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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第四章 ノウアイラ>
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#04-09 れい散歩(一歩目、ショッピング編)




 神様との話を終えてミクワィアのお屋敷へ戻った私は、海賊関連の手続きが終わるまでの四日間を有効活用する為、活動を開始した。大きな目標は舞依たちとの合流だからね。四日間という区切りが設定されたのは、ある意味で都合が良かったかも。


 まずは情報収集を兼ねた観光ね。初めて来た異世界の街なんだから、いろいろ確認しておかないと。異世界転移のしおりを読んで多少の予備知識はあるけど、やっぱり直接見て触れないと分からないことは多い。


 あれこれ回って分かったのは、この世界の街は精霊樹の恩恵によって支えられてるってこと。


 精霊樹の魔力ネットワーク――神殿の人に聞いたら地脈と呼ぶのだと教えてくれた――上にある水場や噴水には常に綺麗な水が溢れているし、街道は暗くなれば街灯に明かりが灯る。


 あ、馬車がやたら速かったのも、馬が騎獣きじゅうと呼ばれる半分魔物化した(させた)家畜で、地脈から供給される魔力を吸収して疲れ知らずだから。ちなみに普通の馬でも多少の恩恵はあるから、やっぱり結構速さが出る。当然地脈上にある街道から外れればこの恩恵は無い。


 地脈は海の方にも伸びてて、近海では魚がよく獲れる。っていうか天然の養殖場状態なんだと思う。


 巨大な壁で魔物の侵入を防ぎ、ライフラインも維持してくれる。エジプトはナイルのたまものなんて言葉があるけど、この世界の街は精霊樹の賜と言っていいと思う。


 だから街の人の精霊樹と神様への信仰心は本物で、精霊樹に向かって祈りを捧げているところをよく見かける。横着な人でも季節ごとに一度は参拝に行くらしいし、他の街に初めて行った時には参拝するのが習慣なのだとか。


 ちなみに「精霊樹のお導きがありますように」っていうのが願掛け言葉の定番。恋愛成就とかにもね。ショタ神様も大忙しだ。


 観光のお次はショッピング。あ、お金はミクワィア商会に売却した魔物素材の代金――トナカイなんかの稀少素材は買い取り手を探してくれているらしいので後回し――を受け取ったから大丈夫です。懐は温かい。っていうか無一文から一転、小金持ちになってしまった。


 日用品や衣類の類は特殊スロットに登録されてる手持ちがあるし、ぶっちゃけ現地(この世界)の品物よりも品質が上だから、主に買うのは食料品ね。特に魚介類! 折角の港町なんだから、沢山手に入れておきたい。


 と、いう訳で市場へゴー! ちなみにショッピングにはエミリーちゃんとシャーリーさんも一緒です。なんでも社会勉強の一環として、季節ごとに一回くらい市場や商店街を見て回るのだとか。裕福な家の姉妹っぽい服装(扮装(コス)?)をして、乗合馬車で出かけるのだそうだ。――いつもなら。


「それでは早速ですがレイナ様。“すけーたー”を出して頂けますか?」


「えぇっ!? ……それは構いませんけど、三人乗りですよ? かなり目立っちゃいますよ?」


 スケーターがただでさえ目立つのに、ボードを伸ばして三人乗り。加えてエミリーちゃんは可愛いしシャーリーさんもクール系美女だから、街の視線を釘付け間違いなしだね。


「はい、問題ありません」


「……お忍びの視察なんじゃないんですか?」


「ええ、建て前としては。ですがミクワィア家の名と顔は、この街では領主様に匹敵しますので」


「バレバレですか」


「はい、バレバレです。ですから目立ったところで今さらなのです」


 なるほど。だがしか~し! 庭園をサーキット代わりにぐるっとタンデムした感じからして、彼女には別の個人的理由があると見た。ふっふっふ、私の目は誤魔化せないのだよ。


「ちなみに本音は?」


「あの風を切って走る感覚は良いですね。馬とも異なる、普段と同じ高さの風景が飛ぶように流れていくスピード感が最高です」


「シャーリーは乗馬が趣味なんです。ただ、その……、手綱を握ると性格が変わると言いますか……」


 ちなみに何度か二人乗りをしている内に、エミリーちゃんもスピードには免疫が付いてしまったらしい。なお自分で乗馬をする時は、のんびりパカパカ走るのが好きなんだと慌てて付け加えていた。うん、かわいい。


