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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第六章 旅は道連れ、情けは不要?>
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#06-02 渓流で“普通の”キャンプ




 私は行ったことが無いから映像からのイメージだけだけど、スケール感とか荒々しさとかグランドキャニオンに似てるんじゃないかな?


 似てるとは言ってもここは異世界だから、それらしい特徴も勿論ある。飛んでいるのだよ、セスナやヘリじゃなく巨大生物ドラゴンがね!


 まあそれっぽいシルエットが小っちゃく見えるだけだから、あくまでも推測だけど。一応ムービーで録画っと。


 ファンタジー的種族の知名度トップがエルフとドワーフなら、モンスターのトップはやっぱりドラゴンだよね。凄まじい力で現れれば災害扱いの恐ろしい存在だったり逆に神に近い存在だったりと、物語によって立ち位置が真逆になることもあるけど、強キャラである点は共通してると言っていいと思う。


 そりゃどこかに居るとは思ってたけど、ここに居たのか~。テンションが上がるね。


 迂回? しないよ? そもそも安全策の迂回ルートを止めて直進を選んだんだから、ある程度の危険は承知の上だし。


 戦うかどうかは――直接対峙してみないと分からないかな。


 ドラゴンが高い知性を持ってた場合は、そもそも戦いにならないかもしれないしね。そういう設定もよくあるけど――この世界のドラゴンはどうなんだろう? うーん、興味は尽きない。


 ともあれ、まずは下山だね。そろそろ出発しましょー。







 結論から言うと、下山は登りよりも短時間で済んだ。


 スケーターを全力で走らせて、魔物がちょっかいを掛けてくるヒマがないほどのスピードでぶっちぎったからね。こっちに来て強化された身体能力――特に動体視力ね――とスケーターの防御機能が無ければできない芸当だ。


 いやー、スリリングな速さで面白かった! イイ感じの段差でジャンプして思わずエアをキメちゃったりとかね。誰も見てないって(笑)。


 スケーターはどうやらモーターの出力――神様謹製の魔道具(神器)だから便宜的表現――は決まってるらしくて、平地よりも上り坂の方が遅くなる。逆もまた真なりで、下り坂だと平地では出せないスピードが出る。でもなぜか路面の良し悪しはスピードにあんまり影響しない。うーん、ミステリー。


 そんなわけで登りよりもはるかに短い時間で山裾にとうちゃーく。


 あ、今更だけど山頂からトランクを全力でぶん投げて自分を収納すれば、もっと早かったのかも?


 …………


 ま、済んだことさ。楽しかったし、良しとしよう。うん。


 それはさておき。


 この森はやっぱり南側とは印象が違う。北側で山脈の影になるからかと思ったけど、これは地盤の所為もあるのかな? フリークライミングをする人が目を輝かせそうなでっかい岩(岩山)が、あちこちにある。大木と言えるほど大きな木が無いのも、根を広く深く張れないからかも?


 魔物の反応も大分違う。この森一帯に居る魔物は大体小型――無人島にわらわらいたウサギ型くらい――で、一番大きくてシカ型くらいまで。北側に居たクマみたいなエリアボスクラスの反応は無い。


 それに性質も比較的大人しい。これまでに遭遇した魔物だと、小型でもテリトリーに踏み込むと襲い掛かってきたけど、ここの魔物はこちらから何か仕掛けない限りは基本静観の構え――というか、むしろ離れていく。


 楽は楽だけど、ちょっと拍子抜け? いや、別に戦いたいわけじゃないんだけど、今までと反応が違い過ぎて不気味というか、そうなる理由が気になるというか――


 あ、もしかして峡谷のドラゴンが原因? 近場のこの辺りで派手に魔法を使ったりすると、ドラゴンがちょっかいを掛けに来るとか? この辺りの小型の魔物じゃあドラゴンのエサとしては物足りないだろうし、何も無ければわざわざ襲いに来ることは無さそうだからね。


 ヒマがあればドラゴンの生態(主に食性)と縄張りの範囲、領域内の魔物の分布を調べてみたいところだね。


 まあ理由はどうあれ、久しぶりに羽を伸ばせる。静かで適度に明るい森のリラックス効果はばつぐんだ!


 もしかしたら校外学習で行く予定だった場所はこんな雰囲気だったのかもね。


 暫く森の中を行くと、水のせせらぎが聞こえてきた。音を辿っていくと予想通り小川を発見。渓流って感じの綺麗な川で、澄んだ水の中に何匹も魚が泳いでるのが見える。


 今は昼過ぎ……か。


 うーん……、よし、決めた。折角イイ感じの森なんだし、今日はここでキャンプにしよう! コンセプトは“普通のキャンプ”で。とは言ってもテントモードは使うけど。


 ってなわけで、まずは釣りで夕飯のメイン食材を確保。竿と針は海で使ったのしかないけど、これでいけるかな?


 ――うん、いけました。


 見た目は鮎っぽいけど、鮎がこんなに簡単に釣れるってどうなの……っていうか、この世界の魚は皆アホの子なの? 警戒心がなさ過ぎてちょっと心配になっちゃうよ。釣ったからには食べるけど。


 魚は取り敢えず、川岸に石で囲いを作ってその中に放しておく。大丈夫だとは思うけど、まあ逃げられたらその時はまた釣ればいい。


 えーっと、次は焚火か。森の中で薪を拾ってと。着火剤に松ぼっくりが良いんだっけ? 久利栖お薦めのキャンプアニメでそんなことを渋いおじさんの声のナレーションが言ってたけど――この森には無いね。じゃあフェザースティックの方でやろう。


 薪を拾うついでにキノコや何種類かの木の実をゲット。可食判別の魔法で食べられることは確認済み。


 ちなみにこの可食判別の魔法は教科書(古本)で覚えたもので、結構使い勝手がいい。


 毒物だけじゃなくて、寄生虫や腐敗・カビで傷んだものも弾くし、麻薬なんかのヤバイ物質も弾く。逆に発酵食品やアルコールは大丈夫だし、過剰に摂取すると中毒症状が出るものでも問題の無い分量ならスルーしてくれる。


 一方で、基本毒物だけど知識のある者がきちんと処理すれば薬として使える、みたいな物も弾いてしまう。だから素材採取にはあまり役に立たないんだけど、サバイバル生活においてはこれほど便利な魔法も無い。飲める水かどうかも分かるしね。


 余談だけど、無人島で同様の魔法を作ろうとしたんだけどそれは失敗した。なんていうか、発酵と腐敗は基本同じ現象だとか、細菌も悪いものばかりじゃないとか、薬と毒は紙一重だとか、そういう知識が中途半端にあるものだから、人体に悪影響のある物っていう曖昧な定義が上手くイメージできなかったんだよね。


 もちろん神代言語を使えば同じことはできるんだけど、教科書で覚えた魔法の方が遥かに簡単だから、もっぱらこっちを使ってる。


 そう、シンダイ言語は難しい。もはやシンドイ言語と言ってもいいくらいにね!


 …………(ヒュオオォォーー)


 ブルルッ。な、なんか冷えてきたね。焚火、焚火っと。








怜那の愛すべき欠点の一つ。それは……

寒いダジャレが結構好きなこと(笑)。


ちなみに仲間と一緒の時は、久利栖がムードメーカー兼ボケ担当なので怜那は基本ツッコミ側です。

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