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#03-10 船旅の定番(鉄板)トラブルと言えば?




 会頭ドルガポーさんに招かれて商船に乗って二日が過ぎた。


 正直に言えば船の乗り心地はまあまあってところかな。招かれておいてその言い草は無いだろうとは思うけど、私の基準が現代地球の技術で建造された客船だから、こればっかりは致し方ない。


 この世界には魔法って言うステキちからがあるんだから、私だったらそれを応用して快適にするなりスピードアップするなり考える。だけどそういう方面に使おうとはしていない。船内には魔道具もあるし、火種や明かりの為に魔法も使ってるっていうのに。


 ちょっと不思議だよね。


 魔道具にしても単純な機構の物しかないから、もしかすると機械的な技術と組み合わせる発想が無いのかも? 今のところ情報のサンプルが少ないから、想像の域を出ないけど。


 さておき。なんだかんだで船旅を結構楽しんでいる。っていうか、一人旅っていうのが退屈過ぎたんだよね。拾ってくれた船長さんと会頭さんには、改めて感謝しましょう。


 で、その会頭さんたちとの商談の続きについて。あの無人島の魔物は結構ランクが高かったみたいで、革も骨もかなりの額になり、正確な査定と支払いは上陸した後で本店(本部?)の方で行う段取りになった。


 あ、トナカイの角については商会に売るよりも街の――できれば王都の――オークションに出品した方が高値になるだろう、って執事さんがアドバイスしてくれた。


 アドバイスには感謝、なんだけど。伝手も何にもない、それどころか知り合いすらこの商船で出会った人たちだけの私がオークションに出品? しかも大金が動くオークションなんて貴族相手のはず。そんなことできるの?


 オークション自体には興味があるんだけどね。異世界のオークションなんて、どんなものが飛び出て来るのか、見物するだけでも面白そう。出品側じゃなくて、購入側としてなら参加してみたい。まだ無一文だけど(笑)。


 会頭さんたちの出方によっては角を預けてしまって、売り上げの何パーセントかを手数料にして代理出品っていうのを考えてもいいかな。


 だから商談とオークションについては、上陸まで一旦棚上げ。


 エミリーちゃんとはお喋りしたり、魔法を見せてあげたり、ゲームをしたりして遊んだ。


 私たちが遊んだゲームはバックギャモンとルールがほぼ同じだった。割と揺れる船の上でも遊びやすいように、コマが盤面にハマるようにできててちょっと感心。


 っていうかゲーム盤がテーブルだったことに驚いた。ええとつまり、麻雀卓みたいにゲーム専用のテーブルがあるってことね。しかも彫刻とかも施されてる豪華仕様。あ、サイコロは象牙っぽかった。魔物の牙かも?


 まあゲーム盤が置いてあった場所自体がゲスト向けの娯楽室って感じだから、豪華にもなるって話だよね。折り畳みのマグネット式なんてチャチな物を置いてるわけが無い。


 それからエミリーちゃんがふとした拍子に恥ずかしそうに距離を取るタイミングがあったから、メイドさん――シャーリーさんにそれとなく聞いてみた。要約すると船に乗ってからお風呂に入ってないことが原因だったから、空き部屋にバスタブと魔法でお湯を出してあげたら二人にすごく喜ばれた。


 お世話になってるし、このくらいのサービスはしないとね。ちなみに入浴後はお湯は窓から捨てて、少し濡れてしまった部屋は魔法でちゃんと乾燥した。後片づけはしっかりと。


 船員さんたちともちょっと交流をした。外の空気を吸うついでに釣りをしていたら、手隙の船員さんが参戦。ついでに会頭さんまで参戦して――なんてしていたら、いつの間にか普通に話すようになっていた。


 折角知り合ったので、船の仕事をちょっと見学。簡単なロープワークを教えて貰ったり、マストに登らせてもらったりした。帆船なんて初めてだから、とてもいい体験ができた。


 乗る前は海賊船かも――なんてちょっと思ったりしたけど、この商船の人達は良い人たちが多い。楽しくて有意義な船旅だ。エミリーちゃんも可愛いしね。







 商船に乗ってから三度目の夜。会頭さんたちが寝静まった頃に、私はそっと船室の窓を開けた。


 ハンマーモードのトランクを外にさし出して、水面に向けて柄を伸ばし、着水したところで筏モードに。一旦自分を収納してから、筏の外へ出る。


 夜逃げ? 答えはNO! もちろん違います。


 回収しておいたバチマグロを、解体しとこうかと思ってね。折角手に入れたマグロなんだから早く食べたいし。


 ただ今のところ、バチマグロはまだ死んではいない。時間を止めているだけだ。


 で、どうするのかって言うと、スロットの機能で片づけてしまおうと思う。温度調節機能で極低温まで下げてから、時間停止を解除する。これで多分(・・)死ぬはず。


 そう、多分ってところが問題なんだよね。温度調節機能の下限はマイナス二七〇度だから、ほぼほぼ絶対零度まで下げられる。地球の生き物だったらまず間違いなく死ぬだろうけど、こっちの生き物――っていうか魔物の場合はどうだろう?


 多分大丈夫だとは思うけど、念には念を、ね。船の中でバチマグロが飛び出てきたら目も当てられない。


 ちなみにスロットの温度調節機能が、なんで絶対零度まで下げられないのかについては、すぐその理由に気が付いた。この機能、一〇〇度を超えると一〇度単位でしか温度設定できなかった(笑)。


 さておき、ちゃちゃっと済ませてしまいましょう。


 温度設定をして、時間停止も解除。


 …………


 スマホで五分ほど経過したことを確認。――このくらい時間が経っても出てこないんだから大丈夫かな。再び時間を停止。後は錬金釜で解体してしまえばオッケー。


 さて、じゃあさっさと部屋に戻って……ん?


 探知ソナー魔法の範囲ギリギリに反応がある。大きい物体と、その中に小さな魔力反応が多数。――船だね。ミクワィアの商船よりも少し小型かな。


 実は昨日も、辛うじて目視できるくらいの距離で別の船とすれ違ったことがある。どうやらこの世界の航路は、海の魔物――特に支配個体の縄張りでルートが限られるらしく、こういうことも稀に起きるのだとか。


 だからおかしな話では無い。無いけど……


 稀に、なんだよね。航路が限られるとは言っても海は広いし、そもそも他国との往来はそこまで頻繁じゃないっぽい。


 な~んか引っ掛かる。モヤッとした嫌な感じが消えない。


 例えばだけど、以前擦れ違った船が海賊と繋がってたとしたら? 擦れ違った商船の情報を伝書鳩なんかで海賊に渡して、おこぼれに預かるなり自分たちを狙わないよう取引なりをしてる――なんて可能性もゼロじゃない。


 更に付け加えて言えば、向こうの進路がこっち向きのニアミスコースだ。偶然にしてはちょっと出来過ぎているようにも思える


 これは会頭さんたちと相談かな。


 問答無用で吹き飛ばして闇に葬るようなことはしません。常識人ですから(強調)。







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