケット状に変形して気球からぶら下がる形になる。


 以前熱気球に乗ったことはあるけど、それと比較してバルーン(トランク本体)のサイズはデフォルトだと一辺二メートルほどとかなり小ぶりだ。


 魔力を注ぐことで移動できるところはスケーターや馬車と同様。ただスピード自体は両者よりも遅い。気球のイメージ通り、のんびり空の移動って感じね。


 それでも地形を完全に無視して直線で移動できるっていうのは大きい。とくにこの大峡谷地帯みたいに入り組んだ上に高低差の激しい地形だと、その恩恵は計り知れない。


 平地でもこの世界は基本、街道以外は自然そのままって感じだから、空を飛べるのはやはり大きなメリットだろう。


 まあ気球これでいきなり街中に降りたら騒ぎになるだろうから、街に入る時はその前に地上に降りておかないとね。――あ、というか、壁の高さで張ってあるっていうシールドに弾かれる? いや、でも鳥は素通りするし、魔物だけのはずだよね? どうなるのかな? うーん、興味深い。


 っと、話しが逸れた。


 バスケット部分の形状は割と自由が利く。イスやテーブルも置けるくらいに広くすることもできるし、側面の一つを消して椅子のようにすればリフトっぽい感じにもなる。元のハンドル型にして幅を狭めれば、空中(に浮いてる)ブランコの完成だ(笑)。


 何にしても、旅がさらに快適になったことは間違いない。今日もありがとう、神様トランク








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