表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第一章 無人島>
6/399

#01-02 ポカか必然か? 答えは神のみぞ知る(比喩ではなく)



 筏(屋根付き)でのクルージングはとても快適です。いや、本当に。


 海でゴムボートに乗って遊んだことがあるなら分かると思うけど、普通こんなサイズのモノを海に浮かべたら大きく揺れるんだけど、この筏にはそれがほとんど無い。スイーッとそれはもう快適に進んで行く。


 心配していた魔力については問題無かった。筏に触れてる状態で移動を意識すると、魔力が勝手に引き出されていったからね。


 そのお陰で自分の中にある魔力が把握できたし、その動かし方もなんとなくだけど分かった気がする。陸地についたら魔法を使ってみよう。なんとなくできそうな気がする。


 島に向けて移動を始めるのと並行して、いくつか実験してみた。


 まず鞄の中に入ってみた。


 ――入る瞬間、ちょっとだけビビッてたのは舞依には内緒。


 入ってみるとそこは、一面乳白色の何も無い空間だった。しおりのムービーで見たあんな感じだね。違っていたのは床も壁も天井もなくて、宙に浮いた感じだったこと。たぶん無重力状態に近いと思うけど、意識すると何故か立つことも寝転がることもできるから、こっちの方が生活(笑)はしやすいと思う。


 ちなみにトランクに収納してる物は、中にいる状態でも手元に取り出すことができた。ちょっと喉が渇いてたからスポーツドリンクで水分補給。でもあんまり飲み過ぎないように。


 外の様子は確認できないかなーと思ってみると、視線を向けた方にウィンドウ――窓じゃなくてPC画面的な――が開いて外の様子を見ることもできた。これで危機回避に使った時に、ちゃんと安全確認ができるのも分かった。


 本当に便利なんだけど、残念な点が一つ。中に入った状態では、筏を走らせることができなかった。


 中に入ったまま動かせたら、安全を完璧に確保しつつ移動できたんだけどね~。まあできないものは仕方ない。休憩とか寝る時とかは、素直に移動を止めればいいだけだ。


 で、お次は荷物の確認。といっても自分で用意したんだから、内容は全部分かってるし、念の為に手持ちの食料を確認するくらい。


 ミネラルウォーター(五〇〇mlペットボトル)

 スポーツドリンク(五〇〇mlペットボトル)

 水を加えるだけで食べられるタイプのパックご飯が二つ

 豆スープとビーフシチューのレトルトパックが一つずつ

 ブロックタイプ栄養食品のチーズ味とフルーツ味が一つずつ

 板チョコ。ミルクとビターが一枚ずつ

 ビ〇コ(大袋)


 と、こんな感じ。あとは秀から預かってた調味料各種があるけど、それだけで食べられるわけじゃないから、それはちょっと別物かな。


 私の基本方針としては、災害に巻き込まれた際に救助されるまで命を繋ぐことなんだけど……、こうやって見るとなんか二人分で考えてたっぽい? 無意識に?


 ん~……、これはちょっと反省、かもね。


 さて、気を取り直してっと。


 荷物の確認をして一つ気付いたことがある。


 クラスメイト全員に配布されたっていう、一年ほどは暮らせる現金とやらがどこにもない!


 一応、自分の財布の中身も確認したけど、普通に日本のお札と硬貨が入ったままだった。


 ハッ! コレってお金を抜き出して財布だけスロットに戻しておけば、毎日お金が元通りになるってこと? もっと財布に入れて来るべきだった……って、日本円にはもう何の価値も無いんだった。我ながらアホなことを……


 それはさておき、無一文っていうのはちょっと困るかな?


 いや、そうでもない? 特殊スロットの毎日復元機能があるから、秀から預かった調味料とかを売ればお金は何とかなるか。


 あー、でも胡椒とかオリーブオイルとかがべらぼうな額で取引されるっていうのも、この手の世界のお約束だったよね、たぶん。そもそも地球と同じ物がこっちにあるとは限らないし、持ち込んだ物を安易に売るのは危険か。最終手段くらいに思っておこう。


 っていうか……、よくよく考えてみると現金なんてそれほど必要ないのか、私は。


 現金が必要になるのって、日常生活では衣・食・住全般で、RPG的には装備やアイテムの購入だ。


 でもその全部がトランク(神器)一つでどうにかなっちゃうんだよね。


 …………


 いや、この思考パターンはダメだ! なんか引きこもりっぽい。


 そ、そうだよ。私だって美味しいものは食べたいし、多少はオシャレもしたい。舞依や皆に誕生日プレゼントをあげたりもしたいしね。ガツガツ稼ぐ必要は無いけど、お金はやっぱり必要だ、うん。ニート思考は厳禁。


 それはともかくとして、ね。


 現金は無かった。じゃあそれ以外の共通特典はどうなのか?


 なおマジックバッグについては除外。比べるまでも無くトランクの方が高性能だから。


 とにかく実験をしてみよう。ソーイングセットをトランクから取り出して、その中の小さなはさみを手に取る。


 制服のスカートの裾に鋏を入れて――


 チョキンッ!


 …………


 切れました。それはもう普通に。小さな鋏に対してスカートの布は比較的丈夫だから抵抗はあったけど、ちゃんと切れた。


 防御力向上はかかってないね、たぶん。ってことは、言語を除く特典は無いものと考えた方が無難だろう。


 トランクに機能を詰め込むことに注力して、こっちは忘れちゃったのかな? いやいや、まさか神様がそんな凡ミスを。……するかな? 多神教の神様だとうっかり屋さんとか悪戯好きとかいるし。それとも何か必然があったのか……?


 ま、どっちでもいいか。


 実のところ、防御力向上については割とどうでもいい。体の頑丈さも含めて身体的なスペックが大幅に上がってるってことだし、ビリビリに破けたとしても明日には元通りになるから。


 でもカモフラージュ機能の方は欲しかった。制服にしてもジャージにしても、こっちの世界では間違いなく浮く。


 う~ん……


「ああ、でも考えようによっては、目先のやることが決まったとも言えるのか」


 当面の大きな目標は決まっている。みんなとの合流だ。


 異世界名所巡りとか、食い倒れツアーとか、魔法の研究とか、次の暴走が起きる時期の調査とかやってみたいことは次々と湧いてくるけど、それは合流してからのこと。


 とはいえ、闇雲に動き回るのは非効率的過ぎる。情報を集めないと。


 変な格好で警戒されちゃったら聞き込みどころじゃない。現地の衣服か、全身をすっぽり覆い隠せるマントかコート――異世界的にはローブかな?――が欲しい。


 つまり必要なのはお金、現金、キャッシュ。


 地球からの持ち込み品を売るのは最終手段だから、何か現地の人に買ってもらえそうな物を手に入れる必要がある。


 うん。手始めにやることは決まった。


 島はもうすぐそこに迫っている。




 私ってダメだなぁ、本当に。


 きっと舞依たちは心配してるだろうって分かってるし、すぐに合流したいっていうのも本心なんだけど。


 知らないことだらけの異世界に、好奇心が抑えられないんだ。








トランクの特殊スロットに登録されている物は、例えば制服などは一式セットで一スロットに登録されています。なので物の数=消費スロット数ではありません。

なお、異世界転移時の空きスロットは三十三個です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