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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第四章 ノウアイラ>
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#04-10 れい散歩(二歩目、市場編)




 お次は魚介類をゲットしに市場へゴー。どうせなら港まで行きたいところだけど、半日で往復は無理。三人乗りで無茶なスピードは出せないからね。この地区の市場で良しとする。


 というわけでシャーリーさんお勧めの、魚介類を取り扱うお店が多い市場へやってきました。大勢の人で市場が賑わう光景は、古今東西似ているのかもね。


 お店を見て回りつつ、美味しそうな、もしくは見たことのないお魚を衝動買い。時間を止めておけるから、どんな風に食べるのかは後で考えればいい。トランク様――ではなくて、神様ありがと~。なお鯖と鮪は在庫があるのでスルー。


 ……結構あちこち見て回ったけど、烏賊と蛸が見当たらないね。貝類や海老と蟹もあって品ぞろえは豊富なのに。ってことは食べる風習が無いのかな?


「えっ!? レイナ様、アレを食べるのですか?」


 エミリーちゃんが目を円くする。まあ確かに見た目はちょっと気色悪いよね。触手がウネウネしてるし、吸盤が並んでるし、ヌルッとしてるし。


「うん、見た目はアレだけど美味しいよ。故郷では割とメジャーな食材だったんだ。でもこっちの人は食べないんだね」


「この国でも北の方では食されていたと思います。烏賊に炊いた穀物を詰めた郷土料理があると聞いたことがあります」


 まさかのイカメシ!? イカメシなの?


「この街の漁師も食べられることは知っているのでしょうが、この辺りだとあまり獲れないことと不人気食材でもあることから、市場には並ばないようですね」


「そっか。これだけたくさんの魚が獲れるなら、それもしょうがないね」


 タコ焼きとかシーフードのお好み焼きとか結構好きなんだけど、ちょっと残念。


 無いと言えば出汁用に昆布が欲しかったんだけど、海藻全般が見当たらない。それと港町だからもしかしたらあるかもって思ってた魚醤の類も。


 やっぱり加工食品や調味料に関しては発展してないんだね。出汁を取ったりもしないのかな? だとしたら神様が嘆くのも分かるかも。


 ちなみに香辛料に関しては普通市場には置いてなくて、輸入品なんかを取り扱う商会とか専門店とかで手に入れるらしい。それで想像できると思うけど、やっぱりお高いモノだった。


 魔力さえふんだんにあれば気候の影響は少ないとは言っても限界はある。精霊樹の魔力は基本的に街の防衛とインフラに大部分が注がれてるからね。そうなると小麦を中心とする穀物や野菜が優先されるのが自然だ。あ、でも胡椒と唐辛子は比較的(・・・)安かったから、自前でちょっとは生産してるのかも?


 特殊スロットの機能で毎日増やしてるから、胡椒とカレー粉なら在庫はたっぷりあるけど、やっぱり売り物にしないで正解だった。魔物の素材は自分で狩ったものだから多少のレアものもギリセーフとしても、香辛料は出所不明だ。っていうか、カレー粉なんて秀のオリジナルだから、私じゃ本当に何がブレンドされてるのか分からない。


 そんな事を考えつつ歩いていくと、屋台が立ち並ぶ区画についた。小腹もすいて来たしなんか食べていこうかな……って、エミリーちゃんたちは大丈夫かな?


「問題ありません。一応、私が毒見役です。解毒用の魔法薬もありますので」


 なるほど。流石に隙が無い。シャーリーさんのメイド(ちから)は今日もMAXだね!


「ちなみに私のお勧めは、そこの角にある大きな屋台の海鮮グリル盛り合わせです。日によって内容は変わりますが、味もボリュームも満足できるかと」


 ほほ~。シャーリーさんのお勧めならば、行かねばなるまい。


 という訳で早速……って、本当にデカイ!


 一応屋台と言えば屋台なんだろうけど、調理のスペースだけでも一般的な屋台の八ブロック分くらいある。それにテーブル席の数も結構あるから、これはもうオープンテラスのレストランと言った方がいいね。


 海鮮グリル盛り合わせを三人分で注文する。飲み物は私とシャーリーさんはアイスティーを、エミリーちゃんはオレンジジュースを頼んだ。


 実はメニューにあったエールにちょっと引かれたんだけど、帰りもスケーターを使うので自重しました。飲酒運転、ダメ、絶対!


 先に届いた飲み物でなんとなくかんぱ~い。結構歩いたからアイスティーがとても美味しく感じる。


 ――考えてみると、地球の中世的な文明レベルで考えると、こんな風に氷の入った冷たい飲み物が当たり前に出てくるのはちょっとおかしいよね。市場でも魚の鮮度を保つために氷が大量に使われてたし、中には活きた魚介もあった。たぶん例の保管箱を使って運んで来たってことだと思う。


 こっちの人にはそれが普通なんだろうけど、私から見ると文明の進み具合がちぐはぐに思えるんだよね。そういうところも興味深い。


 そういう議論はさておき。


「シャーリーさん。エールって美味しいんでしょうか?」


 ちょっと離れた席で「かんぱーい!」とワイワイやってる、ガテン系のおっちゃんたちが手に持っているのが多分エールだと思う。人が飲んだり食べたりしてる物って、美味しそうに見えるよね。


「苦みのあるお酒なので好き好きだとは思いますが、冷やして喉越しを楽しむ分には美味しいと思いますよ。個人的にはワインの方が好みですが、エールも嫌いではありません。庶民のお酒なので安価ですし」


 ふむふむ。ってことは、会頭さんたちはあんまり飲まないってことかな。


「ただ、それだけに造りの雑な、本当に“安い酒である”という点にしか価値のないようなものもありますので、初めての店で注文されるときには気を付けた方がいいかもしれません。このお店くらいの値段であれば間違いないかと」


 えーっと、大きめのジョッキ一杯で、日本円で考えると大体四五〇円ってところ? 飲み屋とか行ったこと無いから(当たり前です)よく分からないけど、お店で飲むならこんなものなんだろう。たぶん。


 ちなみにメルヴィンチ王国のお金の単位はメルン。日本円で考えると、一メルンは五~八円くらいの価値だと思う。もっともモノの価値が日本とは異なるから、単純な換算は出来ないけど。








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