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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第四章 ノウアイラ>
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#04-03 精霊樹までツーリング




 スケーターで石畳の道路を走る。街エリアから道路は完全に舗装されていて、貴族エリアでは車道と歩道もちゃんと分けられている。こういうところは結構近代的なんだよね。


 それにしてもこのスケーター、見た目の構造はスケボーと変わらないのに震動はとても少ない。自転車でアスファルト舗装の道路を走ってる時くらいかな。ちゃんと“走ってる感”もあってちょうど良い感じ。


 肌に感じる風なんかもそう。一定以上強くなるとそれ以上にはならないみたい。お陰でヘルメット無しでも快適なツーリングを楽しめる。


 ちなみに安全面に関しても万全で、基本常時シールドが展開されている。衝突時には相手には全く傷を付けずにこっちが弾き飛ばされるようにも、相手を吹っ飛ばすようにもできるらしい。


 街の外を移動する時は、それで魔物を弾き飛ばしながら爆走っていうのもアリかもしれないね。いちいち戦うのは面倒だし。




 メインストリートを快調に飛ばしていき、目的の神殿付近へとやって来た。


 さて、精霊樹が壁に魔力を供給しているという構造上、精霊樹が街の中心にあるっていうのは自明。じゃあ神殿も街の中心に据えられているのかって言うと、話はそう単純じゃあない。


 というのも街を統治しているのは領主だからね。当然、領主の居城も街の中心に置いておきたい。じゃないと神殿の方が高い地位にいるように見えちゃう。


 そんなわけで精霊樹が祀られてる広場を挟むようにして、神殿と領主の城の敷地がある。


 神殿と城の境界線に当たる参道を通って精霊樹へ向かう。


 精霊樹、もしくは神殿を参拝する人は結構多い。もしかするとお城見物の観光客もいるのかもしれないね。そういう人相手の屋台も軒を連ねてるから、基本的に閑静な貴族エリアの中でもここだけは例外的な賑わいがある。


 あ、参拝(観光)客の中に、いわゆる人間以外の種族もちらほらいる。ケモ耳と尻尾がある獣人に、背はやや低いけど腕と足が太いガチムチ体型なのはドワーフかな? ドワーフと双璧を成すザ・王道ファンタジー種族のエルフは……見当たらないね。ちょっと残念。


 それにしても目立ってるね~。獣人やドワーフが――じゃあなくて、私が。


 全身ローブの何者かが、見たことも無い妙なモノに乗って馬車をスイスイ追い越していったら、そりゃあ誰だって気になるって話だもんね。


 ま、大した問題じゃあない。気になるっちゃあなるけど、何しろ私は大和撫子系美少女の舞依や、完璧超人の秀なんかと一緒のグループに居た人間。いちいち人目を気にしてたら、外に遊びになんて行けやしない。


 スルー能力は既にカンストしているのだよ! フハハハ!(ドヤ顔)


 とはいえ、怪しげな乗り物に乗ってるってことで職務質問(に類するもの)をされても面倒だからね。他者の認識を阻害する魔法でも開発しようかな。


 どんな理論で構築すればいいかな? 意識を横に逸らすか、別の物にすり替えるか……。いっそSF的な光学迷彩を開発する? それも面白いかも。


 ――なんてことを考えつつ走ることしばし、精霊樹の祀られている広場の入り口に到着した。


 立派な門が立っていて、ここから先は徒歩でしか行けないらしい。スケーターモードを解除して、トランクをカラカラと引っ張っていく。


 門とは言っても扉は付いていない。優美な意匠の門柱と梁があるだけだから、イメージとしては鳥居に近い。ここから先は神様の領域ってことなのかもしれない。


 というわけで中に入りましょう。一応真ん中は避けてと。


 実は門に入る少し前から精霊樹らしき影は見えてたんだけど、想像してたのとはちょっと違ってた。なんというか、街の何処にいても見える巨木――ファンタジーでは割とメジャーな設定の世界樹とかね――だと思ってたんだよね。


 実物はというと確かに大きな木だけど、現実的に有り得ない程の非常識な大きさじゃあなかった。例えば観光スポットとして有名な大きな桜とかあるよね。枝をつっかえ棒で支えてるようなの。そのくらいの大きさかな。


 大きさはさておき、精霊樹なんて名前を冠するだけあって只()じゃない存在感がある。


 なんて言ったらいいんだろう? 威圧感ともちょっと違う。自然と襟を正したくなるような感じというか、思わず手を合わせて拝んじゃいそうな。そんな感じ。それから魔力とは似て非なる別の力? 波動? 気配? なんかそんなものを感じる。


 ま、ともかく折角お参りに来たんだし、手を合わせておきましょう。


 二回お辞儀をして、パンパンと(控えめに)二回手を打ち、もう一度お辞儀をする。


『それは君たちの故郷での作法だね。この国では手を組み合わせて黙祷が一般的だよ』


「まあこういうのは気持ちなので。次からはそうすることにします」


 どこからともなく聞こえて来た声に応えつつ頭を上げると、周囲は一面乳白色の世界に変わっていた。




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