 そんなこんなでスケーター三人乗りで市場と商店街巡りをする。スピードはそこそこ出してるけど、気分はなんとな~く観光地で二人乗りの自転車に乗ってるような気分かも? ビミョ~な場違い感とかね。ま、二人も楽しんでるみたいだからいいか。


 壁を一つ越えて商業が盛んな地区へ。貴族街にも(高級)商店街はあるにはあるけど、エミリーちゃんの社会勉強にはならないからね。スルーします。


 まずは地球には絶対に無いお店、魔道具ショップに入ってみた。でもこれはちょっと期待外れ。照明器具とか冷蔵庫とかコンロとか――要するに家電が並んでるだけだった。これならビッ〇カメラの方が色んなモノがあって面白い。


 何て言うのかな? もっとこう……“ファンタジー”って感じのアレコレが並んでるのを期待してたんだよね。正直ガッカリです。


 ――と、いうのは早とちりだった。


 期待してたようなRPG的アイテムは同じ魔道具でもジャンルが違うから、武器や防具なんかを取り扱ってる店の方にちゃんとあった。考えてみれば当たり前で、家電量販店とアウトドアショップではラインナップが違うって話ね。


「使い切りの魔法が使える発動体、防虫効果のあるランタン、雨具にも敷物にも使える防水シート、こっちの布は魔力を注ぐと適温になる? マントにも使えるんだ。ほうほう、結構便利そう」


「この店に並んでいる物は、武器や防具も含めて旅人や傭兵にとっての必需品と言っていいものですね。携帯性を考えて、小型化や軽量化の工夫がなされている物が多いです。反面、使い捨てのものも多いですが」


「シャーリーさんもこういうのを使ったことがあるんですか?」


「ええ。お嬢様のお伴で旅をすることもありますので」


 そっか。あの大きな商船ならある程度余裕をもって荷物を持っていけるけど、馬車の旅じゃそうもいかないからね。


 魔法鞄マジックバッグがあるじゃないって? それがこの世界の魔法鞄って、そこまで便利なモノじゃないみたい。


 一番問題なのは使い勝手かな。ちゃんと鞄の口から(・・・・・)出し入れしなくちゃいけない。ネコ型ロボットの便利なポケットよろしく、出し入れする際に都合よくモノが縮んだりはしてくれないんだよね。


 さらに基本的に容量の拡張と重量の軽減は、どっちか片方しか付与されてない。両方が付与されてる高級品もあるにはあるけどバカ高い。このお店だとカウンターの向こう側にある綺麗な棚に鎮座している。まさに高級品の証。


 時間の減速や停止機能に関しては一応あるにはあるんだけど、過去の遺物だったり迷宮ダンジョン産のアイテムだったりで、たま~にオークションに出品されることがあるくらい。で、大抵は王族や貴族が確保してしまうと。


 鞄じゃなくて時間の減速機能の付いた保管箱っていうのは実用化されてて、この店にもある。一番小さいサイズでも一辺が一メートルくらいあるから、箱って言うかコンテナ? 家で使うか、馬車とか船とかに積み込む為のものだね。


 記述されてる魔法陣のサイズの問題で、今の技術ではそれ以上小型化できないんだってさ。あと定期的に魔力を注入する必要がある。


 便利グッズ以外にも武器やら防具やらを見て回って、RPG気分を満喫できた。満足満足。


 結構長居しちゃったから、可愛いデザインの防虫効果付き魔法ランタンと、防水・防風効果のあるタープ(ポール無し)を一つずつ買ってみた。使うかどうかは……、ちょっと分からないけど。


 なんて言うか、私の場合は魔法とトランクで大抵は賄えちゃうんだよね。節約にはなるけど、買い物の楽しみは減ってるのかも。我ながら贅沢な悩みだ。








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